平成23年3月11日午後2時46分、東日本大震災が発生し、東北地方太平洋沿岸を中心に未曾有の被害をもたらし、多くの人々の尊い命や暮らしが一瞬にして奪われました。
犠牲になられた方々に対して改めて哀悼の意を表しますとともに、被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。
海上保安庁は、震災発生直後から人命救助を最優先に、全国の巡視船艇・航空機等を大量動員して、捜索救助活動に全力を挙げ、被災された多くの方々を救助しました。また、津波により多くの方々が行方不明となったことから、季節を越えた長期にわたる行方不明者捜索を行ってきました。さらに、福島第一原子力発電所周辺海域での監視警戒、被災港湾の水路測量、航路標識の復旧、救援物資の緊急輸送など、海上保安庁の総力を挙げて震災対応に取り組みました。
今回の海上保安レポートの特集では、東日本大震災における海上保安庁のこれまでの対応と今後の防災対策について取り上げることにしました。
最愛の人を失い、平穏な暮らしを奪われた方々の心の「痛み」は計り知れません。海上保安官一人一人がその「痛み」を感じ、自分たちにできることを懸命に考え、厳しい状況の中で被災された方々と共に大震災に立ち向かいました。
被災地の復興もまさにこれからです。また、東海・東南海・南海地震や首都直下地震の切迫性が指摘されており、いつまた巨大地震や大津波が起こってもおかしくありません。東日本大震災の教訓を踏まえて、次の災害に備えることも私たちの使命です。海上保安庁は、これからもこの大震災を乗り越えるため、様々な活動に取り組んでいきます。
「海」は、漁業、貿易、レジャー等の活動の場であり、豊富な資源が存在するなど、私たちに様々な恵みを与えてくれます。その一方で、「海」は津波などの災害や海難により人命や財産を奪う場ともなり、また、テロ、海賊、密輸・密航といった海上犯罪が行われる場でもあります。
海に囲まれた我が国は、海洋立国として、この優しさと厳しさの両面をもつ「海」と、しっかり向かい合っていく必要があります。海上保安庁は、国民の皆様が安全に、安心して「海」で活動し、より多くの恵みを得られるよう、海上での警備・取締り、海難救助、安全情報の提供、航路標識の管理など、「海」を守る様々な活動を日夜行っています。また、我が国の「海」を監視し、海洋データを収集・提供するなどを通じて、我が国の海洋権益の保全に貢献しています。
東日本大震災に加えて、近隣諸国における海洋活動の活発化、ソマリア周辺海域の海賊事案、朝鮮半島情勢等、我が国を取り巻く情勢は、近年厳しさを増しています。これまでの「海」を守る様々な活動に加え、東日本大震災の教訓を踏まえた防災対策や近年の緊迫化した国際情勢にも的確に対応するためには、巡視船艇・航空機等の整備や海上保安庁の執行権限の充実強化など、海上保安庁の体制の充実強化が必要となっています。
海上保安レポートでは、海上保安庁の業務全般について様々なテーマごとに紹介をしています。一人でも多くの皆様にこのレポートをお読みいただき、「海」のことを、そして海上保安庁のことをより知っていただければ幸いです。
これからも、海上保安庁は、「海」をしっかりと守り、国民の皆様の期待に応えられるよう業務を遂行してまいります。