平成21年は、芸能人による違法薬物使用が報道されるなど、違法薬物のまん延が社会的に大きく注目されました。また、違法薬物のみならず、銃器の密輸入や外国人の不法入国といった事案は、我が国の治安にとって大きな脅威です。
これらの犯罪により不法に得られた利益が、暴力団の資金源となっていることも指摘されており、海上保安庁では密輸・密航事犯を摘発し、薬物・銃器や不法入国者の流入を水際で阻止していきます。
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01 治安の確保
CHAPTER4 密輸・密航対策
平成21年は、芸能人による違法薬物使用が報道されるなど、違法薬物のまん延が社会的に大きく注目されました。また、違法薬物のみならず、銃器の密輸入や外国人の不法入国といった事案は、我が国の治安にとって大きな脅威です。 これらの犯罪により不法に得られた利益が、暴力団の資金源となっていることも指摘されており、海上保安庁では密輸・密航事犯を摘発し、薬物・銃器や不法入国者の流入を水際で阻止していきます。 1 密輸事犯について
平成21年の薬物事犯の摘発件数は13件であり、前年より8件減少しています。また、銃器事犯の摘発件数は3件と前年より2件増加しています。 平成21年11月には、関係機関と合同で、ロシア連邦から小樽港に入港した船舶に乗船して上陸したロシア人を覚せい剤取締法違反で逮捕し、覚せい剤約3キログラムを押収しました。 また、平成21年7月には、関係機関と合同でロシアから新潟東港に入港した船舶を監視し、同船のロシア人乗組員が上陸して、受取人であるロシア人と接触したところを急襲して、両名を覚せい剤取締法違反で逮捕するとともに、覚せい剤約4.7キログラムを押収し、さらには国内の覚せい剤密輸グループの首謀者も逮捕するに至りました。 さらに、平成21年2月には、高知県沖をしょう戒中の当庁航空機が密輸船を発見し、それが端緒となり、国内の覚せい剤密輸グループの摘発にまで至りました。この事案では、香港から来航した中国漁船を利用して約120キログラムに及ぶ大量覚せい剤の密輸入を行うなど、密輸ルートが多様化しています。 薬物・銃器以外にも、平成21年4月、下関港で、資源保護のために輸出が制限されているうなぎの稚魚約240キログラムを韓国向けフェリーに船積みし、不正に輸出した事件を税関と連携して摘発しました。 このほかにも、関係機関と合同による外国船舶に対する立入検査により、居室等の船内から大麻や空気銃を発見した事件を摘発しており、引き続き、船員等が関与する犯行には十分な警戒が必要です。 2 密航事犯について
平成21年の船舶を利用した不法出入国事件の摘発件数は5件、摘発者数は不法入国者11名、不法入国手引者2名、不法出国者4名、不法出国手引者3名でした。前年に比べ、摘発件数は4件減少、不法入国者は3名増加、不法入国手引者は17名減少、不法出国者は1名増加、不法出国手引者は7名減少となりました。 不法出入国者を国籍別で見ると、近年の傾向である韓国人によるものが平成21年は特に顕著であり、摘発した不法出入国者のうち8割を占めています。 平成21年の主な事案としては、7月、長崎県対馬で韓国人男性2名(乗組員)、韓国人女性5名及びイラン人男性2名が、高速小型船で不法入国したため出入国管理及び難民認定法違反(不法入国)等で逮捕しました(コラムで紹介)。また、9月には、山口県下関で、小型船が洋上で韓国側船舶と会合し密航者を受け渡す予定であったものの、会合できず帰港したところを警察と連携して逮捕した事案が発生しました。この事案では、船長(日本人男性)のほか、乗船していた韓国人女性2名と韓国人ブローカー1名を出入国管理法違反等で逮捕しました。 近年、不法出入国事犯は小口化・巧妙化が顕著であり、密航者を運搬する船員が密航斡旋ブローカーの指示を受け、高速小型船や小型の漁船等により夜間、人目につきにくい地方漁港を狙うなど、悪質で感知しにくいものとなっています。
引き続き、薬物・銃器等の洋上取引や密航者の受渡しが行われる可能性のある海域において、巡視船艇・航空機による監視・警戒を重点的に実施します。また、それらの犯罪の蓋然性が高い地域から来航する船舶についても重点的に監視と立ち入り検査を行います。 国際港湾等においても、これまでのデータや知見から、保安上脆弱と思われる箇所については重点的に監視していきます。 さらに、国際組織犯罪対策基地職員を中心に国内外の関係機関との協力を強化しつつ、保安部署等の職員においては海事・漁業関係者や地元住民からの情報提供を有効に活用して、密輸・密航事犯の根絶に取り組んでいきます。
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