海上保安レポート 2014

はじめに


TOPICS 海上保安の一年


特集 海上保安庁の精神 正義仁愛


海上保安庁の任務・体制


■本編

1 治安の確保

2 生命を救う

3 青い海を守る

4 災害に備える

5 海を知る

6 交通の安全を守る

7 海をつなぐ


目指せ! 海上保安官


語句説明・索引


図表索引


資料編

1 治安の確保 > CHAPTER IV 密輸・密航対策
1 治安の確保
CHAPTER IV 密輸・密航対策

薬物・銃器の密輸入の摘発については、船員を利用した薬物の密輸入事犯が引き続き発生する中、コンテナ貨物を利用した薬物の大量密輸事犯も発生しており、これら事件の背後には暴力団等が組織的に関与しているものもあると考えられることから、その対策は、引き続き重要な課題となっております。

また、外国人による密航についても、巧妙化しており、これらの犯罪によって不法に得られた利益が暴力団の資金となっていることも指摘されています。

海上保安庁では、こうした我が国の法秩序を乱す密輸・密航事犯を厳格に取締り、薬物や銃器、密航者の水際阻止に努めています。

平成25年の現況
■密輸事犯について

密輸事犯について、平成25年の薬物事犯の摘発件数は7件あり、前年より3件減少しました。なお、銃器事犯の摘発はありませんでした。平成25年は、昨年に引き続き船員が関与したものや、暴力団が関与した覚醒剤密輸事件を摘発しました。また、神奈川県横須賀市等の海岸において大量のコカインが漂着した事案も発生しました。


◆最近の主な薬物・銃器事犯摘発状況
◆最近の主な薬物・銃器事犯摘発状況
◆薬物事犯の摘発状況
◆薬物事犯の摘発状況
 
◆銃器事犯の摘発状況
◆銃器事犯の摘発状況
名古屋港で7億円相当の覚醒剤を押収
押収された覚醒剤
押収された覚醒剤

平成25年7月18日、第四管区海上保安本部は、名古屋税関と合同で名古屋港に停泊中していたカンボジア籍貨物船「XIN RUI 6」(X号)を監視していたところ、X号の船首甲板からX号乗組員が岸壁にいる者に向けて、小包のようなものを投げ渡したことから、現場を急襲した結果、覚醒剤約10キログラムを押収するとともに、X号の中国人乗組員1名と受取役の韓国籍、中国籍の男性それぞれ1名の計3名を覚せい剤取締法違反(営利目的密輸)で逮捕しました。この事案で押収された覚醒剤約10キログラムの末端価格は、約7億円にのぼるものでした。その後、海上保安庁では、関係機関と連携して捜査を継続した結果、同年11月に、現場に居合わせた日本人男性1名を逮捕しました。

■密航事犯について

密航事犯について、平成25年の密航事犯の摘発件数は6件あり、前年より1件減少しました。摘発者数については、不法入国者13名、不法入国手引者2名、不法出国者5名、不法出国手引者2名で、前年に比べ、不法入国者は8名減少、不法入国手引者は3名減少、不法出国者は2名増加、不法出国手引者は2名で前年と同じでした。

密航の手口は、過去には、コンテナ内に潜伏する手法や隠し部屋等に大量の不法出入国者を隠す手法が主流でしたが、最近では、成功報酬を目的に船員が密航斡旋

ブローカーから依頼を受け、貨物船や高速小型船に少人数の密航者を乗船させて密航させるものや、偽変造船員手帳等を利用して他人になりすますものへと手法が変化しており、密航の手口が巧妙化しています。また、密航者の背後には、日本国内に密航を斡旋する手引者が存在することが多くあり、海上保安庁では、密航者を検挙した後も継続して長期に亘る地道な捜査を行い、手引者の摘発にも努めているところです。


◆船舶利用の不法出入国事件摘発状況 ◆船舶利用の不法出入国者国籍別摘発状況
◆船舶利用の不法出入国事件摘発状況 ◆船舶利用の不法出入国者国籍別摘発状況
国内外の関係機関と協力して密出入国企図者等を摘発!
逮捕された密入国者
逮捕された密入国者

平成25年5月11日、第七管区海上保安本部は、韓国当局から入手した密航情報を端緒に、警察・入国管理局と合同取締りを行い、山口県下関市内でレンタカーに乗った密出国待機中と思われる韓国人5名と同運転手1名を発見し、これら6名を出入国管理及び難民認定法違反などで摘発しました。

また同日、本件に関連し、韓国から日本へ小型船で密航しようとしていた韓国人4名が韓国側当局によって摘発されました。

同本部は、山口県警察本部等と合同捜査本部を設置して本件の解明を進めるとともに、国内におけるブローカーの関与についても鋭意捜査し、6月26日、関東に居住する韓国人2名を出入国管理及び難民認定法違反などの容疑で逮捕しました。

密航しようとして、日韓当局に摘発された韓国人は、いずれも正規に日本への出入国をすることができない者でした。

今後の取組み

海上保安庁では、引き続き、国際組織犯罪対策基地を中心に国内外の関係機関との協力を強化しつつ、海事・漁業関係者や地元住民からの情報収集を行うとともに、その分析活動に努め、密輸・密航が行われる可能性の高い海域では、巡視船艇・航空機による重点的な監視・警戒を実施し、密輸・密航の蓋然性が高い地域から来航する船舶に対しても、重点的な監視や立入検査を実施することで、密輸・密航事犯の水際阻止に努めていきます。