四面を海に囲まれた我が国は、「海」から多くの恩恵を受け、「海」とともに豊かに発展を遂げてきました。海上保安庁は昭和23年の創設以来、この豊かな海を後世まで引き継ぐとともに、国民の皆さまが安全・安心に暮らすことができるよう、「正義仁愛」の精神のもと、領海警備、海洋の秩序維持、海難の救助、海上防災、海洋環境の保全、海洋調査、海上交通の安全確保等に従事してきました。
昨今、尖閣諸島周辺海域では、平成24年9月以降、中国公船等の領海侵入が、たびたび繰り返されており、特に、平成28年8月には多数の外国漁船が出現し、それに続いて中国公船が領海侵入を繰り返すという事態も発生しました。また、外国海洋調査船による調査活動の活発化、外国漁船の違法操業のほか、核実験やミサイル発射を繰り返す北朝鮮の動向等、尖閣諸島周辺海域のみならず、我が国周辺海域を巡る状況は、いっそう厳しさを増しています。
このようにますます厳しくなる我が国周辺海域の状況に適切に対応していくため、平成28年12月に、「海上保安体制強化に関する関係閣僚会議」において、「海上保安体制強化に関する方針」が決定されました。今後、海上保安庁ではこの方針に基づき、海上保安体制の強化にむけた装備の増強等をすすめてまいります。
このような現状について、海上保安レポート2017では、『平和な海の継承 〜海上保安庁の使命〜」と題した特集を組み、我が国を取り巻く海洋環境と海上保安庁の対応をご紹介することとしました。海上保安庁が立ち向かう事案は、海上の事象であり、離島や遠方海域におけるものも多いため、対応する海上保安庁の取組みが、国民の皆さまの目に触れる機会は決して多くありません。しかしながら、本書を手にとってお読みいただくことで、皆様の海上保安庁に対するご理解が少しでも深まれば幸いです。