海上保安レポート 2017

はじめに


TOPICS 海上保安の一年


特集 平和な海の継承〜海上保安庁の使命〜


海上保安官の仕事


海上保安庁の 任務・体制


■本編

1 治安の確保

2 生命を救う

3 青い海を守る

4 災害に備える

5 海を知る

6 交通の安全を守る

7 海をつなぐ


語句説明・索引


図表索引


資料編

1 治安の確保 > CHAPTER IV 密輸・密航対策
1 治安の確保
CHAPTER IV 密輸・密航対策

近年の密輸・密航事犯については、洋上瀬取り(洋上における積荷の受け渡し)、コンテナ貨物を利用した密輸、クルーズ船の外国人乗客による密輸が発生しているほか、密航斡旋ブローカーの関与がうかがわれる数人規模の密航、退去強制歴を有する船員の不法上陸が発生しており、中には事犯の背後に国際犯罪組織が関与するものも発生しています。

海上保安庁では、我が国の治安及び法秩序を乱すこうした密輸・密航事犯を厳格に取締り、薬物や銃器の密輸、密航者の水際阻止を図っています。

平成28年の現況
密輸事犯について

平成28年の薬物事犯の摘発件数は、12件でした。このうち覚醒剤の押収量は約1,314kgとなり、平成11年に記録した押収量約785kgを大幅に上回り、過去最大となりました。また、平成28年5月、マレーシア籍ヨット船長ら(台湾人)による大量覚醒剤密輸入事件で覚醒剤約597kgを押収し、1件当たりの覚醒剤押収量も過去最大となりました。(これまで最大押収量は、平成11年10月に鹿児島県南さつま市(旧笠沙町)の黒瀬海岸で押収した約564kg)。海上からの薬物の密輸事犯については、小型船舶を利用した洋上瀬取りや海上コンテナ貨物への隠匿といった手法により、一度に大量の薬物を密輸する事犯を相次いで摘発したほか、訪日クルーズ船の外国人乗客による薬物等の国内持込み事犯も摘発しています。傾向として、密輸手口の大口・巧妙化及び密輸ルートの多様化が見受けられ、国際犯罪組織が関与するものも発生しています。また、薬物や銃器以外では、訪日クルーズ船の外国人乗客による金地金の密輸事犯も摘発しています。


最近の主な薬物・銃器事犯摘発状況
最近の主な薬物・銃器事犯摘発状況


薬物事犯の摘発状況
薬物事犯の摘発状況
銃器事犯の摘発状況
銃器事犯の摘発状況

訪日クルーズ船外国人乗客による金地金密輸入事件(沖縄県石垣市)〜金地金約15kgを押収〜
押収した金地金
押収した金地金

平成28年11月、関係機関と合同で、金地金を密輸入しようとした台湾人2名を関税法違反(無許可輸入未遂)で逮捕しました。台湾人2名は、台湾から石垣港に入港したクルーズ船「SUPERSTAR AQUARIUS」を利用して、本邦に金地金約15kgを不正に輸入し、これらに対する消費税及び地方消費税を免れようとしたとみられています。


密航事犯について

平成28年における密航事犯の摘発件数は1件であり、昨年と比較し1件減少しました。摘発者数については、不法入国者3名、不法入国手引者4名、不法出国手引者1名でした。

船舶による不法出入国事犯については、近年、密航斡旋ブローカーの関与がうかがわれる数人規模の密航事犯及び退去強制歴を有する船員が不法上陸した事犯を摘発しており、小口・巧妙化の傾向が続いています。密航事犯の背後には、国内外に密航を斡旋する手引者が存在することが多いことから、海上保安庁では、密航者を検挙した後も関係機関と連携して捜査を継続し、事件の全容解明に努めています。


船舶利用の不法出入国事件摘発状況
船舶利用の不法出入国事件摘発状況
船舶利用の不法出入国者国籍別摘発状況
船舶利用の不法出入国者国籍別摘発状況

中国人乗組員不法上陸事件(新潟県新潟市)

平成28年3月、新潟港に着岸中のコンテナ船から、中国人乗組員1名が許可を受けずに不法上陸する事案が発生しました。新潟海上保安部が、本邦上陸後の足取りを捜査したところ、同月、茨城県小美玉市において同乗組員の潜伏先を特定するに至り、出入国管理及び難民認定法違反(不法上陸)の容疑で逮捕しました。


不法上陸した中国人乗組員が乗船していた船舶
不法上陸した中国人乗組員が乗船していた船舶
潜伏先における中国人乗組員摘発の状況
潜伏先における中国人乗組員摘発の状況

韓国人広域窃盗団による集団密入国事件(佐賀県唐津市)
密入国推定航跡
 
密航者が不法上陸した名護屋漁港(佐賀県唐津市)の状況
密航者が不法上陸した名護屋漁港(佐賀県唐津市)の状況

第七管区海上保安本部及び大阪府警察本部による合同捜査本部は、平成28年3月までに、密航者や密航手引者合計10名を出入国管理及び難民認定法違反(不法入国等)で大阪地方検察庁に送致しました。

本件密航事件は、平成27年4月から9月までに大阪府警察本部等において逮捕した広域窃盗事件の韓国人被疑者の一部が本邦に正規入国していないことを突きとめ、福岡入国管理局の協力を得て、第七管区海上保安本部と大阪府警察本部により合同捜査体制を構築し、捜査した結果、平成27年3月30日、韓国人8名が高速小型船を使用して、韓国の港を出港し、佐賀県唐津市の漁港から本邦に不法入国した事実を特定したものです。

なお、韓国側取締機関との連携により、韓国当局は、韓国人密航ブローカー等3名を摘発しています。

今後の取組み

海上保安庁では、引き続き、国際組織犯罪対策基地を中心に国内外の関係機関との協力を強化しつつ、海事・漁業関係者や地元住民からの情報収集を行うとともに、その分析活動に努め、密輸・密航が行われる可能性が高い海域において、巡視船艇・航空機による重点的な監視・警戒を実施し、密輸・密航の蓋然性が高い地域から来航する船舶に対しても、重点的な監視や立入検査を実施することで、密輸・密航事犯の水際阻止に努めていきます。