海上保安レポート 2018

はじめに


海上保安制度創設70周年記念特集
海洋の安全・秩序をつなぐ〜70年の礎とともに〜


海上保安官の仕事


海上保安庁の任務・体制


■本編

1 領海・EEZを守る

2 治安の確保

3 生命を救う

4 青い海を守る

5 災害に備える

6 海を知る

7 海の安全を創る

8 海をつなぐ


語句説明・索引


図表索引


資料編

海上保安官の仕事 > 女性職員の活躍推進
海上保安官の仕事
女性職員の活躍推進

海上保安庁では、昭和54年から女性海上保安官の採用を始め、特に近年は積極的に女性職員の採用と登用の拡大を図っており、平成30年4月1日現在、918名の女性職員が全国各地で海上保安業務に従事しています。平成26年度には、女性の活躍推進や、ワークライフバランスの推進に向けた政府全体の取組等を踏まえ、海上保安庁次長を本部長とする「海上保安庁女性職員活躍・ワークライフバランス推進本部」を設置し、女性職員が活躍できる職場環境の整備等を進めています。

女性職員の活躍の場は、巡視船艇での勤務や管区本部等での勤務のほか、外国語を用い外国人犯罪の捜査を行う国際捜査官、鑑識技術を用い客観的証拠を確保する鑑識官、適切な情報提供により船舶交通の安全を確保する航行管制官、飛行機からの哨戒や救助活動を行う飛行士(パイロット)、航空機の整備を行う整備士等、専門技術を駆使して活躍する業務から、海上保安部課長や巡視船船長等、幹部職員としてその重責を担う職まで多岐にわたっています。


海上保安庁における女性職員活躍推進への取組

海上保安庁では女性職員の不安の解消と意欲向上に向けて、若手女性職員を対象に、先輩女性職員による経験談等の講演や外部講師による講義などからなる研修を実施しているほか、海上保安大学校・海上保安学校の学生に対し、男女共同参画に関する研修を実施しています。

巡視船艇においては、女性職員も快適に過ごせるよう、新造時の設計段階で配慮を行うとともに、古い設備の改修を行っています。

また、平成30年度からは、女性海上保安官が妊娠により制服を着用できなくなった場合に着用できる被服として「マタニティ服」を導入しました。

この他に、結婚・出産といった職員自身のライフイベントを踏まえ、仕事と家庭を両立させ、働き続けられるキャリアプランについて相談できるよう、人事担当者による面談や、男性職員を含めハラスメント防止のための研修を実施するなど、女性職員の働きやすい職場の構築に努めています。

女性職員の声を取り入れた巡視船艇の設備(改良事例)
女性職員の声を取り入れた巡視船艇の設備(改良事例)
マタニティ服-1
マタニティ服
マタニティ服-2

さまざまな職場で活躍する女性職員

女性も、男性と同様にその能力や適性に応じた役職に就きます。最近では、海上保安部長や管区海上保安本部課長などの管理職、また、巡視船船長や航空機パイロット(機長)等、現場の最前線で活躍する女性海上保安官も増えています。

海で活躍する女性職員
巡視艇 「りゅうせい」 航海士補
田島 なお子
巡視艇 「りゅうせい」 航海士補 田島 なお子

私は現在、第一管区内唯一の消防機能強化型巡視艇で航海科職員として勤務し、航海中は船の操舵や通信・航海計器の取扱いを担当しているほか、船舶火災対応時には本船の放水銃操作を行うこともあります。この他にも関係機関と合同で港湾テロ対策訓練に参加することや、海上犯罪の取締りといった特殊な業務対応もあります。

平成29年4月に現職を拝命した当初、本船では女性職員が私一人ということから不安な面もあったのですが、上司や同僚職員の様々な配慮や協力によって性別に関わらず働くことができる環境です。船内には女性専用の居室や設備もあり、快適な生活環境も確立されているので、今では日々新しい仕事に従事できることを楽しんでいます。

何か専門的な知識・技術を極めることも、多様な公務に幅広く対応できることも選びがたい目標ですが、どんな方法でも海上保安庁の職員として、活躍できるよう努力を重ねていきます。


巡視艇 「しまなみ」 機関士補
小幡 愛
巡視艇 「しまなみ」 機関士補 小幡 愛

私は現在、PC型巡視艇に機関士補として乗船しています。

機関の発停や保守・整備等、海難救助や法令取締りといった警備救難業務、航路しょう戒等の交通業務といった、多様な業務に携わっています。

先日、ヨットが絡網し航行不能となり伊良湖水道航路付近を漂流する事案が発生し、本船が曳航救助することとなりました。現場に赴任して初めてとなる曳航救助であったことから、不安に感じる場面もありましたが、ヨットを無事に最寄りの港まで曳航することができました。

ヨットの乗組員は、はじめは不安そうな様子でしたが、本船へ移り安全が確保できた後は、ほっとした様子でした。

曳航救助を終えた後、自分なりに反省する点が多々ありました。今回の経験を踏まえ、次回に活かせればと思います。

船の上では男女関係なく業務に当たることから、力の差を感じることは少なくありませんが、警備救難業務に携われることに、やりがいを感じています。

今は苦手なことの方が多いですが、自分にできることを増やすために、日夜、業務に臨んでいます。


巡視船 「はくさん」 主計士補
齋藤 菜摘
巡視船 「はくさん」 主計士補 齋藤 菜摘

私はPL型巡視船の主計士補として勤務しています。主な仕事は調理や航海日当・食卓料の請求、被服・物品の管理等行っています。本船は高速巡視船で大変揺れる船で有名です。本船での調理は主計科メンバー3人、船酔いとの闘いで、気持ち悪くなりながらも必死に作ります。船酔いの時は本当に苦しいけれど、乗組員のからだを作り、楽しみを作るこの仕事が大好きです!「美味しい」の一言がどれほど嬉しくて幸せになれるのか主計科でなければわからなかったと思います。日々学び、経験し、いつの日か主任主計士になるのが私の夢です!


空で活躍する女性職員

福岡航空基地 飛行士
中村 倫子
福岡航空基地 飛行士 中村 倫子

小さい頃からパイロットになることが夢で、その夢をかなえるために海上保安学校の航空課程に入学しました。保安学校で1年、防衛省委託研修で約3年の教育を経て事業用操縦士の免許を取得し、現在は福岡航空基地で飛行士として勤務しています。

これまでの訓練や教育は厳しいと感じることもありましたが、初めて自分で操縦する飛行機から見た景色や感動、生活を共にした同期との絆など、かけがえのないものをたくさん得ることができました。

福岡に赴任して1年が経ちましたが、実際に外国漁船の監視・取締りや捜索等の業務を経験し、現場の厳しさや責任の重さを痛感しました。また、それと同等のやりがいも感じており、パイロットとしてだけではなく、海や人を守る海上保安官の一人として空を飛べることを誇りに感じています。


鹿児島航空基地 整備士
松山 智子
鹿児島航空基地 整備士 松山 智子-1
鹿児島航空基地 整備士 松山 智子-2

私は整備士として、航空基地で勤務しており、整備作業や警備救難業務に携わっています。機体不具合時は確認整備士として、故障探求等を行います。海難時はホイストマンとして吊り上げ救助を、また警備事案時は、カメラやビデオ撮影など幅広く業務を行っています。全ての業務がチームワークの必要なものばかりで、仲間との信頼関係がないと成しえません。多くのやりがいと充実感を仲間と共に共感しながら毎日を過ごしています。女性の活躍する場が増えたことで、どの部署も働きやすい職場環境に変わってきています。男女の差無く、様々な能力を生かせる職場だと思います。女性の後輩がどんどん増え一緒に働くことを楽しみにしています。


羽田航空基地 通信科
野地 聖奈
羽田航空基地 通信科 野地 聖奈-1
羽田航空基地 通信科 野地 聖奈-2

私は羽田航空基地で航空通信士として勤務しています。航空通信士は、パイロットや整備士と共にクルーとして航空機に搭乗し船と無線通信を行ったり、地上で無線機器や航空機に搭載している機器の点検、整備を行っています。海難救助等で、航空機に搭乗している職員と陸上から支援をする職員、巡視船に乗っている職員が一丸となって業務に取り組む姿に毎度感動しており、私もチームの一員として十分に活動できるよう、航空の道で3年程経った今でも毎日勉強しています。海上保安庁には様々な職種があり自分にあった職種をとことん追求する事が出来るので、まだまだ女性の少ない職場ではありますが、自分の可能性を広げるため日々業務に邁進しています。


陸で活躍する女性職員

八戸海上保安部 交通課 安全対策係
今野 新菜
八戸海上保安部 交通課 安全対策係 今野 新菜-1
八戸海上保安部 交通課 安全対策係 今野 新菜-2

私は、八戸海上保安部交通課の安全対策係員として勤務しています。経歴は、海上保安学校卒業後、大型巡視船で2年勤務し、今の職に就きました。私の主な仕事の内容は、海難事故が起きた際の原因調査、漁業者やマリンレジャー愛好家等に対する海難防止講習会の実施、灯台や航路標識等の点検整備などの業務です。その中で特に力を入れている業務が海難防止活動です。八戸は全国有数の漁業が盛んな地域であり、海難事故も多発しています。年齢がかけ離れている漁業者に対して、どのように講義すれば安全について考えてもらえるのか、全く分からず悩みました。上司や先輩からの指導を受け、受講者に対して退屈せずに聞いてもらえるような講習資料を自分なりに考えるなど、最終的には「皆さんの孫」からの指導だと思って聞いてくださいと講習会を締めくくるようにしました。その結果、各漁業活動で注意しなければならないことなどの質疑応答ができるようになりました。この一年間の経験を生かして、これからも海難事故「0・ゼロ」を目指したいと考えております。また幅広い海上保安庁の業務に柔軟に対応できるよう、交通業務に拘ることなく、毎日の業務に取り組んでいきたいと思います。


第十一管区海上保安本部 総務部 情報通信課 総括係
中山 美恵子
第十一管区海上保安本部 総務部 情報通信課 総括係 中山 美恵子

私の仕事は、船艇航空機から携帯型無線機まで全ての無線免許の事務を行うことです。私は、4年前26年のブランクを乗り越えて、当庁へ再採用で戻ってきました。26年のブランクは非常に不安がありましたが、職場の上司や同僚から暖かく迎えてもらい家族のサポートを得て日々業務に取り組んでいます。当庁に戻ってきて気付いたことは、以前よりもはるかに向上心と責任感を持って仕事に臨めるようになり、積極的に行動できるようになっていたことです。「子供育ては、自分育て」まさにそれを実感しました。「家事育児は、新たなスキルの習得。ブランクは決して無駄ではない。」そう信じて、今まで無かった新しい目線の提案で当庁を支えたいと思っています。


海上保安学校 管制教官室 教官
有田 真由美
海上保安学校 管制教官室 教官 有田 真由美

昨年4月に海上保安保安学校の教官となり1年になります。

人に教えることは自分が学ぶこと、とはよく耳にする言葉ですが、授業に必要な準備をし、自分が持っている知識や経験をわかりやすく学生に伝えるためにできることを常に考えながら、それを実感する毎日です。

若い学生達にどう接し、指導していけばいいか、試行錯誤は続いていますが、そんな中でも、学生達がはつらつと頑張る姿から私も元気をもらっています。

また、この4月に第1期生を迎えた管制課程の開設に携われたことはとても良い経験でした。現場で元気に業務に取り組める学生を育てていければと思います。

初めて携わった教育という分野ですが、奥深さ、難しさと、それにチャレンジする楽しさとやりがいを感じながら仕事をしています。