伊勢志摩サミット海上警備を成功させるために歩いた日々
鳥羽海上保安部
伊勢志摩サミットが開催された英虞湾は、真珠養殖、定置網漁業、ホテル・旅館と連携した魚釣り、外洋で操業するカツオ一本釣りや海女漁の拠点となっているなど、地域の産業や市民生活の場となっています。まさに、生活空間のど真ん中にサミットがやって来たのです。サミットへの期待や大規模な警備による市民生活への不安の中から準備がスタートしました。
厳しいテロ情勢のなか、厳重な警備と市民生活を両立させ、市民と一体となった警備ができるよう、英虞湾のあらゆる利用形態を調べ、理解と協力を得るため各地への訪問を繰り返しました。そして、訪問先の方々の多くが一年という単位で準備をし、収穫という海の恵みを受けて生活している生産者であるということに気付きました。5月末に開催されるサミットは、一年の中では一瞬のイベントですが、真珠を養殖する方々にとっては、5月は真珠の核入れの時期、一年でもっとも大切な時期なのです。その準備は、既に前の年の秋から始まっています。その場所で生活をしている人の目線に立ち、生産者という目線に立ち、何度も訪問し不安や心配の中から課題を浮かび上がらせ、市や警察の担当者とも連携しながらクリアしていきました。いつしか伊勢志摩を巡った距離は、1万kmを超えていました。
サミットの期間中、地域住民の方々からは、市民の立場でできる取組みにより、海上警備を支えていただきました。
サミット終了後すぐに、お礼のためお世話になった方々を訪問しました。「無事終わってよかったな。」と笑顔で声を掛けられ、そこにはやり遂げた充実感とサミット前の元の生活がありました。季節は既に初夏の装い、キラキラ輝く海、真っ青な空と新緑まぶしい山々、無事に終わったことを実感しました。ひたすら歩き、住民と共に語り悩み、そして笑った日々が遠い過去のように感じられました。
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