海上保安レポート 2018

はじめに


海上保安制度創設70周年記念特集
海洋の安全・秩序をつなぐ〜70年の礎とともに〜


海上保安官の仕事


海上保安庁の任務・体制


■本編

1 領海・EEZを守る

2 治安の確保

3 生命を救う

4 青い海を守る

5 災害に備える

6 海を知る

7 海の安全を創る

8 海をつなぐ


語句説明・索引


図表索引


資料編

2 治安の確保 > CHAPTER V. 密輸・密航対策
2 治安の確保
CHAPTER V. 密輸・密航対策

近年の密輸情勢については、瀬取り(洋上における積荷の受け渡し)、コンテナ貨物を利用した密輸、クルーズ船の船員や乗客による密輸が発生しており、手口の大口・巧妙化が見受けられます。また、密航情勢については、小型船舶や貨物船を利用した数名規模の密航が発生しており、手口の小口・巧妙化の傾向が続いています。これら密輸・密航事犯の背後に国際犯罪組織が関与するものも発生しています。

海上保安庁では、我が国の治安及び法秩序を乱すこうした密輸・密航事犯を厳格に取締り、薬物や銃器の密輸、密航者の水際阻止を図っています。

平成29年の現況
密輸事犯について

平成29年の薬物事犯の摘発件数は、8件でした。このうち覚醒剤に関しては、平成29年5月の海上コンテナ貨物に隠匿された約350kgの密輸入事件や、8月の我が国の排他的経済水域において国籍不詳の船舶から瀬取りした約474kgの密輸入事件など、5件を摘発、約825kgを押収しました。

薬物や銃器以外の密輸事犯としては、平成29年5月、過去最大押収量となる金地金約206kgの密輸入事件を摘発しています。

このように、海上からの密輸事犯については、小型船舶を利用した瀬取りや海上コンテナ貨物への隠匿といった手法により、一度に大量の薬物等を密輸する事犯を相次いで摘発したほか、訪日クルーズ船の外国人乗客による薬物等の国内持込み事犯も摘発しており、密輸手口の大口・巧妙化が見受けられ、国際犯罪組織が関与するものも発生しています。

最近の主な薬物・銃器事犯摘発状況
最近の主な薬物・銃器事犯摘発状況

薬物事犯の摘発状況
薬物事犯の摘発状況
銃器事犯の摘発状況
銃器事犯の摘発状況
増加する金地金密輸事犯
摘発状況
摘発状況
押収した金地金
押収した金地金
小型船舶を利用した瀬取りによる密輸入事件(佐賀県唐津市)

平成29年5月、第二、第七管区海上保安本部及び国際組織犯罪対策基地は、関係機関と合同で、小型船舶を利用し、東シナ海の公海上において、国籍不詳の船舶から金地金206kg(一件あたりの押収量としての過去最大量)を瀬取りし、その後佐賀県唐津市名護屋漁港に陸揚げしたとして、日本人5名及び中国人3名を関税法違反(無許可輸入)で逮捕しました。


押収した金地金
押収した金地金
訪日クルーズ船を利用した密輸入事件(沖縄県那覇市)

平成29年10月、那覇海上保安部は、関係機関と合同で、那覇港に入港したクルーズ船を利用して金地金27kgを密輸入した中国人乗組員2名及び那覇市内で同金地金を受け取った香港人乗客等2名を関税法違反(無許可輸入)で逮捕しました。


クルーズ船
クルーズ船
密航事犯について

平成29年における密航事犯の摘発件数は1件であり、摘発者数については、不法入国者2名でした。

船舶による不法出入国事犯については、近年、密航斡旋ブローカーの関与が疑われる小型船舶や貨物船を利用した数名規模の密航事犯及び退去強制歴を有する船員が不法上陸した事犯を摘発しており、小口・巧妙化の傾向が続いています。

密航事犯の背後には、国内外に密航を斡旋する手引者が存在することが多いことから、海上保安庁では、密航者を検挙した後も関係機関と連携して捜査を継続し、事件の全容解明に努めています。

船舶利用の不法出入国事件摘発状況
船舶利用の不法出入国事件摘発状況
船舶利用の不法出入国者国籍別摘発状況
船舶利用の不法出入国者国籍別摘発状況

今後の取組み

海上保安庁では、引き続き、国際組織犯罪対策基地を中心に国内外の関係機関との協力を強化しつつ、海事・漁業関係者や地元住民からの情報収集を行うとともに、その分析活動に努め、密輸・密航が行われる可能性が高い海域において、巡視船艇・航空機による重点的な監視・警戒を実施し、密輸・密航の蓋然性が高い地域から来航する船舶に対しても、重点的な監視や立入検査を実施することで、密輸・密航事犯の水際阻止に努めていきます。