海上保安レポート 2018

はじめに


海上保安制度創設70周年記念特集
海洋の安全・秩序をつなぐ〜70年の礎とともに〜


海上保安官の仕事


海上保安庁の任務・体制


■本編

1 領海・EEZを守る

2 治安の確保

3 生命を救う

4 青い海を守る

5 災害に備える

6 海を知る

7 海の安全を創る

8 海をつなぐ


語句説明・索引


図表索引


資料編

特集 海洋の安全・秩序をつなぐ〜70年の礎とともに〜 > 特集2 この10年を振り返って
特集 海洋の安全・秩序をつなぐ〜70年の礎とともに〜
この10年を振り返って
平成20年 2008
主な出来事
主な出来事


海上保安庁創設60周年
海上保安制度創設60周年記念観閲式及び総合訓練
海上保安制度創設60周年記念観閲式及び総合訓練
テロ鎮圧訓練
テロ鎮圧訓練

昭和23年に誕生した海上保安庁は、平成20年5月に創設60周年を迎えました。海上保安の日である5月12日には、天皇皇后両陛下の御臨席を賜り「海上保安制度創設60周年記念式典」を挙行しました。この60周年という節目を機に、海上保安庁関係者一同、自らに与えられた使命をあらためて認識し、責務の遂行に邁進していく決意を新たにしました。

また、5月17、18日には「海上保安制度創設60周年記念観閲式及び総合訓練」を開催し、サミット対策訓練や人命救助・海上防災訓練等を行いました。

このほか第43回国際航路標識協会理事会や第11回世界電子海図データベース委員会といった国際会議を我が国で開催するなど様々な記念事業を展開し、60周年を機に未来へ向けて更なる飛躍を目指す海上保安庁のアピールに努めました。


海上保安制度創設60周年記念式典
海上保安制度創設60周年記念式典

原油価格高騰に伴う緊急対策

平成20年、原油の価格は異常なまでの高騰をみせ、社会に大きな影響を与えました。海上保安庁でも、船艇・航空機の燃料が枯渇する恐れが生じました。そこで、国民の安全・安心確保に直結する事故・事件対応に要する燃料を優先的に確保するため、訓練・研修等の縮減や体験航海の見直しなどを緊急対策として実施しました。


外国船舶航行法施行
はいかいしていたカンボジア籍貨物船
はいかいしていたカンボジア籍貨物船
7月9日 同法施行後初の退去命令発出(福岡県北九州市沖)

7月1日に「領海等における外国船舶の航行に関する法律」(外国船舶航行法)が施行されました。この法律により、領海や内水における外国船舶の航行は継続的かつ迅速に行わなければならず、我が国領海等における外国船舶の停留、びょう泊、係留、はいかい等を伴う航行や日本の港への出入りを目的としない内水の航行は原則として禁止されました。


北海道洞爺湖サミットにおける海上警備
北海道洞爺湖サミット等海上警備対策本部
サミット会場周辺海域を警備する巡視船
サミット会場周辺海域を警備する巡視船

平成20年には我が国において北海道洞爺湖サミット及び関連閣僚会議が開催されました。これに伴い、海上保安庁では、海上警備に万全の体制で臨むため、海上保安庁長官を本部長とする「海上保安庁北海道洞爺湖サミット等海上警備対策本部」を設置しました。

海上警備にあたっては、地元住民、特に漁業関係者等の理解と協力が不可欠です。このため、プレジャーボートの航行自粛や不審な事象等を発見した場合の海上保安庁への通報といった海上警備への協力をお願いする説明会を開催したり、リーフレットを配布したりするなど、官民連携した警備を実施できるよう事前準備を行いました。

北海道洞爺湖サミットの開催期間においては、全国で巡視船艇のべ約730隻、航空機のべ約80機にて警備にあたったほか、関連閣僚会議においても巡視船艇や航空機を配備し万全の体制で警備にあたりました。


大陸棚限界画定調査の完了
海上保安庁の大陸棚調査の範囲
海上保安庁の大陸棚調査の範囲

10月31日、内閣総理大臣を本部長とする総合海洋政策本部会合が開催され、国連に申請する我が国の200海里を超える大陸棚の限界及び限界設定に向けた今後の対応方針が決定され、11月12日、我が国の申請文書は、国連事務局で受理されました。

海上保安庁では、昭和58年度以来水路測量の一環として大陸棚調査を実施し、その調査距離の総延長は約108万キロメートル(地球約27周)にも及びます。

海上保安庁が実施した調査の結果は、大陸棚の延長申請の科学的・技術的資料として使用されたほか、これまで全く未知の海域であった太平洋沖合域の海底地形が明らかになりました。また、これらの成果は、津波シミュレーションにも活用されるなど、防災対策や地球科学の発展に大きく貢献しました。

大陸棚限界画定調査の写真

平成21年 2009
主な出来事
主な出来事


ソマリア派遣捜査隊が自衛艦に同乗

3月、ソマリア周辺海域で海賊による商船への襲撃が頻発していること等を受け、自衛隊法に基づく海上警備行動が発令され、当該海域に護衛艦が派遣されました。その護衛艦には、海賊行為があった場合の逮捕・取調べといった司法警察活動を行うため、8名の海上保安官が「ソマリア周辺海域派遣捜査隊」として同乗しました。

さらに、6月、「海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律」(「海賊対処法」)が国会で成立しました。これにより、海賊海賊船等の国籍がどの国であっても、全ての海賊行為を我が国の犯罪として処罰するなど、海賊行為に適切に対処できるようになりました。これまで自衛隊法に基づく海上警備行動として、ソマリア周辺海域に護衛艦等が派遣されていましたが、同年7月の海賊対処法の施行後は、同法に基づく海賊対処行動として派遣されるようになりました。当該護衛艦には、引き続き海上保安官が同乗しています。


護衛艦が海賊対策のため出港
護衛艦が海賊対策のため出港
護衛艦に同乗している「ソマリア周辺海域派遣捜査隊」
護衛艦に同乗している「ソマリア周辺海域派遣捜査隊」

八丈島沖転覆漁船から89時間ぶりの乗組員救出
転覆船の船底をたたき生存者を捜す潜水士
転覆船の船底をたたき生存者を捜す潜水士
船内の捜索救助
船内の捜索救助

10月28日、横浜海上保安部巡視船「いず」の潜水士は、八丈島の北北東の海上で、転覆状態で発見されたキンメ鯛漁船「第一幸福丸」の船内から乗組員3名を発見、無事救助しました。

これは事故発生から実に89時間ぶりの救出で、乗組員3名は、転覆している船内居住区の中で、暗闇の中、食料や水分もとれないまま3日以上救助を待っていました。

救助された乗組員は生命に別状はなく、その後、巡視船「しきしま」搭載ヘリコプターで八丈島の病院に搬送されました。(他、1名死亡、4名行方不明)


フェリー座礁横転、28名全員救助
大きく傾斜するフェリー
大きく傾斜するフェリー
油まみれになりながら救助にあたった機動救難士
油まみれになりながら救助にあたった機動救難士

11月13日、海上保安庁は、乗員乗客28名を乗せて航行していたフェリー「ありあけ」から、「和歌山県新宮市沖で船体が右に大きく傾斜したため救助して欲しい」との118番通報を受信しました。これを受けて、第三、第四及び第五管区海上保安本部では、直ちに巡視船6隻、航空機2機を現場海域に急行させました。

関西空港海上保安航空基地の機動救難士が、ヘリコプターから「ありあけ」に降下し、船体が大きく傾斜して激しく動揺する中で、乗員乗客21名をヘリコプターに吊り上げて救助しました。また、機動救難士とともに船の姿勢を戻そうと残っていた乗員7名も、膨張式救命いかだで脱出し、無事巡視船「すずか」の搭載艇に救助されました。


南鳥島ロランC局廃止・人事院総裁賞受賞
南鳥島全景
南鳥島全景
ロランC局のアンテナ倒壊処分
ロランC局のアンテナ倒壊処分

南鳥島ロランC局は、平成5年10月に米国沿岸警備隊から移管を受けて以来、20日間交替で職員が滞在することにより管理されてきましたが、衛星を利用したGPS技術の普及により、南鳥島周辺海域におけるロランCの利用者が減少したことから、12月1日、海上保安庁は南鳥島ロランC局を廃止しました。その後、平成22年1月24日には長きにわたって電波を発射していた南鳥島ロランC局の高さ213メートルのアンテナが撤去されました。

本土から約2,000km離れた絶海の孤島に位置する南鳥島では、無線設備の運用・保守だけではなく、生活に欠かせない電気、水道等のライフラインを確保する必要があります。職員自らが、施設の維持・管理をするなど、過酷な勤務環境において苦労を重ね、航行船舶の安全確保に寄与してきました。

これらの功績が認められ、12月には南鳥島ロランC局を管轄していた千葉ロランセンターは、人事院総裁賞(職域部門)を受賞しました。

※ロラン(LORAN)C:海上保安庁により平成27年まで運用されていた地上にある複数の電波局がそれぞれ電波を送信し、船舶がそれを受信することで、船舶が自らの位置を把握する無線測位システム。

平成22年 2010
主な出来事
主な出来事


尖閣諸島を巡る各種事案への対応
巡視船に衝突させた中国漁船船長を逮捕
「閩晋漁(ミンシンリョウ)5179」
「閩晋漁(ミンシンリョウ)5179」

9月7日、尖閣諸島周辺の我が国領海内において、巡視船「よなくに」が操業中の中国トロール漁船「閩晋漁(ミンシンリョウ)5179」に対し領海外へ退去するよう警告を実施中、中国人船長が当該漁船を巡視船「よなくに」に衝突させ、さらに停船を命じつつ追跡していたところ、当該漁船が巡視船「みずき」にも衝突させました。

その後も停船命令に従わずなおも逃走を続けたため、我が国領海外において強行接舷の上、海上保安官が乗り移り停船させ、当該漁船の中国人船長を公務執行妨害容疑で逮捕しました。


中国漁船衝突事件の映像がインターネットに流出
情報流出再発防止対策検討委員会
情報流出再発防止対策検討委員会

9月7日に発生した中国漁船公務執行妨害等被疑事件に関連し、11月4日、第五管区海上保安本部の職員(当時)が、衝突映像をインターネット上に流出させるという事案が発生しました。海上警察機関たる当庁職員が、故意に情報を流出させることはあってはならないことであり、海上保安庁では、今般の事態を深刻に受け止め、情報システム上のファイル管理厳格化等ただちに取り組むべき対策を講じるとともに、海上保安庁における情報管理対策のあり方について、抜本的な見直しを行うため、有識者による「情報流出再発防止対策検討委員会」を設置し、計4回の委員会を開催して、検討を行いました。


「118番の日」を制定
118番通報を受ける運用司令センター
118番通報を受ける運用司令センター

平成12年に運用を開始した海上保安庁緊急通報用番号「118番」は、平成22年5月1日に10周年を迎えました。

118番」は、海事関係者を中心に広く認知され、制定からの10年間で延べ6,000隻以上、20,000人以上が救助(平成22年末現在)されましたが、釣り人等の一般国民にはまだ十分に浸透しているとは言えないことから、海上保安庁では、「118番」をより広く知ってもらうため、毎年1月18日を「118番の日」として制定しました。


映画「海猿」第3作公開

9月18日、映画「海猿」シリーズ第3作「THE LAST MESSAGE 海猿」が公開されました。海上保安庁では、広報活動の一環として映画の撮影に協力したほか、公開前の完成披露試写会に海上保安官100名が参加し、出演者とともに映画の完成を祝いました。


改正港則法、海上交通安全法施行

7月1日、港則法及び海上交通安全法の一部を改正する法律が施行されました。これにより、>海上交通センターによる情報提供や勧告といった航行援助の充実強化、地形や潮流といった各海域の特性に応じた新たな航法の設定、AISを活用した港内での効率的な交通整理手法の導入、台風の襲来時等における港内での危険を防止するための命令等の規定の整備を図りました。


改正港則法の概要

貨物検査法施行
貨物検査法訓練の様子-1
貨物検査法訓練の様子-2
貨物検査法訓練の様子

7月4日、「国際連合安全保障理事会決議第千八百七十四号等を踏まえ我が国が実施する貨物検査等に関する特別措置法」(貨物検査法)が施行され、北朝鮮特定貨物を積んでいる疑いのある船舶に対して、公海上での検査等ができるようになりました。同法の施行に先立ち、第七管区海上保安本部では、貨物検査等の実施に万全を期すため、門司税関と連携した合同訓練を実施しました。


シーシェパードの活動家を逮捕・送致
巡視船艇による海上警備
巡視船艇による海上警備
晴海ふ頭に着岸中の巡視船と「第二昭南丸」
晴海ふ頭に着岸中の巡視船と「第二昭南丸」

2月15日、第23次南極海鯨類捕獲調査の妨害活動を行っていたシーシェパードの活動家が、調査に従事していた「第二昭南丸」に不法に乗り込む事案が発生しました。

「第二昭南丸」は、活動家を船内に保護した後、日本へ向け航行を開始し、3月12日、海上保安庁の巡視船艇等が海上警備を行う中、東京港へ入港しました。同日、東京港晴海ふ頭に着岸中の「第二昭南丸」船内において、艦船侵入の容疑で活動家を逮捕し、3月14日に東京地方検察庁に身柄付送致しました。

その後の捜査により、4月1日、活動家を傷害、威力業務妨害及び銃砲刀剣類所持等取締法違反の容疑で東京地方検察庁に追送致しました。


APEC海上警備を実施
海上警備にあたる巡視船艇
海上警備にあたる巡視船艇

平成22年には我が国において「2010年日本APEC(アジア太平洋経済協力)」の首脳会議及び関連会合が全国各地で行われました。

海上保安庁では、APEC海上警備本部を設置し、関係省庁や一般市民・地域関係者との連携の下、首脳会議会場のほか、全国にある原子力関連施設等の臨海部重要施設を対象に全庁体制で海上警備にあたりました。

※11月の首脳・閣僚会議(横浜市)における勢力巡視船艇…約590隻 航空機…約50機

平成23年 2011
主な出来事
主な出来事


東日本大震災
3月17日 港内の水深を測量する測量船「明洋」(宮城県 仙台塩釡港(塩釡区))
3月17日 港内の水深を測量する測量船「明洋」
(宮城県 仙台塩釡港(塩釡区))

3月11日午後2時46分、三陸沖(牡鹿半島の東南東約130km付近)を震源とする「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」が発生しました。我が国観測史上最大のマグニチュード9.0の巨大地震により、宮城県北部で震度7を観測するなど、東日本の広範囲が強い揺れに見舞われました。また、この地震による津波は、東日本の太平洋沿岸を中心に、北海道から沖縄県までの日本海側を含む広範囲に押し寄せ、特に東北地方から関東地方の太平洋沿岸では、大津波が襲来し、沿岸集落を飲み込みました。この巨大地震と、津波による福島第一原子力発電所事故の複合災害である「東日本大震災」は、死者15,895名・行方不明者2,539名(平成30年3月9日現在 ※出典:警察庁)という多くの犠牲者に加え、多くの住民が避難生活を余儀なくされるなど、未曾有の被害をもたらしました。

海上保安庁では、地震発生直後から、本庁と各管区海上保安本部に災害対策本部等を設置するとともに、全国から多数の巡視船艇・航空機等を直ちに動員して、人命救助や行方不明者の捜索にあたりました。また、福島第一原子力発電所の周辺海域での監視警戒、被災港復旧のための水路測量、被害を受けた航路標識の復旧、航路障害物等に関する航行警報等により、海上輸送路の安全確保に取組みました。さらに、被災地に支援物資を緊急輸送するなど、全庁を挙げて震災対応にあたりました。


津波は激流となって建物を襲う(岩手県釜石市)
津波は激流となって建物を襲う(岩手県釜石市)
襲来する津波の中、緊急出港する巡視船「きたかみ」(岩手県釜石港)
襲来する津波の中、緊急出港する巡視船「きたかみ」(岩手県釜石港)
仙台空港を襲う津波(宮城県岩沼市)
仙台空港を襲う津波(宮城県岩沼市)
仙台航空基地格納庫内にて被災した航空機
仙台航空基地格納庫内にて被災した航空機
3月11日 消防船「ひりゆう」による夜を徹しての冷却放水作業(千葉県市原市)
3月11日 消防船「ひりゆう」による夜を徹しての冷却放水作業(千葉県市原市)
3月19日 救援物資を輸送し、自衛隊トラックに引き継ぐ巡視船(宮城県 仙台塩釜港)
3月19日 救援物資を輸送し、自衛隊トラックに引き継ぐ巡視船(宮城県 仙台塩釜港)
3月13日 ヘリコプターによる吊り上げによって、孤立した家屋から住民を救助する機動救難士(宮城県石巻市)
3月13日 ヘリコプターによる吊り上げによって、孤立した家屋から住民を救助する機動救難士(宮城県石巻市)
非常用灯火の写真
4月15日 特殊救難隊員が非常用灯火を設置し、応急復旧(岩手県 釡石港湾口北防波堤灯台)
4月15日 特殊救難隊員が非常用灯火を設置し、応急復旧(岩手県 釡石港湾口北防波堤灯台)

海上警察権のあり方検討 海上保安庁法改正法案等提出

当時、多数の外国漁船が領海内に入域して操業したり、外国人活動家が遠方離島に上陸して領有権主張活動を行うなど、我が国周辺海域を巡る情勢は大きく変化しました。こうした情勢の変化を踏まえ、1月7日、「海上警察権のあり方に関する検討の国土交通大臣基本方針」が発表され、海上保安庁が事案に即して機動的・効果的に対処できるよう執行権限の強化、装備・要員の充実について提言が行われました。海上保安庁では、同基本方針を踏まえ、海上警察権の強化に向けた制度改正や体制整備の検討を行い、海上保安庁の執行権限の充実強化を図るため、翌24年海上保安庁法等を改正する法律案を第180回国会に提出しました。


北朝鮮情勢への対応
北朝鮮からの漂流船を保護
漂流者が乗船していた小型船をえい航中の巡視艇
漂流者が乗船していた小型船を
えい航中の巡視艇
巡視船に係留中の漂流船(右)
巡視船に係留中の漂流船(右)

9月13日午前7時26分ころ、第九管区海上保安本部に「石川県輪島沖に、ハングルを表示した見慣れない船舶がいる。」との118番通報があり、巡視船艇・航空機により調査にあたったところ、午前8時55分に当該船舶を発見しました。当該船舶には9名(男性3名、女性3名、子供3名)が乗船しており、海上保安官に対して、「韓国に向け北朝鮮を出港してきた、救助して欲しい」などと説明しました。このため、この9名を巡視船に移乗させ、巡視船内で関係機関とともに事情聴取を実施しました。翌14日、入国管理局から仮上陸許可書が発行されたことから、海上保安庁の航空機により、小松空港経由で長崎空港へ輸送し、法務省入国管理局職員に引き渡しを行い、10月4日、9名は韓国へ向け出国しました。

また、平成24年1月6日にも、島根県隠岐諸島島後沖で北朝鮮からの遭難漂流船(4名乗り)を保護しました。

北朝鮮金正日総書記死亡に伴い、監視・警戒体制を強化

12月19日、北朝鮮・金正日総書記の死亡報道を受け、海上保安庁では、本庁及び日本海側を管轄する管区海上保安本部(一、二、七、八、九、十管区)に対策本部を設置し、関係機関と緊密に連携の上、情報収集体制を強化するとともに、全国的に巡視船艇・航空機による監視・警戒体制を強化しました。また、不測の事態発生に備え、原子力発電所等の臨海部の重要施設についても監視・警戒体制を強化しました。


海賊を逮捕 日本へ移送

3月5日、日本関係船舶であるオイルタンカー「グアナバラ」号がアラビア海オマーン沖の公海上を航行中に4名のソマリア人海賊に襲撃される事案が発生しました。海賊4名は米軍に拘束され、「グアナバラ」号乗組員は船内の退避区画(シタデル)に避難していたため全員無事でした。この事件では、政府方針に従い、民間船舶の護衛のために派遣中の海上自衛隊の護衛艦に同乗している海上保安官8名が、米軍から海賊4名を引き取り、護衛艦上で逮捕しました。その後、海上保安庁の航空機により海賊4名を日本まで護送し、3月13日に、東京海上保安部が東京地方検察庁に送致しました。本件は、平成21年7月の海賊対処法の施行以来、同法違反で逮捕した初めての事件となりました。


事案発生場所の地図
海賊に襲撃された「グアナバラ」号
海賊に襲撃された「グアナバラ」号

平成23年度南極海鯨類捕獲調査への対応
調査活動に対する妨害活動
調査活動に対する妨害活動
提供:(財)日本鯨類研究所

南極海鯨類捕獲調査に関し、当時、反捕鯨団体による調査船団に対する妨害活動が深刻化していました。平成22年度の調査活動では様々な妨害活動が行われ、調査船団乗組員の生命、財産及び調査船の安全を確保するため、調査活動を切り上げることとなりました。このような状況を踏まえ、平成23年度の調査活動では、調査船団の安全を確保するため、政府の方針に基づき、調査船団及び水産庁監視船に海上保安官が警乗しました。

平成24年 2012
主な出来事
主な出来事


尖閣諸島を巡る諸事案
領有権主張活動への対応

平成24年に入り、中国、台湾の活動家による領有権主張活動が頻発しました。平成24年7月には、台湾活動家が乗船した船舶「全家福号(ぜんかふくごう)」が、台湾海岸巡防署所属船4隻に随伴され、領海に侵入する事案が発生しました。また8月には、香港活動家が魚釣島に上陸、9月には台湾漁船団約50隻が台湾海岸巡防署所属船12隻に随伴され、領海に侵入する事案が発生しました。このほか、9月には台湾船舶「大瀚(だいかん) 7-11號(ごう)」が、平成25年1月には、台湾活動家船舶「全家福号」が接続水域に入域する事案が発生しました。海上保安庁では、これらの領有権を主張する活動家が乗船した船舶に対し、警告や放水規制等を行うことにより、領海への侵入を未然に防ぐとともに、領海に侵入した場合には、領海からの退去警告を行うなどしました。


台湾活動家船舶「全家福号」
台湾活動家船舶「全家福号」
「全家福号」に放水規制を行う巡視船
「全家福号」に放水規制を行う巡視船
香港活動家船舶を停船させる巡視船
香港活動家船舶を停船させる巡視船
海上保安庁が尖閣三島を取得・保有
魚釣島
魚釣島
北小島(奥)、南小島(手前)
北小島(奥)、南小島(手前)

9月10日、「尖閣諸島の取得・保有に関する関係閣僚会合」が開催され、尖閣諸島における航行安全業務を適切に実施しつつ、尖閣諸島の長期にわたる平穏かつ安定的な維持・管理を図るため、

  • ●可及的速やかに尖閣三島(魚釣島、南小島、北小島)の所有権を取得すること
  • ●取得目的に航行安全業務の実施が含まれること、実効性ある維持・管理に必要な手段を有していること

等から、尖閣三島の取得・保有は海上保安庁がこれを行うこと等が政府の方針として申し合わされ、翌11日、海上保安庁にて、尖閣三島を取得し、保有することとなりました。


中国公船を監視警戒する巡視船
中国公船を監視警戒する航空機
中国公船を監視警戒する巡視船・航空機

映画「海猿」第4作公開

7月13日、映画「海猿」シリーズの4作目「BRAVE HEARTS 海猿」が劇場公開されました。海上保安庁では、広報活動の一環として映画の撮影に協力しました。


映画撮影風景-1
映画撮影風景-2
映画撮影風景
映画撮影風景-3

海上保安庁法等の改正

9月25日、「海上保安庁法及び領海等における外国船舶の航行に関する法律の一部を改正する法律」が施行されました。本法律の施行により、警察官が速やかに犯罪に対処することが困難な尖閣諸島等の一定の遠方離島において、海上保安官が臨時的に陸上での犯罪に対処することが可能になる等、海上保安庁の執行権限が充実強化されました。


法律の概要

大陸棚延長が認められる

4月20日、国連の「大陸棚限界委員会」の勧告により、我が国が平成20年11月に延長申請していた約74万平方kmのうち、約31万平方kmの大陸棚の延長が認められました。これにより我が国は、200海里を超えて延長が認められた大陸棚における資源開発等が可能となりましたが、これは海上保安庁が昭和58年以来25年間、地道に実施してきた大陸棚調査が、今回の勧告で結実したものです。この結果は我が国の海洋権益の拡充に向けた重要な一歩となりました。


大陸棚図解
平成25年 2013
主な出来事
主な出来事


尖閣領海警備
日本漁船(左端)と中国公船(右端)との間に割り込む巡視船と搭載艇
日本漁船(左端)と中国公船(右端)との間に割り込む巡視船と搭載艇
荒天の中、魚釣島周辺海域で監視警戒に従事する巡視船
荒天の中、魚釣島周辺海域で監視警戒に従事する巡視船
領海に侵入した中国公船「海警2101」
領海に侵入した中国公船「海警2101」

7月、中国が海上勢力を有する4つの機関を再編統合して1つの組織とし、同月24日には、初めて「海警」4隻が我が国接続水域に入域し、同月26日に領海に侵入しました。海上保安庁では、領海に侵入しないよう警告を実施しましたが、領海に侵入したため、直ちに領海から退去するよう要求するなどして、領海から退去させました。

海上保安庁では、尖閣諸島周辺海域に接近する中国公船に、より的確に対応するため、平成27年度末までに大型巡視船14隻相当による尖閣諸島周辺の領海警備のための専従体制の整備を進めることとしました。


海上保安官の証票変更
「新しい証票」ポスター
「新しい証票」ポスター

10月1日、海上保安官が携帯する証票のデザインを一新しました。この抜本的な改訂は、海上保安庁が発足した昭和23年以来初めてです。

新しい証票は、バッジと身分を示す身分証が一目でわかるようになり、国民の皆様に海上保安官であることを容易に認識してもらえるようになりました。


第3次交通ビジョン策定
第3次交通ビジョン

10月、交通政策審議会海事分科会で「船舶交通の安全・安心をめざした取組み(答申)」が取りまとめられました。この答申は、おおむね5年間における船舶交通安全政策の方向性と具体的施策を示すもので、海上保安庁では、この答申を「第3次交通ビジョン」と位置づけ、様々な取組みを関係機関と連携し総合的に推進することで、長期的には、2020年代中に現在の船舶事故隻数を半減させることを目指しています。


西之島噴火による新島を確認

11月20日、海上保安庁の航空機が、小笠原諸島の西之島の南南東約500m付近の海上で、直径約200mの新島が出現し、噴煙を上げている様子を確認しました。

海上保安庁では、船舶の安全確保のため、航行警報を発出しました。その後、新島は拡大を続け、西之島と一体となりました。


西之島付近に出現した新島と噴煙の様子
西之島付近に出現した新島と噴煙の様子
陸地が一体となった様子
陸地が一体となった様子

巡視船「あきつしま」就役

11月28日、ヘリコプター2機搭載型巡視船「あきつしま」が就役し、横浜海上保安部に配備されました。

「あきつしま」は、全長約150m、総トン数約6,500トンと、巡視船「しきしま」と並ぶ海上保安庁最大級の巡視船であり、情勢が緊迫化する海域における海洋権益の保全、原子力発電所等へのテロ対策、海賊対処などの遠方・重大事案への対応のために長期行動能力や被害制御能力等を備えています。なお、船名は日本国の総称をあらわす旧国名「あきつしま」から命名されました。


「あきつしま」進水
「あきつしま」進水
相模湾を航行する「あきつしま」
相模湾を航行する「あきつしま」
平成26年 2014
主な出来事
主な出来事


小笠原諸島周辺海域における中国サンゴ漁船への対応
中国サンゴ漁船を追尾する巡視船-1
中国サンゴ漁船を追尾する巡視船-2
中国サンゴ漁船を追尾する巡視船

9月中旬頃から小笠原諸島周辺海域等では、中国サンゴ漁船とみられる外国漁船の確認隻数が増加してきました。9月15日に17隻を確認して以降、その隻数は徐々に増加し、10月30日には212隻を確認するに至りました。

中国サンゴ漁船とみられる外国漁船の増加を受け、海上保安庁では、水産庁や東京都とも連携の上、巡視船や航空機を集中的に投入した特別な態勢により厳正な取締りを行いました。このような対応が功を奏し、中国サンゴ漁船の隻数は徐々に減少しました。

一方で、夜陰に乗じて違法操業を行うなど、悪質・巧妙な行動もみられるようになってきたことから、海上保安庁ではさらに体制を強化の上、厳正な取締りを行い、10月5日から12月21日までの間に10隻の中国サンゴ漁船を検挙しました。

12月以降、中国サンゴ漁船はほとんど確認されなくなりましたが、これは、海上保安庁、水産庁及び東京都が連携して厳正な取締りを実施してきたこと、外交ルートにおいても、中国側に対して再発防止のための実効性のある措置等を求めてきたこと、外国漁船による違法操業の抑止を図るため、違法操業等に対する罰金を引き上げるための法律改正が行われたこと等、政府が一丸となって対応したことによるものだと考えられます。


漁船へ移乗する海上保安官
漁船へ移乗する海上保安官
中国サンゴ漁船検挙状況

尖閣領海警備専従体制整備の着実な推進
巡視船「ざんぱ」
巡視船「ざんぱ」

9月、巡視船「たけとみ」「なぐら」が第十一管区海上保安本部石垣海上保安部に就役しました。その後順次、11月に巡視船「かびら」が、翌27年2月には巡視船「ざんぱ」が同保安部に就役し、尖閣領海警備のための大型巡視船4隻がそろいました。

巡視船「かびら」
巡視船「かびら」
引渡式
引渡式

世界初! ビジュアル航海安全情報の提供を開始
ビジュアル航海安全情報の例
水路通報・航行警報位置図(ビジュアルページ)
QRコード

http://www1.kaiho.mlit.go.jp/TUHO/vpage/visualpage.html

平成23年に発生した東日本大震災では、地震津波により多数の航路標識が倒壊・流出し、大量の漂流物が発生したため、膨大な数の航行警報が発出されました。このため、利用者にとっては、文字により発せられた航行警報の位置や範囲を海図に転記する作業が煩雑となり、重要な情報を見落としてしまうケースも懸念されました。

6月18日、海上保安庁では、航海安全情報をインターネット上でビジュアル掲載するシステムの運用を、世界に先駆けて開始しました。提供区域は日本周辺はもとより太平洋・インド洋に及びます。


海上保安学校入学者が急増
入学式
入学式
起床整列後の海上保安体操
起床整列後の海上保安体操

平成26年10月入学期の海上保安学校の学生採用試験には、昭和26年の開校以来、過去最多となる9122人の申込みがあり、初めて9000人を越えました。10月10日、難関を突破した過去最多の346人(うち女性36人)が、船舶運航システム課程46期として海上保安学校に入学し、海上保安官としての第一歩を踏み出しました。海上保安学校では入学者の大幅増に対し、2階建ての学生寮や厚生棟を新設し、また教職員を増員するなどして準備を行いました。

平成27年 2015
主な出来事
主な出来事


天皇皇后両陛下のパラオ共和国御訪問
御宿舎(巡視船「あきつしま」)御発
御宿舎(巡視船「あきつしま」)御発

パラオ国際空港から御移動される両陛下
パラオ国際空港から御移動される両陛下

4月8日及び9日、戦後70年にあたり、戦争によって亡くなられた犠牲者を慰霊し、平和を祈念するため、また、我が国とパラオ共和国との友好親善関係にかんがみ、天皇皇后両陛下が、同国を御訪問されました。

両陛下の御訪問に際し、海上保安庁の巡視船を両陛下の御宿泊場所とすること等について宮内庁から協力の要請があり、海上保安庁では巡視船「あきつしま」をパラオ共和国に派遣しました。

海上保安庁創設以来、初めて両陛下が巡視船に御宿泊になりましたが、海上保安庁では、両陛下が現地における御日程をつつがなく過ごされるよう、事前の準備を十分に行い、任務を遂行し、両陛下からは、対応した海上保安庁職員に対し、激励と労いの御言葉を賜りました。

また、翌28年1月には、両陛下が、フィリピン共和国を54年ぶりに御訪問になりました。海上保安庁では、パラオ共和国への御訪問に引き続き、両陛下の現地における御移動手段として、海上保安庁の航空機を使用したいとの協力要請を宮内庁から受け、巡視船「あきつしま」をフィリピン共和国に派遣し、その任務を完遂しました。


口永良部島(新岳)噴火災害への対応
子供達におにぎり等を配る海上保安官(測量船「拓洋」乗組員)
子供達におにぎり等を配る海上保安官
(測量船「拓洋」乗組員)

5月29日、鹿児島県の口永良部島(新岳)において、爆発的噴火が発生しました。

海上保安庁では、この爆発的噴火を受け、本庁及び第十管区海上保安本部に対策本部を設置し、周辺海域を航行中であった測量船「拓洋」をはじめ、巡視船、航空機、機動救難士等を出動させ、島民の避難支援、医師及び救援物資の輸送等を行いました。

また、全島民の島外避難後は、巡視船により島周辺の警戒監視を実施するとともに、島民の一時帰島への支援等を実施しました。

噴火時の噴煙の様子(測量船「拓洋」にて撮影)
噴火時の噴煙の様子(測量船「拓洋」にて撮影)

海上保安政策課程開講
開講式における関係機関及び各国大使との記念撮影
開講式における関係機関及び各国大使との記念撮影

10月、海上保安庁は、政策研究大学院大学、国際協力機構(JICA)及び日本財団と連携・協働し、世界初となる海上保安分野の修士課程を開講しました。本課程は、アジア各国海上保安機関の初級幹部職員を我が国に招へいし、アジア諸国の海上保安機関の相互理解の醸成と交流の促進を通じて、海洋の平和と安全の確保に向けた各国の連携協力と認識を共有することを目的としています。本課程では、その教育を通じ、①高度の実務的・応用的知識、②国際法・国際関係についての知識・事例研究、③分析・提案能力、④国際コミュニケーション能力を有する人材を育成することを目指しています。

平成30年5月現在、第3期生(日本、フィリピン、マレーシア、スリランカ)が、高い知識の修得と共有認識の形成に向け日々研鑽を続けています。


機動防除隊発足20周年、特殊救難隊発足40周年

機動防除隊が4月に発足20周年、特殊救難隊が10月で発足40周年を迎えました。機動防除隊は、20年間に332件出動し、ナホトカ号重油流出事故をはじめとする国内外の大規模油流出事案等の海上災害に対応しました。特殊救難隊は、40年間に4,816件出動し、2,525人を救助しました。両隊のこれまでの業績を讃えるとともに、今後の益々の活躍を祈念し、それぞれ記念式典が開催されました。


機動防除隊発足20周年記念式典
機動防除隊発足20周年記念式典
発足20周年を迎えた機動防除隊
発足20周年を迎えた機動防除隊
特殊救難隊発足40周年記念式典で祝辞を述べる石井国土交通大臣
特殊救難隊発足40周年記念式典で
祝辞を述べる石井国土交通大臣
特殊救難隊発足40周年横断幕
特殊救難隊発足40周年横断幕
平成28年 2016
主な出来事
主な出来事


「海上保安体制強化に関する方針」が決定
関係閣僚会議で発言する安倍内閣総理大臣
関係閣僚会議で発言する安倍内閣総理大臣
関係閣僚会議に出席する石井国土交通大臣と中島海上保安庁長官
関係閣僚会議に出席する
石井国土交通大臣と中島海上保安庁長官

12月21日、総理大臣官邸において、内閣総理大臣出席のもと、「海上保安体制強化に関する関係閣僚会議」が開催され、「海上保安体制強化に関する方針」が決定されました。本方針は、我が国周辺海域を巡る状況が、いっそう厳しさを増していることをふまえ、海上保安体制の強化の方向性を示すために策定されたもので、このような方針が閣僚級の会議において決定されることは、海上保安庁の発足以来、初めてのことです。

安倍内閣総理大臣は本方針の決定に際し、「我が国の平和で豊かな海と国民の生命と財産を護り、安全・安心を確保するために、その体制に、一寸の隙も許されない。」「今後、本方針に従って、継続的に海上保安体制の強化を図り、我が国の平和で豊かな海をしっかりと守っていく。」と述べました。


安倍総理大臣、石井国交大臣 海上保安学校卒業生を激励
卒業生の行進を視閲する安倍内閣総理大臣と石井国土交通大臣
卒業生の行進を視閲する
安倍内閣総理大臣と石井国土交通大臣

3月19日、京都府舞鶴市で行われた海上保安学校卒業式に安倍内閣総理大臣及び石井国土交通大臣が出席しました。

内閣総理大臣の海上保安学校卒業式への出席は、海上保安学校設置以来初となります。

安倍内閣総理大臣は、祝辞の中で、「荒波も恐れず、極度の緊張感に耐え、現場での任務を立派に果たす彼ら(海上保安官)は、日本国民の誇りである。」と述べ、「困難な道を、強い使命感を持って選び取った諸君に心から敬意を表したいと思う。」「海上保安庁の役割は、これからも変化し、その重要性を一層増していく。」「広い視野を持ち続け、柔軟な発想で、時代の変化に即応して全力を尽くしてほしい。」と、新任海上保安官として全国各地へ赴任し、これから最前線において現場を支える力となる卒業生を激励しました。

また、石井国土交通大臣からも、「現場の厳しい環境の中で、さらに修練を積み重ね、一日も早く一人前の海上保安官として成長することを期待する。」との激励がありました。


尖閣諸島周辺海域における対応
中国漁船乗組員を救助する海上保安官
中国漁船乗組員を救助する海上保安官

8月5日、約200隻から300隻の中国漁船が尖閣諸島周辺海域に見られるなか、中国公船が中国漁船に引き続く形で領海侵入を繰り返す事案が発生しました。この8月5日、7日、8日及び9日の4日間で、領海侵入した中国公船は延べ28隻に上り、接続水域内で同時に確認された中国公船は、8月8日には、過去最大となる15隻に達しました。尖閣諸島周辺海域において中国公船が中国漁船に引き続く形で領海侵入を繰り返したことは、今回が初めてでした。海上保安庁では、全国からの応援派遣により必要な勢力を確保し、中国公船等に対して領海に侵入しないよう警告するとともに、警告にもかかわらず領海に侵入した場合には、退去要求や進路規制等を行い、領海外に退去させました。

このような緊張が続く8月11日朝、尖閣諸島・魚釣島北西約67kmの海上で、14名乗組みの中国漁船がギリシャ船籍の貨物船と衝突する事故が発生しました。海上保安庁では巡視船及び航空機を急行させ、漂流している乗組員6名を救助するとともに、残りの行方不明者8名の捜索にあたりました。

この救助活動については、現場及び外交ルートにて、中国側から謝意が示されました。


伊勢志摩サミットへの対応
英虞湾内における警戒の様子
英虞湾内における警戒の様子

5月26日、27日に三重県志摩市の賢島において開催された主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)や、これにあわせて全国で行われた関係閣僚会合の海上警備を実施しました。特に、伊勢志摩サミットの海上警備は、会場周辺海域の入り組んだ地形等による、過去類を見ない厳しい環境下であり、会議期間中、本庁及び開催地を所管する第四管区海上保安本部に対策本部を設置するとともに、最大約100隻の巡視船艇等を投入するなど、最大規模の警備体制で対応しました。


「海上交通安全法等の一部を改正する法律案」が可決成立

船舶の大型化や危険物取扱量の増加が進む中、東京湾等の船舶交通が著しくふくそうする海域における船舶交通の安全確保が求められています。

このような状況に対応するため、海上保安庁では、東京湾において一元的な海上交通管制を構築・運用するべく、レーダー等の設備を整備するとともに、「海上交通安全法等の一部を改正する法律案」を2月に国会に提出し、同年5月に可決成立しました。


尖閣領海警備専従体制確立
専用桟橋に係留中の巡視船(石垣港)
専用桟橋に係留中の巡視船(石垣港)

平成24年9月の尖閣三島の取得・保有以降、尖閣諸島周辺海域において、中国公船による徘徊、領海侵入が常態的に行われていることから、海上保安庁では、全国から巡視船を派遣する等により、中国公船への対応を行なうとともに警備体制の整備を進めてきました。2月には、最後の大型巡視船2隻が就役し、大型巡視船14隻相当による尖閣領海警備専従体制が確立しました。


熊本地震への対応
巡視船「でじま」による給水支援の様子(熊本港)
巡視船「でじま」による給水支援の様子(熊本港)

4月14日及び16日、熊本県熊本地方を震源とする、最大震度7を観測する地震が2回発生し、熊本県、大分県を中心とした九州各地に甚大な被害をもたらしました。

海上保安庁では、地震発生後、直ちに巡視船艇・航空機等により、沿岸部の被害状況調査を行うとともに、航行警報等により付近船舶に対し情報提供を行いました。さらに、航空機による負傷者、入院患者等の緊急搬送を実施したほか、巡視船等による給水・食料支援、入浴提供等の被災地住民に対する支援を行いました。

これらの支援情報については、SNS等を活用して、被災者へお知らせしました。


過去最大量となる覚醒剤の密輸事件摘発

5月、那覇海上保安部は、関係機関と合同で、那覇港に入港したマレーシア船籍のヨット船内において、麻薬等(ケタミン約630g、MDMA等66錠及び1.6g)を不法所持していた船長ら6名(台湾人)を麻薬及び向精神薬取締法違反(不法所持)の容疑で逮捕しました。さらに、当該船舶を捜索した結果、我が国において、過去最大の押収量となる、覚醒剤約597kg(末端密売価格約418億円)を発見し、密輸入しようとした疑いで、同6名を覚せい剤取締法違反(営利目的輸入未遂)の容疑で再逮捕しました。

船長らは、覚醒剤を東シナ海付近海上において船籍不詳の船舶から瀬取り(洋上における積荷の受け渡し)したとみられています。


密輸に関与した船舶
密輸に関与した船舶
押収した覚せい剤等
押収した覚せい剤等
平成29年 2017
主な出来事
主な出来事


世界海上保安機関長官級会合を初開催

9月14日、海上保安庁は日本財団と共催で、世界の海上保安機関等から長官級が参加する、世界で初となる「世界海上保安機関長官級会合」を東京において開催しました。本会合では、海上保安分野における地球規模で解決すべき課題について、「海上の安全及び環境保護」、「海上のセキュリティ」、「人材育成」の3つのテーマに分けて、各国の海上保安機関の先駆的な取組み等の発表、意見交換が行われました。会合の総括として、世界が直面している課題を克服するため、世界中の知恵及び技術を結集すること、連携の強化及び対話の拡大を図ることの重要性等を確認する議長総括をとりまとめました。(詳細は「海をつなぐ」1 世界海上保安機関長官級会合の開催


世界海上保安機関長官級会合本会合集合写真
世界海上保安機関長官級会合本会合集合写真
ウェルカムレセプションで挨拶する安倍内閣総理大臣
ウェルカムレセプションで挨拶する安倍内閣総理大臣
開会挨拶を行う中島海上保安庁長官
開会挨拶を行う中島海上保安庁長官

モバイルコーポレーションチーム発足及びフィリピンへの初派遣

10月2日、海上保安庁総務部国際・危機管理官に東南アジア諸国の海上法執行機関に対する能力向上支援のための専従部門「モバイルコーポレーションチーム」(MCT)を新設しました。

11月5日〜17日までの間、初派遣としてMCTをフィリピンに派遣し、フィリピン沿岸警備隊職員約40名に対し、日本政府からフィリピン沿岸警備隊へ供与した巡視船及び同小型高速艇を使用して、出入港・旋回・追従等基本操船や被疑船舶を停船させるための挟撃規制等応用操船など、海上法執行に係る各種操船訓練を実施しました。訓練期間中の16日には、フィリピン訪問中の薗浦総理大臣補佐官が訓練を視察しました。(詳細は「海をつなぐ」1 海上保安庁モバイルコーポレーションチーム発足


MCT発足
MCT発足
MCT初派遣
MCT初派遣

九州北部豪雨 孤立の40人ヘリで救助
ヘリコプターによる孤立者救助
ヘリコプターによる孤立者救助
機動救難士による救助活動
機動救難士による救助活動

7月5日から6日にかけて、福岡県と大分県の内陸部を中心とする九州北部で集中豪雨が発生しました。海上保安庁は、直ちに巡視船・航空機などを発動させ、捜索、被害状況調査及び孤立者救助等を実施しました。また、航行警報海の安全情報を発出し、付近船舶等へ情報提供を行うとともに、福岡県、大分県及び熊本県に職員を派遣し連絡調整にあたりました。(詳細は「災害に備える」自然災害への対応


過去最大の押収量 金地金206キログラム密輸入で中国人等を摘発
押収した金地金
押収した金地金
摘発の状況
摘発の状況

5月31日、第二、第七管区海上保安本部及び国際組織犯罪対策基地は、佐賀県警、門司税関などと合同で、小型船舶を利用し、東シナ海海上において船籍不詳の船舶から瀬取り(積み荷の移し替え)した金地金約206キログラム(鑑定価格約9億円)を佐賀県唐津市の名護屋漁港に陸揚げしたとして、中国人等10人を関税法違反(無許可輸入)容疑で摘発しました。押収した金地金は過去最大の量となります。


日本海大和堆において急増する北朝鮮漁船への対応
警告を受けて退去する北朝鮮漁船
警告を受けて退去する北朝鮮漁船
放水を実施する巡視船
放水を実施する巡視船

我が国EEZ内の日本海大和堆では、違法操業を行う北朝鮮漁船等が急増したことから、日本漁船の安全確保や違法操業の取締り等のため、航空機による監視に加え、7月上旬から複数隻の巡視船を同海域に派遣し、北朝鮮漁船等に対し退去警告及び必要に応じた放水措置を実施し、同海域から退去させました。(詳細は「治安の確保」大和堆における北朝鮮漁船への対応


朝鮮半島からのものと思料される漂流・漂着船への対応
漂着木造船
漂着木造船

平成29年は朝鮮半島からのものと思料される漂流・漂着木造船等が日本海沿岸で104件確認され、11月には北海道松前小島に北朝鮮乗組員が上陸し、避難小屋の発電機等を窃盗する事案も発生しました。

この年の漂流・漂着木造船等が増加した理由は一概には言えませんが、例年、冬季の日本海は北西の季節風が連吹し、荒れる傾向があります。特に、昨年は日本海が大時化になった日が多く、これが原因の一つになったと考えられます。

このような状況を受け、海上保安庁では、日本海沿岸区域を重点とした巡視警戒、地元の自治体や関係機関との情報共有及び迅速な連絡体制の確保の徹底を図るとともに、漁船や地元住民からの不審事象の通報に関する働きかけを推進し、漂流・漂着木造船等の早期発見に努めています。(詳細は「治安の確保」漂流漂着船にかかる対応