海上保安庁の任務・体制
海上保安庁の任務・体制
我が国の周辺海域では、毎年多くの事件・事故が発生し、人命、財産が失われるとともに環境汚染等の被害が発生しています。
こうした海上で起こる事件・事故の未然防止、捜査、海難救助等を行うため、国民の目に触れることの少ない海上において、海上保安官が日夜業務にあたっています。
この章では、こうした日本の海の護りを担う海上保安庁の任務・体制を説明します。
1.海上保安庁の任務
海上保安庁は、「海上の安全及び治安の確保を図ること」を任務としており、海上を舞台に幅広く活躍しています。このような任務達成のため、国内関係機関や関係国との連携・協力体制の強化を図りつつ、海難救助、治安の確保、海洋環境の保全、災害への対応、船舶の安全かつ円滑な航行の確保、海洋調査による海洋情報の収集及び提供等様々な業務を行っています。
海上保安庁法(昭和23年法律第28号)(抄)
(第二条第一項)海上保安庁は、法令の海上における励行、海難救助、海洋汚染等の防止、海上における犯罪の予防及び鎮圧、海上における犯人の捜査及び逮捕、海上における船舶交通に関する規制、水路、航路標識に関する事務その他海上の安全の確保に関する事務並びにこれらに附帯する事項に関する事務を行うことにより、海上の安全及び治安の確保を図ることを任務とする。
2.機構
海上保安庁は、海上における人命及び財産の保護、犯罪の予防、捜査及び鎮圧を行うため、国土交通省の外局として設置され、本庁(東京都)を中核として全国に管区海上保安本部、海上保安部等を配置し、一元的な組織運用を行っています。
■ 本庁
本庁には長官の下に総務部、装備技術部、警備救難部、海洋情報部、交通部の5つの部を置いています。本庁は、基本的な政策の策定、海上保安業務に関する法令の制定や改正、他省庁との調整を行うなど、海上保安行政の「舵取り」役を担っています。
■ 管区海上保安本部
地方支分部局として全国を11の海上保安管区に分け、それぞれに管区海上保安本部を設置し担任水域を定めています。
各管区海上保安本部には現場第一線の事務所として、海上保安部、海上保安署や航空基地等を配置し、巡視船艇や航空機を配属して、海上における治安の維持や海難救助、船舶交通の安全確保等の業務にあたっています。
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海上保安大学校 |
■ 教育訓練機関
海上保安業務の基盤となる海上保安官の養成、教育訓練を行う機関として、海上保安大学校(広島県)や海上保安学校(京都府)等を設置しています。海上保安大学校では、将来の幹部職員の養成のほか、語学研修等の現場職員の技能向上のための研修を行っています。また、海上保安学校では、現場第一線で働く海上保安官の養成を行っています。
3.定員・組織・予算
■ 定員
平成21年度末現在、海上保安庁の定員は12,593人であり、うち471人の女性職員が働いています。このうち、管区海上保安本部等の地方部署には11,044人、巡視船艇・航空機等には5,934人の海上保安官が乗り組み、現場第一線で業務に従事しています。平成22年度には、海上保安業務ニーズに的確に対応していくために必要な体制を構築するため、右図にあるように292人の職員を増員しました。
■ 組織
平成22年度には、東南アジアをはじめとする各国の海上保安機関の能力向上を支援するため、本庁総務部政務課に「海上保安機関支援業務調整官」を設置したほか、北朝鮮関連情報及び総合的な警備情報収集・分析体制を強化するために第四管区、第九管区海上保安本部警備救難部に「警備情報課」を設置しました。また、海洋調査体制を強化するため、第十一管区海上保安本部に「海洋情報企画調整官」を設置しました。
■ 予算
平成22年度の海上保安庁の予算額は1,821億円となっています。
海上保安庁では、引き続き、業務の適正化、効率化に努め、無駄のない業務遂行を目指していきます。
4.装備
海上保安庁では、平成21年度末現在457隻の船艇、73機の航空機を保有し、様々な海上保安業務を遂行しています。(船艇・航空機の種別については、資料編の船艇をご覧ください。)
一方で、このうち昭和50年代に集中的に整備された巡視船艇・航空機は、老朽・旧式化により、各種業務遂行に支障が生じていることから、速力、捜索監視能力等の向上を図った船艇等の緊急かつ計画的な代替整備を進めています。平成21年度には18隻の巡視船艇及び2機の航空機が就役し、平成22年度についても引き続き、船型・機種等の統一化により、調達コストの低減を図るなど、国民負担の抑制に努めながら、巡視船艇・航空機等の整備を進めていきます。
■ 新たなニーズへの対応
現在、海上保安庁では尖閣諸島等における海洋権益の保全、国内MOX燃料の輸送警備、大陸棚延伸に伴う管轄海域の拡大への対応、遠方事案への対応等の新たな業務課題に直面しています。このような我が国周辺から遠方に至るまでの広大な海域における重要課題に的確に対応するため、平成22年度予算では被害制御、長期行動能力等を備えたしきしま級巡視船(ヘリコプター搭載型巡視船)の建造が決定されました。
5.監察
海上保安官は、国民の視点に立った公正かつ効率的な行政の運営を行うこと、司法警察職員としてより厳正な規律を保持することが求められることに加え、危険性が高い特殊な環境で海上犯罪の取締り、海難救助等を迅速かつ的確に遂行しなければならないため、安全に関する高い意識が求められます。
このため、海上保安庁では、本庁に首席監察官、各管区海上保安本部に管区首席監察官を設置し、厳正に庁内の監察を行っています。具体的には次のような監察を実施しています。
- 業務の改善や適正な運営を図るために、毎年度監察項目を定めて調査を行う業務監察
- 事故や職員の不祥事の発生時に事実関係の確認や原因の究明・分析を行う事故監察
こうした調査の結果から問題点及び改善すべき事項を明らかにし、職場・業務環境の改善や事故の再発防止に努めています。
6.政策評価
海上保安庁では、「行政機関が行う政策の評価に関する法律」等に基づき、政策評価を実施しています。平成21年度は「薬物・銃器密輸事犯の摘発件数」、「海上及び海上からのテロ活動による被害の発生件数」、「海難及び船舶からの海中転落による死者・行方不明者数」、「ふくそう海域における航路を閉塞するような大規模海難の発生数」の4つの指標について平成20年度の実績を評価しました。この結果、3つの指標については、目標達成が明らかとなったことから、引き続き現状の施策を維持することとしました。一方、「海難及び船舶からの海中転落による死者・行方不明者数」の指標については、平成20年度において目標達成に向けた成果が得られなかったことから、目標達成に向け、関係機関への働きかけや、漁業従事者への指導・啓発活動をさらに推進するとともに、沿岸部における救助・救急体制の強化等を継続していくこととしました。
さらに、個別公共事業及び個別研究開発について、それぞれ新規事業採択時評価等を実施しました。
そのほか、海上保安庁は「中央省庁等改革基本法」に基づき、主として政策の実施に関する機能を担う実施庁として位置付けられており、国土交通大臣による目標設定及び実施庁としての実績評価を行っています。
海上保安庁は、今後も、政策評価、実施庁評価を通し、国民の皆さまへの行政の説明責任を徹底するとともに、国民的視点に立った質の高い行政サービスの提供を引き続き目指していきます。
7.広報
海上保安活動の場は、国民の目に触れることが少ない海上であるため、日本の周辺海域で起こっている事件事故やこれに対応する海上保安庁の活動の様子を国民に伝える広報は、皆様に海上保安庁の業務に対する理解を深め、協力いただく上で大変重要な役割を果たします。
そのため、海上保安庁の活動を一層広く知っていただけるよう
- 積極的なプレスリリースの実施
- 全国各地でイベント等を開催、海上保安庁音楽隊の演奏会を通じたPR活動
- インターネットを利用した情報発信や動画配信による情報提供
等の様々な取組みにより、海上保安庁の活動を正しく理解、評価していただけるよう努めています。
海上保安庁に関するお問合せは、総務部政務課政策評価広報室までお願いします。皆さんからいただいたご意見・ご質問は、海上保安庁の活動をより良くするために活用していきます。
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