海上保安レポート 2004

●はじめに


■TOPICS 海上保安の1年


■特集1 海洋権益の保全とテロ対策

1 領海警備と海洋権益

2 テロ未然防止のための取組み

■特集2 海保の救難


■本編

治安の確保

生命を救う

青い海を護る

災害に備える

海を識る

航海を支える

海をつなぐ連携


海上保安庁の業務・体制


海を仕事に選ぶ


海保の新戦力


その他


資料編


 
特集1 >海洋権益の保全とテロ対策 > 2 テロ未然防止のための取組み > 3 PSIへの対応
PSIへの対応
拡散に対する安全保障構想(Proliferation Security Initiative:PSI)
チーム・サムライ04 海上阻止訓練事前会合
▲チーム・サムライ04 海上阻止訓練事前会合
 平成15年5月、米国のブッシュ大統領は、訪問先のポーランドで「拡散に対する安全保障構想(PSI)」を発表し、日本を含む10カ国に参加を呼びかけました。これは国際社会の平和と安定に対する脅威である大量破壊兵器・ミサイル及びそれらの関連物資の拡散を阻止するために、国際法・各国国内法の範囲内で、参加国が共同してとりうる措置を検討しようとの提案でした。
 その4ヵ月後の平成15年9月、PSIのパリ総会*2にてその目的や阻止のための原則を述べた「阻止原則宣言(Statement of Interdiction Principles)」を採択し、各参加国が大量破壊兵器等の拡散懸念国家及び非国家主体への拡散を阻止するための努力を個別又は共同で行うことについて合意しました。総会の議長サマリー*3では、<1>拡散の懸念を共有するすべての国がPSIを支持することを期待し、<2>アウトリーチ*4活動を行うこと、<3>PSI参加国は拡散阻止行動の向上と強化に向けた情報共有を含む実際の行動につき検討し、<4>能力向上とPSI実施の条件を試行することを目的とする、海、空及び陸における阻止訓練を実施することについて了解したことが述べられています。
 PSIコア・グループ*5は、平成16年12月現在、日本を含む15カ国です。平成16年5月、PSI発足一周年を記念して開催されたクラコフ一周年記念総会には、計61カ国及び2国際機関(EU及びNATO)が参加し、PSIのさらなる強化、アウトリーチ活動の継続等について方向性を明らかにする議長声明が発出されました。今後もPSIに参加する国が増えることが予想されています。

PSIにおける海上保安庁の役割
 我が国におけるPSIの活動は、これまで我が国が行ってきた大量破壊兵器・ミサイル不拡散の取組みに沿ったものであることから、積極的にこれに参加するという基本的な立場をとっています。海上保安庁は、我が国の海上における第一義的な法執行機関として、不法な大量破壊兵器等の拡散を取り締まるという任務を有していることから、これに積極的に取り組んでおり、PSIの会合に職員を派遣するなど積極的に参画を重ねてきました。
 これらの会合に並行して、海上、航空、陸上の各分野において、各国が共同して大量破壊兵器等の輸送を阻止するための訓練も精力的に実施されています。平成15年9月には、オーストラリア東海岸沖合において第1回目の海上阻止訓練(Pacific Protector 03)が行われました。我が国からは海上保安庁の巡視船及びテロ対処部隊が参加しました。
チーム・サムライ04海上阻止訓練
 また、平成16年5月には、国際協力機構(JICA)が「アジア不拡散セミナー(海での協力)」を開催するに当たり、海上保安庁はPSIに関連する国際法・国内法の講義や海上展示訓練を実施しました。このセミナーは、平成15年12月に開催された日・ASEAN特別首脳会議での合意に基づき、大量破壊兵器等の不拡散分野における我が国とアジア諸国の協力強化のために必要な技術的支援として実施されたものであり、PSIを含む不拡散体制の強化についてアジア諸国の理解が促進されました。
チーム・サムライ04海上阻止訓練
チーム・サムライ04海上阻止訓練
▲チーム・サムライ04海上阻止訓練
 さらに、平成16年10月には、我が国の主催で、PSI海上阻止訓練「チーム・サムライ04(Team Samurai 04)」を相模湾沖合及び横須賀港内において実施し、海上保安庁からは巡視船、航空機、テロ対処部隊等が参加しました。また、自衛隊の護衛艦と航空機、米国、オーストラリア、フランス各国海軍の艦船や、米国沿岸警備隊、オーストラリア税関が参加しました。シナリオに基づく訓練は、東京湾の沖合にて日本籍船が米国籍船からサリンを譲り受けるという想定で、各国が連携して両容疑船を発見して停船させ、容疑物質を押収するというものでした。海上保安庁は、今回初めて外国軍艦船等との本格的な連携訓練において、企画段階から、実働、訓練反省会まで主体となって実施しましたが、訓練の初期の目的を十二分に達成し、アジアにおける大量破壊兵器等の拡散の取締り体制の発展に寄与することができました。
 このような訓練を実施することは、各国当局間の連携が強化されるという効果はもちろんのこと、世界の大量破壊兵器等拡散懸念国等に対し、PSI参加国は大量破壊兵器等の拡散を断固阻止するとの強いメッセージを与えることができるものと考えています。
 PSIの活動は、今後も会合及び訓練が継続して行われることとなっており、海上保安庁では、法執行活動として、引き続き積極的にこれに取り組んでいくこととしています。
▼チーム・サムライ04海上阻止訓練
チーム・サムライ04海上阻止訓練