平成30年5月、海上保安制度創設70周年を迎えました。
海上保安庁が発足した当時は、先の大戦により我が国の国土は著しく荒廃し、周辺海域には多数の機雷、沈船が残りました。航路標識もその多くが倒壊し、海上交通の安全の基礎は全く失われていました。また、密航・密輸、海賊行為などの海上犯罪も横行し、正に「暗黒の海」と化していました。このような中、日本の海に明かりを灯すがごとく、昭和23年5月、海上保安庁は、『海上の安全』や『治安の確保』に関する行政事務を一体的に実施する警察機関として創設され、紺地にコンパスマークを白く染め抜いた海上保安庁の庁旗が高々と掲揚されました。
大久保武雄・初代海上保安庁長官は、職員を前に「海上保安庁の精神は『正義』と『仁愛』である」と訓示しました。これ以降、海上保安官一人一人がこの言葉を胸に、国民の皆さまの安全・安心を守るため、業務に邁進してまいりました。
創設から70年を迎え、昨今の我が国周辺海域に目を向けると、尖閣諸島周辺海域における中国公船の領海侵入、外国海洋調査船による調査活動のほか、日本海において北朝鮮漁船等による違法操業が急増するなど、過去に類を見ないほど厳しい状況となっております。
このような状況に対応するため、平成28年末には関係閣僚会議が開催され、「海上保安体制強化に関する方針」が決定されました。海上保安庁ではこの方針に沿って体制強化を着実に進め、70年の礎とともに、海洋の安全・秩序を次世代につなぐため、不断の努力を積み重ねていきます。
海上保安レポート2018では、「海上保安制度創設70周年記念特集」と題し、この70年のあゆみ等をわかりやすくご紹介することとしております。本書を多くの皆さまにご覧いただき、海上保安庁に対する理解が少しでも深まれば幸いです。
平成30年5月