海上保安庁は、未来を支える仕事をしています。
四方を海に囲まれた日本は、海洋国家と言われており、国民の休日として「海の日」を制定し、これを祝っています。多くの国民が、海水浴をはじめ海浜に親しむ機会を持ち、また、漁業や海運といった経済活動の場として活用しているように、海洋はわれわれの社会経済を支える基盤となっています。大切な海洋を子孫につなぐためには、海洋に目を向けた未来志向の姿勢が大切だと考えます。そのような視点に立って、海上保安庁は、国民の皆さんが安心して暮らしていけるよう、海上交通の安全を守り、国民に届けられる物資の安定供給に寄与しているほか、海上における犯罪の防止を図り、海洋における活動をバックアップしているのです。
我が国の領海及び排他的経済水域は、世界第6位の広さを誇るとともに、さらにこれを超えて延長の可能性がある大陸棚の存在も確認されています。一方、この広大な海洋を巡っては、近年、様々な状況の変化が認められます。尖閣諸島周辺をはじめとする我が国の周辺海域において、近隣の国々が海洋調査活動や資源開発を活発化させていることは周知の事実であり、我が国も海洋権益保全の観点から一層の危機感を持ち、監視・警戒を強化していく必要があります。また、ソマリア周辺海域では海賊被害が頻発し、我が国からも護衛艦が派遣される中、海上保安官も同乗し、海賊行為があった場合の司法警察活動の実施に備えています。海上保安庁は海賊対処を担う第一義的機関として、今後、自らも体制を整えていく必要があります。海上保安庁の役割は、従来にも増して重要なものとなってきているのです。
本レポートでは、3つの大きな特集を組んでいます。その一つが、昨今の状況を踏まえて海上保安庁が取り組んでいかなければならない「新たな課題と装備の強化」を内容とするものです。広がりを見せる海上保安庁の役割とこれに対応した体制を考えていくものとなっています。特集の二つ目では、海難事故が発生したときに活躍する機動救難士等の「救難スペシャリスト」について紹介しています。三つ目は、海上保安庁が25年の歳月をかけて地道に積み上げてきた「大陸棚調査の全貌」を、その節々に展開された紆余曲折を交えながら紹介しました。
現場を支える海上保安官は、誇りと正義感を持って仕事に励んでいます。ある時は、身を挺して職務を全うします。人を救うということは決して簡単なことではありません。技術、体力、気力がこれを支えます。常にわが身も危険と隣り合わせです。しかし、海上保安官としての使命感が、その恐れを克服してくれます。一つのミッションを終えたとき、人ひとりを救うことが、結果的にその人にゆかりのあるたくさんの人たちをも、救っていたことに気づかされます。海を守る、人のためになる、これを私たちは喜びとして受け止めます。海を舞台に展開される数々のドラマは現実です。
未来を支える海上保安庁! 私たちは、「元気で 信頼される 海上保安庁」を目指します!!