海上保安レポート 2015

はじめに


TOPICS 海上保安の一年


特集 離島周辺や遠方海域における海上保安庁の活躍


海上保安庁の任務・体制


■本編

1 治安の確保

2 生命を救う

3 青い海を守る

4 災害に備える

5 海を知る

6 交通の安全を守る

7 海をつなぐ


目指せ! 海上保安官


語句説明・索引


図表索引


資料編

7 海をつなぐ > CHAPTER I 関係国との連携・協力
7 海をつなぐ
CHAPTER I 関係国との連携・協力

海を巡る問題には、一国で解決することが困難なものが多く、これらの問題には、海でつながる諸外国と連携・協力して対処することが極めて重要です。近年、アジアでは海上保安機関の設立が相次いでおり、海上保安庁では、各種合同訓練実施等を通じて、これらの海上保安機関間の協力関係を、実質的な活動へと発展させるよう主導しています。

多国間での連携・協力
1 北太平洋海上保安フォーラム
第15回サミット
第15回サミット
 
多国間多目的訓練
多国間多目的訓練

北太平洋海上保安フォーラムは、北太平洋地域の6か国(日本、カナダ、中国、韓国、ロシア、米国)の海上保安機関の代表が一堂に会し、北太平洋の海上の安全・セキュリティの確保、海洋環境の保全等を目的とした各国間の連携・協力について協議する多国間の枠組みで、海上保安庁の提唱により、平成12年から開催されています。

このフォーラムの枠組みのもと参加6か国の海上保安機関は、北太平洋の公海における違法操業の取締りを目的とした漁業監視共同パトロールや、現場レベルでの連携をより実践的なものとするための多国間多目的訓練等の活動を行っています。また、今後の連携・協力の方向性やこれまでの活動の成果について議論するため、毎年、長官級会合(サミット)と、実務者による専門家会合を開催しています。

平成26年9月に米国・サンフランシスコにおいて開催された長官級会合(サミット)では、大規模油等流出事故発生時の適切な連携に関し緊急連絡体制の確立に向けたマニュアル等が作成されたほか、同年7月に我が国主導で実施した情報伝達訓練の結果が報告されました。また、平成26年8月に横浜にて実施された多国間多目的訓練についても報告があり、机上訓練や共同潜水訓練等を通じて各国間の現場レベルでの連携・協力がより実践的なものになっていることが確認されました。そのほか、密輸・密航等の不法取引に効果的に対処するための「2014年戦略的脅威評価」の作成が行われました。議論の総括として「サンフランシスコ宣言」が採択され、北太平洋の治安の維持と安全の確保のため、参加6か国の海上保安機関は今後も連携・協力を促進していくことが確認されました。


アジアにおける主要な海上保安機関の設立
アジアにおける主要な海上保安機関の設立

2 アジア海上保安機関長官級会合
第10回アジア長官級会合
第10回アジア長官級会合

アジア海上保安機関長官級会合は、世界的にも重要な海上交通路であるマラッカ・シンガポール海峡等を抱えるアジア地域の18か国・1地域の海上保安機関の長官級が一堂に会して、アジアでの海上保安業務に関する地域的な連携強化を図ることを目的とした多国間の枠組みで、海上保安庁の提唱により、平成16年から開催され、昨年で10回目となりました。

平成26年9月に日本(横浜)で開催された、第10回長官級会合では、平成24年のインド会合以降取り組んでいる「捜索救助」、「海洋環境保全」、「自然災害に対する対応」、「海上不法活動の予防・取締り」、「海上保安能力の向上」という5つの分野について、多国間連携訓練や各種情報共有セミナー等の具体的な取組み状況の確認等を実施し、これまでの取組みの有効性を確認しました。また、アジア海域で発生している海上不法行為に各国が連携して対応することに合意し、これらをとりまとめた共同宣言「将来に向けた相互協力」をとりまとめました。また本会合期間中、この枠組みでは初となる、日印両国巡視船及び航空機が参加した多国間合同訓練を実施し(三管区・羽田空港沖)各国長官による視察が行われました。

二国間での協力
1 ロシアとの連携・協力

海上保安庁とロシア連邦保安庁国境警備局は、海上での密漁、密輸・密航等の不法活動の取締り等に関する相互協力について協議するため、平成12年から、原則毎年1回、日露海上警備機関長官級会合を開催しています。平成26年7月には、第九管区海上保安本部とロシア連邦保安庁沿海地方国境警備局との間で合同訓練を実施しました。同年10月には、「北西太平洋地域海行動計画」(NOWPAP)における取組みのひとつとして実施された、ロシア・ウラジオストクでの合同油防除訓練に、第九管区警備救難部長を団長とする代表団と巡視船「えちご」が参加し、ロシア運輸省海洋救助局や国境警備局等、ロシアの海上保安関係機関との交流を幅広く深めました。


2 インドとの連携・協力
長官級会合の様子
長官級会合の様子
 
日印連携訓練の様子
日印連携訓練の様子

平成11年に発生した、「アロンドラ・レインボー号」(日本人船長・機関長が乗船)がマラッカ海峡で海賊に襲われた事件で、インド沿岸警備隊が海軍と連携して海賊を確保したことを契機に、海上保安庁とインド沿岸警備隊は、平成12年以降、定期的に、長官級会合や連携訓練を実施しています。

平成26年10月には、第14回長官級会合を東京で開催するととともに、日印の巡視船、航空機による容疑船追跡捕捉展示訓練や捜索救助連携訓練を羽田空港沖で実施しました。長官級会合の結果、両機関は海上におけるテロへの対処について情報共有を行うとともに連携訓練を通じて対処能力の向上を図ることに合意しました。また、インド周辺海域での海上安全と治安維持のためにはスリランカ、モルディブ等の海上保安能力の向上が重要であることを確認し、日印連携訓練の際にはこれらの国々を参加させることについて、両機関は積極的に検討していくこととしました。


3 韓国との連携・協力

海上保安庁と韓国国立海洋調査院との間では、海洋調査の分野での連携・協力を進めるため、平成元年から日韓水路技術会議を設置しています。平成26年11月には、第24回会議が日本で開催され、韓国側からは、同年4月に発生した大型旅客船セウォル号の転覆・沈没事故への対応について報告があったほか、最新の海洋調査技術、国際協力業務の現状等の情報交換を行いました。

国際緊急援助隊の活動について

我が国は、海外の地域、特に開発途上にある海外の地域において大規模な災害が発生した場合、または発生しようとする場合、被災国政府または国際機関の要請に応じ、救助活動や災害復旧等の活動を行う国際緊急援助隊を派遣しており、海上保安庁もこれに協力しています。平成25年12月には、フィリピンを直撃した台風30号の被害に対して、海上保安庁から油防除等の災害復旧のために、機動防除隊の隊員を含む4名を派遣しました。さらに、平成26年3月には、マレーシア航空機消息不明事案に対して、国際緊急援助隊の枠組みでは初めて、海上保安庁から捜索のために航空機を派遣しました。