海上保安レポート 2015

はじめに


TOPICS 海上保安の一年


特集 離島周辺や遠方海域における海上保安庁の活躍


海上保安庁の任務・体制


■本編

1 治安の確保

2 生命を救う

3 青い海を守る

4 災害に備える

5 海を知る

6 交通の安全を守る

7 海をつなぐ


目指せ! 海上保安官


語句説明・索引


図表索引


資料編

4 災害に備える > CHAPTER II 自然災害対策
4 災害に備える
CHAPTER II 自然災害対策

近い将来の発生が懸念されている南海トラフ巨大地震や首都直下地震、激甚化する豪雨災害等、自然災害への対策は重要性を増しています。

海上保安庁では、自然災害が発生した場合には、人命・財産を保護するために災害応急活動を実施するほか、自然災害の発生に備えた灯台等の航路標識の災害対策や防災情報の整備・提供、関係機関との連携強化等に努めています。

平成26年の現況
1 自然災害への対応
宿泊者74名の海上輸送の様子
宿泊者74名の海上輸送の様子

海上保安庁では、地震、津波、台風、豪雨、火山等による自然災害が発生した場合には、被災者の救出、人員・救援物資の緊急輸送、被害状況の調査等の災害応急活動を実施しています。平成26年8月には、台風12号の影響で降り続けた大雨が原因で発生した土砂崩れにより、一時孤立状態となった徳島県阿南市の宿泊施設から、水難救済会所属船と協力の上、宿泊者74名の海上輸送を行ったほか、前線による大雨により広島県広島市で発生した土砂災害においては、巡視船艇等を派遣し、広島港各河川河口付近における行方不明者等捜索を行いました。


2 東日本大震災からの復旧・復興に向けた取組み
水路測量の様子
水路測量の様子

海上保安庁では、引き続き地元の第二管区海上保安本部を中心に、東日本大震災からの復旧・復興に向けた取組みを実施しています。平成26年においても、要望に真摯に応じ、地震発生日である11日を中心に、毎月潜水士による潜水捜索や警察、消防と合同捜索を実施しています。

また、被災地での海上交通の安全を確保するため、被災した灯台等の航路標識158基のうち156基を復旧するとともに、被災港湾の水路測量を実施し、大船渡港のほか6図の海図を改版しました(平成27年3月31日現在)。


3 自然災害対処のための体制強化

海上保安庁では、東日本大震災への対応の経験もふまえ、近い将来の発生が懸念されている南海トラフ巨大地震や首都直下地震を始めとした自然災害に備えるための体制整備を進めています。平成26年度には、災害対応能力を強化した巡視船を全国に4隻配備しています。

また、自然災害に伴う航路標識の倒壊や消灯を未然に防止し、災害時でも被災地の海上交通安全を確保するために、航路標識の耐震補強、耐波浪補強及び自立型電源化(太陽電池化)による防災対策を推進しています。加えて、津波等の災害発生時において、船舶への警報等の伝達、避難海域等の情報提供を迅速確実に実施するため、東京湾における海上交通センターと各港内交通管制室を統合のうえ、これらの業務を一元的に実施する体制の構築を推進しています。


災害対応能力を強化した大型巡視船「まつしま」
災害対応能力を強化した大型巡視船「まつしま」
 
航路標識の耐震補強
航路標識の耐震補強
航路標識の耐波浪補強
航路標識の耐波浪補強
航路標識の自立型電源化
航路標識の自立型電源化

4 防災情報の整備・提供
津波防災情報図
津波防災情報図
 
海底局投入の様子
海底局投入の様子

海上保安庁では、災害発生時の船舶の安全や避難計画の策定等の防災対策に活用していただくため、防災に関する情報の整備・提供も行っています。西之島をはじめとする南方諸島や南西諸島等の火山島や海底火山について、海底地形、地下構造等の調査、火山の活動状況の監視を実施し、付近を航行する船舶の安全に支障を及ぼすような状況がある場合には、航行船舶等に注意喚起等を行っています。

加えて、船舶の津波避難計画の策定等に役立つように、大規模地震による津波被害が想定される港湾及び沿岸海域を対象に、予測される津波の到達時間や波高、流向・流速等を記載した「津波防災情報図」を整備・提供しているほか、自治体の津波浸水想定の設定に活用するため、海底地形のデータを提供しています。

さらに、将来の海溝型地震の発生が予想される南海トラフや東北地方太平洋沖地震後の挙動が注目される日本海溝において、陸側プレート上に海底局を設置して、その動きを探る海底地殻変動観測を実施しています。これによって、想定震源域直上の海底の詳細な地殻変動データを整備し、巨大地震の発生メカニズム解明に貢献しています。


海底地殻変動観測
海底地殻変動観測

5 関係機関との連携
医療搬送訓練の様子(種子島空港)
医療搬送訓練の様子(種子島空港)

災害応急対応にあたっては地域や関係機関との連携が重要であることから、海上保安庁では関係機関との合同訓練に参画するなど、地域や関係機関との連携強化を図っています。平成26年度は、迅速な対応勢力の投入や非常時における円滑な通信体制の確保等を念頭に置いた防災訓練等、関係機関と連携した合同防災訓練を249回実施したほか、関係機関との密接な情報共有を図り、地域の防災対策を推進するため、地域防災対策官を全国に7人配置しました。また、主要な港では、関係機関による「船舶津波対策協議会」を設置し、海上保安庁が収集・整理した津波防災に関するデータを活用しながら、港内の船舶津波対策を検討しています。

今後の取組み

海上保安庁では、東日本大震災被災地の復旧・復興に向けた取組みを継続するとともに、今後起こりうる自然災害に備え、巡視船艇・航空機等の必要な体制の整備や、関係機関との連携強化、防災に関する情報の整備・提供、航路標識の防災対策等を引き続き推進していきます。