海上保安レポート 2018

はじめに


海上保安制度創設70周年記念特集
海洋の安全・秩序をつなぐ〜70年の礎とともに〜


海上保安官の仕事


海上保安庁の任務・体制


■本編

1 領海・EEZを守る

2 治安の確保

3 生命を救う

4 青い海を守る

5 災害に備える

6 海を知る

7 海の安全を創る

8 海をつなぐ


語句説明・索引


図表索引


資料編

2 治安の確保 > CHAPTER III. 国内密漁対策
2 治安の確保
CHAPTER III. 国内密漁対策

我が国周辺海域の豊かな水産資源は決して無尽蔵ではなく、生態系のバランスを保ち水産資源を枯渇させないために漁獲量や操業方法・区域・期間に制限を設けるなどのルールが設定されています。しかしながら、ルールに従わない一部の漁業者による違法な操業や、資金確保を目論む暴力団等による水産資源の乱獲が後を絶ちません。

海上保安庁では、密漁被害を受ける地元漁業者等からの取締り要請にも適切に対応するため、関係機関や地元自治体と連携・協力し、それぞれの地域の特性に応じた取締りを行い、漁業秩序の維持を図っています。

平成29年の現況
漁業関係法令違反の送致件数の推移(外国人漁業を含む)
漁業関係法令違反の送致件数の推移(外国人漁業を含む)

平成29年の国内密漁事犯の送致件数は2,629件で、前年に比べ262件増加しました。

密漁は、実行部隊と買受業者が手を組んだ組織的な形態で行われるもののほか、暴力団が取引価格の高い漁獲物を資金源とするために関与する事例も見受けられ、その手口は悪質かつ巧妙です。

また、近年、放流等により漁業者が育成・管理する水産資源を個人消費の目的で密漁するものも多く見受けられます。

岡山県下の密漁グループによるなまこ潜水器密漁事件を検挙
密漁された大量のなまこ
密漁された大量のなまこ
密漁に使用されたウェットスーツなど
密漁に使用されたウェットスーツなど

水島海上保安部は、平成28年2月頃、管内において密漁者情報を得たことから、同年4月頃から長期にわたる内偵を実施したところ、県内の小型船が県境を越えた兵庫県海域において潜水器を用いてなまこの密漁を行っている状況を確認しました。

そこで、平成29年2月14日、前年より捜査体制を構築していた姫路海上保安部のほか、関係機関とも連携のうえ合同で取締りを行い、密漁を行った3名を、漁業法違反(無許可潜水器漁業)等の容疑で検挙しました。

捜査の結果、被疑者らは兵庫県姫路市沖の兵庫県海域において、兵庫県知事の許可を受けないで小型船と潜水器を使用して密漁を行い、なまこ約840キログラム(時価総額約50万円)を採捕したことが明らかとなりました。

今後の取組み

海上保安庁では、監視能力の更なる向上や採証資機材等の充実を図り、悪質・巧妙化する密漁事犯の厳格な監視・取締りに努めます。また、引き続き、関係機関や漁業関係団体等との緊密な連携を図ることで、地域の特性に応じた未然防止対策等の総合的な密漁対策を推進し、漁業秩序の維持に努めていきます。