全世界の海賊及び船舶に対する海上武装強盗(以下「海賊等」という。)事案は、世界各国や海事関係者の懸命な取り組みにより近年減少傾向にあるものの、引き続き、ソマリア沖・アデン湾や東南アジア海域等において発生しています。
主要な貿易のほとんどを海上輸送に依存する我が国にとって、航行船舶の安全を確保することは、社会経済や国民生活の安定にとって必要不可欠であり、極めて重要な課題です。
海上保安庁では、海賊対処のために派遣されている海上自衛隊の護衛艦への海上保安官の同乗、ソマリア沖・アデン湾や東南アジア海域等の沿岸国海上保安機関に対する法執行能力向上支援等により、海賊対策を実施しています。
平成28年の現況
ソマリア沖・アデン湾の海賊について
ソマリア沖・アデン湾における海賊等発生件数は、国際海事局(IMB:International Maritime Bureau)の年次報告書によると、平成28年は2件であり、近年極めて低い水準を維持しています。これは、アデン湾における自衛隊を含む各国部隊による海賊対処活動、船舶の自衛措置、民間武装警備員による乗船警備等、国際社会による海賊対策の成果の現れといえます。しかしながら、ソマリア国内の貧困といった海賊問題の根本的な要因が未だ解決していない状況に鑑みれば、海賊等の脅威は存続しているといえます。海上保安庁では、海賊対処のために派遣された海上自衛隊の護衛艦に、海上保安官8名を同乗させ、海賊の逮捕、取調べ、証拠収集等の司法警察活動に備えつつ、自衛官とともに海賊行為の監視、情報収集等を行っており、平成21年に第1次隊を派遣して以降、平成29年3月までに合計27隊216名を派遣しています。また、平成29年2月には、ジブチ共和国に航空機を派遣し、関係機関と連携して海賊護送訓練等を実施しました。
また、平成25年11月に施行された「海賊多発海域における日本船舶の警備に関する特別措置法」に基づき、小銃を所持して警備を行う民間武装警備員の技能確認や対象船舶の我が国入港時の立ち入り確認等、同法の的確な運用に努めています。
海上保安庁では、これらの取り組みのほか、同海域の沿岸国海上保安機関が自立的に海賊対処等の法執行活動が行えるよう、同機関職員に対する能力向上支援等を行っています。
(ソマリア沖・アデン湾の沿岸国海上保安機関への能力向上支援については、7 海をつなぐ CHAPTER II 諸外国への能力向上支援 3 ソマリア沖・アデン湾で詳しく説明していますのでご覧ください。)
東南アジア海域の海賊について
平成28年の東南アジア海域における海賊等発生件数は68件であり、平成22年以降、インドネシア周辺海域における事案が急増したことに伴い増加傾向にあったものの、平成28年には半減したことから、東南アジア海域全体の発生件数は減少しています。
海賊等事案の主な犯行形態は、従来、現金、乗組員の所持品、船舶予備品等を盗むという比較的軽微な窃盗や海上武装強盗事案が多数を占めていましたが、平成28年は、フィリピン沖のスールー海・セレベス海において船員の誘拐事案が急増しています。
海上保安庁では、平成12年から東南アジア海域等に巡視船・航空機を派遣し、寄港国海上保安機関と海賊対策に関する連携訓練や意見・情報交換を行うなど連携・協力関係の推進に取組んでいます。平成28年度においては、7月にフィリピン及びマレーシアへ、9月から10月にかけてインドネシアへ巡視船を派遣、また、12月にカンボジア及びタイへ航空機を派遣し、各国海上保安機関との間で連携訓練等を実施しました。さらに、アジア海賊対策地域協力協定(ReCAAP)に基づきシンガポールに設置された情報共有センター(ISC)に職員を派遣するなど国際機関を通じた連携・協力に貢献しています。
そのほか、東南アジア海域等の沿岸国海上保安機関職員に対し研修等を行うなど、法執行能力向上のための支援に積極的に取組んでいます。(東南アジア海域等の沿岸国海上保安機関への能力向上支援については、7 海をつなぐ CHAPTER II 諸外国への能力向上支援 1 東南アジア諸国への支援で詳しく説明していますのでご覧ください。)
今後の取組み
海上保安庁では、今後とも、海賊対処のために派遣される海上自衛隊の護衛艦に海上保安官を同乗させるほか、ソマリア沖・アデン湾及び東南アジア海域等の沿岸国海上保安機関に対する法執行能力向上支援にも引き続き取り組み、関係国、関係機関と連携しながら、海賊対策を的確に実施していきます。