海上保安レポート 2010

はじめに


TOPICS 海上保安の一年

特集


海上保安庁の任務・体制


治安の確保

領海等を守る

生命を救う

青い海を護る

災害に備える

海を識る

交通の安全を守る

海を繋ぐ


目指せ!海上保安官


語句説明・索引


図表索引


資料編


01 治安の確保 > CHAPTER2 国内密漁対策
01 治安の確保
CHAPTER2 国内密漁対策

我が国周辺海域の豊かな水産資源は決して無尽蔵ではありません。漁獲量や操業期間に制限をかけるなどのルールが設定され、これに従い操業することにより、資源を獲りつくさないようにしています。しかし、一部の漁業者や暴力団等による違法操業や水産資源の乱獲は依然後を絶っていません。

海上保安庁では、これらの違法行為に対して、地域の人々や関係機関と協力し、徹底した監視取締りを行い、密漁の根絶を図っていきます。

平成21年の現況
押収された大量の毛がに
押収された大量の毛がに

平成21年の密漁事犯の送致件数は2,189件で、前年に比べ303件増加しました。

平成21年の特徴としては、漁業者以外の者による密漁事犯の送致件数が増加し、また、密漁の形態も、漁業者以外の者による密漁から、多人数の密漁グループと密漁されたものと知りながら買い受ける水産物販売会社が一体となった悪質で大掛かりなもの、暴力団の収入源となるものまで多様化しており、暴力団の関与した大規模な事案では余罪も含め、密漁による水揚げが3億円に迫るものもありました。

国内で密漁を行っていた船舶
国内で密漁を行っていた船舶

◆国内密漁事犯の推移
国内密漁事犯の推移
今後の取組み
押収した密漁機材一式
押収した密漁機材一式

海上保安庁では、巡視艇の乗組員の休養日等に初動が遅れるなどの問題を解消するため、複数クルー制を順次導入し年間を通して切れ目のない体制を構築しています。平成21年度は25部署の巡視艇に複数クルー制を導入しており、今後も引き続き拡充することで、夜間や休日等の取締りや情報収集体制の強化を図ります。また暗視撮影装置といった監視取締資器材を活用し、現場における対処能力の向上を図ります。

また、関係機関や漁業関係団体と緊密に連携し、一層の密漁防止対策の強化を行います。さらに、地域の特性に応じた総合的な密漁対策を推進し、「密漁船が活動し難い環境」の構築に努めます。

デジタルカメラの捜査への活用

海上保安庁が捜査書類に使用する証拠物や犯罪現場を撮影した写真は、これまでフィルムカメラを使用してきましたが、デジタルカメラの急速な普及により、フィルムカメラ本体そのものの製造中止に加え、これまでフィルムの現像を行っていた町のカメラ店も次第にデジタルカメラ用プリントに切り替え、フィルムの需要も減少し、流通量も減ってきました。

そこで、海上保安庁では、デジタルカメラで撮影した写真を捜査書類に使用できないか検討を行ってきました。

デジタルカメラで撮影した写真は、パソコン等により拡大や縮小、色合いの変更やトリミングなどの編集が手軽にでき、これらはデジタルカメラの大きな利点です。しかし、写真を捜査書類で証拠として使用するにはデータを編集できるデジタルカメラのこの利点が「証拠能力」という点で問題となっていました。

そのような状況の中、画像データが改ざんできないデジタルカメラ等が開発されてました。検察庁と協議を重ねた結果、これらを使用する等改ざんをしていないことが証明できれば、デジタルカメラで撮影した画像データであっても証拠として裁判に使用可能ということとなり、全国の捜査現場に導入することとしました。

全国の海上保安部署の中には、フィルム現像してもらうために、車で片道一時間以上かけて現像店に向かわなければならない部署もありましたが、デジタルカメラを使用することにより、これまで現像・プリントにかかっていた時間を短縮することが可能となり、捜査の効率性が増し、国民の安全・安心に寄与するのではないかと期待されます。

今後活用されるデジタルカメラ
今後活用されるデジタルカメラ

市民になりすました潜水器密漁グループを逮捕

浜田海上保安部(島根県)は平成21年4月13日深夜、浜田港内において小型船舶、空気ボンベ及びウエットスーツ等の潜水器具を使用して、許可無くナマコを採った容疑により長崎県佐世保市出身の密漁グループ4名を現行犯逮捕しました。

また、その後の継続捜査により割り出したナマコの買い付けブローカー1名を同年5月20日通常逮捕しました。本件では、長崎県から浜田市に住民票を移し、関係する船や車両の登録を替えて浜田市民になりすまし、海上保安官の厳しい捜査の目をかいくぐって暗躍する悪質な密漁グループを、粘り強い内偵捜査の末逮捕したもので、余罪分を含めて15回にわたり、ナマコ約5トン、アワビ約560kgを密漁した事実を解明しました。

なお、買い付けブローカーに対する判決は先に言い渡されており、執行猶予付きの懲役6ヶ月でした。

浜田海上保安部管内では、アワビやナマコ等の高級海産物を狙った密漁が多発しており、今後も取締りを強化して、漁業者の生活を脅かす密漁に厳正に対処していきます。

密漁されたナマコ
密漁されたナマコ