海上保安レポート 2017

はじめに


TOPICS 海上保安の一年


特集 平和な海の継承〜海上保安庁の使命〜


海上保安官の仕事


海上保安庁の 任務・体制


■本編

1 治安の確保

2 生命を救う

3 青い海を守る

4 災害に備える

5 海を知る

6 交通の安全を守る

7 海をつなぐ


語句説明・索引


図表索引


資料編

海上保安庁の任務・体制
海上保安庁の任務・体制
海上保安庁の任務・体制

我が国周辺海域では、毎年数多くの事件・事故が発生しており、海上保安庁では、日々、こうした事件・事故の未然防止に努めるとともに、遠方離島海域における領海警備や、海洋権益の確保、船舶交通の安全の確保等、さまざまな業務にあたっています。

なかでも、尖閣諸島周辺海域で執ように繰り返されている中国公船による領海侵入や、外国の海洋調査船による我が国の事前の同意を得ない海洋調査活動等の我が国の主権にかかわる事案への対応等、海上保安庁の業務はますます多様化し、その重要性が高まっています。

ここでは、海上保安庁の任務とその基盤となる体制について紹介します。

1 海上保安庁の任務

海上保安庁は、「海上の安全及び治安の確保を図ること」を任務としています。この任務を果たすため、広大な「海」を舞台に、国内の関係機関のみならず、国外の海上保安機関等とも連携・協力体制の強化を図りつつ、治安の確保、海難救助、海洋環境の保全、自然災害への対応、海洋調査、海洋情報の収集・管理・提供、船舶交通の安全の確保等、多種多様な業務を行っています。

海上保安庁法(昭和23年法律第28号)(抄)

(第2条第1項) 海上保安庁は、法令の海上における励行、海難救助、海洋汚染等の防止、海上における船舶の航行の秩序の維持、海上における犯罪の予防及び鎮圧、海上における犯人の捜査及び逮捕、海上における船舶交通に関する規制、水路、航路標識に関する事務その他海上の安全の確保に関する事務並びにこれらに附帯する事項に関する事務を行うことにより、海上の安全及び治安の確保を図ることを任務とする。

2 機構

海上保安庁は、国土交通省の外局として設置されており、本庁(東京都)の下、日本全国に管区海上保安本部、海上保安部等を配置し、一元的な組織運用を行っています。


本庁

本庁には、長官の下に、内部部局として総務部、装備技術部、警備救難部、海洋情報部、交通部の5つの部を置いています。本庁は、基本的な政策の策定、法令の制定や改正、他省庁との調整等を実施しており、海上保安行政の「舵取り」役を担っています。


管区海上保安本部・海上保安部等

海上保安庁では、全国を11の管区に分け、それぞれに地方支分部局である管区海上保安本部を設置し、担任水域を定めています。

また、管区海上保安本部には、海上保安部、海上保安署、航空基地等の事務所を配置し、巡視船艇や航空機等を配備しています。これらの事務所や巡視船艇、航空機等により、治安の確保や人命救助等の現場第一線の業務にあたっています。


教育訓練機関

海上保安庁では、将来の海上保安官の養成や、現場の海上保安官の能力向上のための教育訓練機関として、海上保安大学校(広島県)や海上保安学校(京都府)等を設置しています(詳しくは海上保安官の仕事 目指せ! 海上保安官をご覧ください。)。


機構図(平成29年4月1日現在)
機構図(平成29年4月1日現在)

海上保安庁の平成29年度機構改正は以下のとおりです。

  • 第十一管区海上保安本部における会計に関する業務を専門的に管理監督する体制を強化するため、第十一管区海上保安本部に「経理補給部」を設置。
  • 「力ではなく、法とルールが支配する海洋秩序」の強化を図る観点から、東南アジアを中心としたアジア諸国の海上保安機関に対して、適切な能力向上支援を専従的に実施する体制を構築するため、本庁総務部に「海上保安国際協力推進官」を設置。
  • 海上交通安全法等の一部を改正する法律(平成28年法律第42号)」により追加された新たな権限を東京湾海上交通センターの所掌事務に追加するとともに、東京湾における一元的な海上交通管制の構築のため、東京湾海上交通センターの設置位置を「横須賀市」から「横浜市」に変更予定。
  • 第八管区海上保安本部管内では、大規模地震の発生が懸念されるとともに、多数の原子力関連施設が集中しており、原子力防災体制の強化が喫緊の課題となっている状況等を踏まえ、同管区の防災体制を強化するため、第八管区海上保安本部警備救難部に「環境防災課」を設置。
管区海上保安本部担任水域概略図
管区海上保安本部担任水域概略図
3 定員
平成29年度における増員の内容(単位:人)
平成29年度における増員の内容(単位:人)

平成28年度には、尖閣への応援派遣船の体制強化のための要員等として、104人を緊急増員し、これを含めた海上保安庁の定員は13,626人となっています。

このうち、管区海上保安本部等の地方部署の定員が11,827人、巡視船艇・航空機等の定員が6,948人となっています。

平成29年度は、戦略的海上保安体制の構築や治安・安全対策等の海上保安を巡る諸課題への対応及び重大な事案に対する海上保安体制の強化のための要員として、338人を増員し、海上保安の基盤強化を推進しました。

4 予算

海上保安庁の平成29年度予算額は「海上保安体制強化に関する方針」を受け、過去最大規模の2,106億円となっています。このうち、人件費として999億円、船艇・航空機の整備費として484億円、運航費(燃料費、修繕費等)として334億円を計上しています。

また、平成28年度第2号及び第3号補正予算において、それぞれ674億円、30億円が措置されています。


平成29年度の予算
平成29年度の予算
平成29年度の予算の重点事項(単位:百万円)
平成29年度の予算の重点事項(単位:百万円)
5 装備

海上保安庁では、平成28年度末現在、455隻の船艇と74機の航空機を保有しています。(船艇・航空機の種別については、資料編 船艇 をご覧ください。)

具体的な整備については、尖閣領海警備等の重大な事案に対応する海上保安体制の強化のため、大型巡視船等6隻及び航空機5機の増強整備を推進していくこととしています。

また、全国における海難、海上災害、不審事象、不法行為等に迅速かつ的確に対応し、国民の安全・安心を確保するため、巡視船艇等19隻(6隻増強・13隻代替)、航空機4機(1機増強・3機代替)の整備を推進していくこととしています。

これらの増強整備は、近年において例のない大幅な海上保安体制の強化であり、引き続き戦略的海上保安体制の構築を推進していくこととしています。


平成29年度の船艇・航空機の整備状況
平成29年度の船艇・航空機の整備状況
南西諸島周辺海域の体制強化! 〜宮古島海上保安部と種子島海上保安署の設置〜
種子島海上保安署の設置

平成28年10月1日、平成25年以来となる、新たな海上保安部署が沖縄県宮古島市(宮古島)と鹿児島県西之表市(種子島)に設置されました。

鹿児島県大隅半島佐多岬から奄美大島までの海域は、大隅海峡をはじめとする大型貨物船等がひんぱんに往来する海域があり、また、外国漁船等の進出の通航路となっていますが、これまで海上保安部署が設置されていない海域となっていました。このような状況において、海上保安庁では南西諸島周辺海域における外国漁船等の監視体制や、海難事案等への迅速な対応体制の強化を図るため、種子島に種子島海上保安署を設置しました。

船舶写真

また、尖閣諸島周辺海域における定期的なしょう戒、不審な外国漁船の継続的な監視・警戒等を適切に行う取締り拠点としての強化を図るため、宮古島海上保安署を宮古島海上保安部に昇格させました。同保安部には、接舷用防舷物や、遠隔放水銃、全周囲監視用テレビジョン装置を装備し、規制能力を強化した新型巡視船を配備しています。

これらにより、南西諸島周辺海域における外国漁船等による不法行為等の各種事案に、迅速かつ的確に対応していきます。

知っていますか? 正義仁愛
正義仁愛

海上保安庁発足の日(昭和23年5月1日)、大久保武雄初代海上保安庁長官は、「海上保安庁の精神は“正義と仁愛”である」と訓示しました。正義とは、海上治安維持のよって立つ精神であり、仁愛とは、人命保護と航行安全の象徴です。

発足以来、海上保安庁の業務は時代に合わせて変わりつつもありますが、正義仁愛という言葉は、個々の海上保安官に浸透するとともに、海上保安庁の伝統として、今も脈々と受け継がれています。

6 監察

海上保安官は、公務員として、国民の視点に立った公正かつ効率的な行政の運営を行うことに加え、司法警察職員として、厳正な規律を保持することが求められています。また、危険性が高い特殊な環境で業務を迅速かつ的確に遂行しなければならないため、安全に関する高い意識も求められています。

このため、海上保安庁では、本庁に首席監察官を、各管区海上保安本部に管区首席監察官を設置し、国民の視点に立ち公正かつ客観的に庁内の監察を行っています。具体的には次のような監察を実施しています。

  • 業務の改善や適正な運営を図るため、毎年度、特定の調査項目を定めて行う業務監察
  • 事故や不祥事の発生時に事実関係の確認や原因の究明・分析を行う事故等監察

こうした監察によって問題点及び改善すべき事項を明らかにし、職場・業務環境の改善向上を図るとともに、事故等の未然防止や再発防止、厳正な規律の維持等に努めています。

7 政策評価

海上保安庁では、国民の皆様のニーズに沿った行政運営を行うため、「行政機関が行う政策の評価に関する法律」等に基づき政策評価を実施しています。

政策評価の基本的な方式は、以下の3種類に分けられます。


(1)政策アセスメント(事業評価方式)

新規に導入しようとする施策(予算要求、法令改正等)や既存の施策の改正等について、国土交通省の設定目標に照らして、その必要性、有効性、効率性等の観点から評価を実施しています。


(2)政策チェックアップ(実績評価方式)

主要な施策目標ごとに業績指標とその目標値を設定し、その達成度を評価しています。


(3)政策レビュー(総合評価方式)

国民の皆様の関心の高いテーマ等を選定し、総合的な評価を実施しています。


このほか、政策の特性に応じて、個別公共事業の評価や個別研究開発課題の評価等を実施しています。

また、海上保安庁は、「中央省庁等改革基本法」等に基づき、実施庁として位置付けられており、国土交通省が達成すべき目標を設定し、国土交通省が実績を評価する「実施庁評価」の対象にもなっています。

海上保安庁では、これらの政策評価を通じ、今後も、国民の皆様への行政の説明責任を徹底し、質の高い行政サービスの提供に努めます。

知っていますか? 海上保安庁の徽章に用いられた花の種類
海上保安庁の徽章
梅の写真

大久保武雄初代海上保安庁長官は、海上保安庁の徽章(きしょう)に、『梅』を選びました。『梅』は、寒風の中、春に先んじて花を咲かせ、芳しい香りを放ち、その実は常に民衆とともにあるという花です。この『梅』こそが海上保安庁にふさわしい花であると思っていたからです。

8 広報

近年、尖閣諸島周辺海域における各種事案や熊本地震等の自然災害への対応、小笠原諸島西之島付近における海域の調査等により、海上保安庁に対する国民の皆様の認知度や関心が高まっています。その一方で、海上保安庁の業務は、海上で行われることが多いため、国民の皆様の目に触れる機会は限られています。海上保安庁では、国民の皆様に海上保安庁の業務に対する理解を深めていただくため、

  • 積極的な広報による情報提供
  • 全国各地でのイベント等の開催、海上保安庁音楽隊の演奏会を通じたPR活動
  • インターネットを利用した情報発信や動画配信による情報提供

等のさまざまな広報活動を実施しています。

海上保安庁に関するお問い合わせは、総務部政務課政策評価広報室までお願いします。皆様からいただいたご意見・ご質問は、海上保安庁の業務をより良くするために活用させていただきます。

海上保安庁 JAPAN COAST GUARD

〒100-8976 東京都千代田区霞が関2-1-3

Tel:03-3591-6361

e-mail jcg-goiken@mlit.go.jp

ホームページ http://www.kaiho.mlit.go.jp/

Twitter @JCG_koho

海上保安庁 Twitter
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海上保安庁では、Twitterを用いて業務や行事などの情報を発信しています。

平成28年においては、

  • 巡視船での体験航海に関するご案内
  • 熊本地震で被災された方々への給水・入浴に関する支援情報
  • 伊勢志摩サミット開催に伴う船舶の航行自粛に関するお知らせ

等の情報発信を行いました。

今後も、さまざまな情報を発信していきますので、ぜひフォローをお願いします!

※海上保安庁ホームページでも掲載しています。


アカウント:JCG_koho

URL:http://twitter.com/JCG_koho

かいほジャーナル

かいほジャーナルは年間4回発行している海上保安庁の広報誌で、全国各地の海上保安部署等の業務の特色を分かりやすく紹介しています。

平成28年度は、徳島海上保安部(第五管区)、尾道海上保安部(第六管区)、浜田海上保安部(第八管区)、宮古島海上保安部(第十一管区)の特集記事を掲載しています。

特集記事のほか、海上保安部署等で撮影されたさまざまな業務の写真も多数掲載しています。

全国の海上保安部署に用意していますので、ご覧ください。

(海上保安庁ホームページにも掲載しています)。


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海上保安庁のイメージキャラクター