女性海上保安官、夜間の海へ飛び込み、救助! 第四管区海上保安本部
▲男性を警察警備艇に引き揚げる様子 |
私は、名古屋海上保安部所属の巡視艇「ひだかぜ」機関士補の山本歩です。「ひだかぜ」は、名古屋港及び周辺海域で発生する各種事件・事故への対応に日夜従事しています。
平成23年8月31日夜、「名古屋港内で、目の前を人が流れて行くのを見た」と118番通報があり、私たちは監視取締艇ですぐに出動しました。
現場到着後、通報者と思われる人たちから話を聞くため岸壁に上がったところ、そのうちの1人が私を見るなり海面を指差しました。そこには今にも沈みそうな人影が、私たちの足元の岸壁下の空洞に流されていくところでした。見失わないようにライトで照らすと、4メートル程先で海面上に顔だけを出した男性が「まばたき」をするのがはっきりと見えました。私は、「頑張れ、直ぐに助ける!」と大声をかけましたが、男性はかなり衰弱していたようで、弱々しく頷くだけでした。
「直ぐに飛び込んで救助をしなければ」と気持ちがたかぶりましたが、船長から「1人は危険、2人で救助」との指示を受けました。はやる気持ちを抑え、泳ぎやすいように救命胴衣を膨張式から固形型に着替え、準備を整えたころ、男性からの呼びかけの返事が聞こえなくなりました。「いよいよ一刻の猶予もない」と思いながら、相方と暗闇の海へ飛び込みました。
暗い空洞の中、監視取締艇のサーチライトと手持ちのライトの明かりを頼りにようやく男性を確保、私は男性が呼吸しやすいように体を保持しました。男性はとても衰弱し、携行した救命浮環に掴まる力もなく、また、突然ガタガタと震えだしたので、私たちは男性を元気づけようと声をかけながら空洞から抜け出し、近くにいた警察警備艇に引き揚げました。保温のために男性の体を毛布でくるんだところ、男性は少し元気を取り戻し、自分の名前を告げました。その時、ようやく私は緊張感から解放され、一安心しました。
このような一刻を争う救助活動は初めての経験でした。海上保安学校で習った水上安全法(救助や応急手当の方法等)が今回の救助にも役立ったことは言うまでもありません。これからも、いざという時に備え、日々の訓練に臨んでいきたいと思います。