海上保安レポート 2010

はじめに


TOPICS 海上保安の一年

特集


海上保安庁の任務・体制


治安の確保

領海等を守る

生命を救う

青い海を護る

災害に備える

海を識る

交通の安全を守る

海を繋ぐ


目指せ!海上保安官


語句説明・索引


図表索引


資料編


目指せ!海上保安官 > 海上保安官の仕事
目指せ!海上保安官
海上保安官の仕事

海上保安庁職員のうち、ほぼ半分の約6,000人が巡視船艇・航空機等の現場で働いています。巡視船艇はその大きさによって任務が異なりますが、大型巡視船では1回の航海が1週間を超える場合もあります。船は職員にとって職場であり、また生活の場でもあります。

巡視船艇における仕事は、海難救助・警備等の「業務」だけでなく、船艇の運航・整備といった「船務」があります。巡視船艇の職員は、これらの仕事を両面から行っています。例えば、巡視船艇の機関科でエンジンを整備している人が犯罪捜査をしたり、主計科で調理を担当している人がヘリコプターから降下して救助を行ったりしているのです。

目指せ!海上保安官

このほか、船艇によっては、海洋の観測、航路標識の性能調査、武器の操作・管理を担当する者が乗船します。


捜索救助

海難等の場合、現場へ急行し、救助が必要な船舶や漂流者等を捜索します。発見後は、巡視船艇・航空機への揚収、海難船舶からの退避誘導等の人命救助を行います。また、船舶が航行不能の場合には、巡視船艇がえい航を行い、安全を確保します。

捜索救助

パトロール

海上における犯罪やテロ行為等の未然防止、我が国海洋権益の保全、その他海上における不審事象の確認のため、巡視船艇・航空機によるパトロール(しょう戒)を行います。

パトロール

捜査・立入検査

海上保安官は法令違反がないか確認するため、船舶への立入検査を実施します。

また、海上保安官は、司法警察職員として、海上のあらゆる犯罪に対し捜査を行い、解明します。

捜査・立入検査

災害対応

大規模な地震や津波、火山の噴火等の自然災害が発生した場合、海上での捜索救助は勿論のこと、避難住民や物資の搬送等を行います。また、海難等によって流出した油等の防除、船舶火災の消火活動等も行います。

災害対応

船舶交通の安全

東京湾等の船舶交通が特にふくそうする海域では、船舶の安全かつ効率的な運航を確保するため、巨大船等が航路を安全に航行できるように航路しょう戒業務を行います。

船舶交通の安全

海洋調査

海上保安庁は航海の安全等の目的から様々な海洋調査を行っています。例えば、海図の作成のための水路測量や、地震の発生予測に資する海底地殻変動観測等を行っています。

海洋調査
前項以外にも、海上保安官の仕事は、陸上での業務やスペシャリストとしての業務等様々なものがあります。

(定常的に組織されるものではないものも含まれています。)

スペシャリストとして

■ 運用管制官(関門海峡海上交通センター

関門海峡は、潮の流れも早く、S字に曲がった航路は、狭い所で約500m、昔から海の難所と言われており、1日約600隻の船舶が航行しています。

関門海峡海上交通センターで勤務する私たち運用管制官は、レーダーやAISを使用し、関門海峡を航行する船舶が危険な航行をしていないかなど船舶の動静を確認し、無線電話等を使用して船舶交通の安全に必要な情報提供を行っています。

私たち運用管制官は、「早め早めの確認、情報提供」を心がけ、今日も関門海峡を航行する船舶の安全確保に努めています。


■ 特殊救難隊員(羽田特殊救難基地)

特殊救難隊は、高度で専門的な知識技能を必要とする救難業務を任務とし、羽田特殊救難基地で1年365日24時間出動できる体制をとっています。

私は、平成16年に練習帆船「海王丸」が台風により座礁した際、救助活動を行いました。167名が首まで海水に浸かり、一昼夜を過ごしていましたが、無事全員を救助できました。

この仕事に携わり、「人命」という言葉がとても身にしみるようになりました。「どんな状況でも諦めない」、そう思って働いています。

特殊救難隊員

■ 国際捜査官

私は、熊本海上保安部に所属する巡視艇「ひごかぜ」の船長です。巡視艇のリーダーとして乗組員を指揮・監督しています。

また私は、国際捜査官として専門語学である中国語を介し、中国人船員が乗り組む外国船舶への立入検査や中国人が関係する犯罪捜査等も行っています。


■ 海上保安報道官

海上保安庁の活動のほとんどは海上であるため、残念ながら皆さんの目に触れる機会は多くありません。

そこで日夜日本の海を守る海上保安官の姿、例えば、大荒れの海の上での救助活動、闇夜の密漁取締り、巧妙な密輸・密航の摘発等を報道機関に伝えています。

海上保安報道官

海上保安官の陸上業務

■ 総務業務

企画・立案や総合調整、広報、職員の人事及び福利厚生等を行います。


■ 経理補給業務

予算の執行、施設や物品等の管理を行います。


■ 船舶技術業務

船舶、航空機の建造及び各種装備に関する技術の検討等を行います。


■ 情報通信業務

情報通信システムに関する業務を総合的に行います。


■ 警備救難業務

海上犯罪の捜査や海難救助に関する業務等を総合的に行います。


■ 海洋情報業務

海洋調査により得られた情報を、海図や船舶に対する航行警報、科学的データ等の形で提供します。


■ 海上交通業務

海上交通ルールの設定や大型船舶の航路入航間隔の調整、航路標識の管理等、海上交通の安全に関する業務を総合的に行います。


■ 科学捜査業務

海上における犯罪に対し、例えば油や塗料の分析、といった科学的な手法で事件を解明します。

女性職員の活躍

海上保安庁では、昭和54年から女性海上保安官の採用を始め、特に近年は積極的に女性職員の採用と登用の拡大を図っています。

巡視船艇に乗り組んで警備救難業務を行う職員、海上交通センターにおいて船舶に海上交通の安全のための情報提供を行う職員、海洋情報部において海図の修正情報等を海事関係者に提供する職員、教育機関の教官として学生を指導する職員等、男性職員と同様に女性職員もその能力や適性に応じて様々な職種で活躍しています。

また、現在では仕事と家庭の両立を支援する制度も整備されており、子育てをしながら仕事もこなす女性職員も増えています。


巡視船で活躍

巡視船の機関士補としてエンジン等の整備・点検のほか、犯罪の取り締まりやマリンレジャーの安全指導等様々な業務を行っています。海上保安庁の仕事はどれもやりがいのある仕事ばかりでとても充実しています。


海上交通センターで活躍

ラジオ放送やインターネットで船舶に海上交通情報の提供を行っています。海上保安官として適時的確な情報提供を目指し、通航する船舶が安心して航行できるよう日々頑張っています。


海洋情報部で活躍

港湾工事等による岸線や水深の変化、海上での行事や訓練等の情報を集めて海事関係者に提供しています。航海に不可欠な海図の修正情報も提供しており、海事関係者の安全に関わる業務に責任感を持って取り組んでいます。

挑戦する海上保安官

宇宙飛行士を目指して

羽田航空基地の大作毅飛行士は、平成20年から21年にかけて実施された国際宇宙ステーション搭乗宇宙飛行士候補者の選抜に志願し、最終的な候補10名に残りました。

海上保安業務で培った現場でのとっさの判断力、経験、仲間を気遣う重要さは宇宙飛行士にも通じるところがあったといいます。最終合格には至りませんでしたが、彼のチャレンジ精神は今後も、業務に活かされていきます。


志望したきっかけは?

―ガルフVから見たきれいな星空や高さ16,000mからの景色を見て、子供の頃抱いていた夢に挑戦してみようと思いました。

今後チャレンジしたいことは?

―新しく取得したボンバル300の機長という資格を活かして更に活躍したいです。そして、いずれは教官として後輩の力になりたいと願っています。もちろん次のチャンスがあれば宇宙飛行士を目指したいと思います。


南極地域観測隊員

1956年の巡視船「宗谷」による観測以来、海上保安庁は南極観測に隊員を派遣してきました。現在では南極周辺の海底地形の測量や潮汐観測等の海洋調査を行う隊員を1名、夏隊に派遣しています。2009年は、南極に派遣された調理担当の海上保安官をモデルにした映画「南極料理人」も製作され、当庁も製作に協力しました。