近年の海賊・海上武装強盗(以下「海賊」という。)の発生件数は、世界各国や海事関係者の懸命な取組みもあり、減少傾向にあるものの、発生海域は引き続き拡大傾向にあります。主要な貿易のほとんどを海上輸送に依存する我が国にとって、航行船舶の安全を確保することは、社会経済や国民生活の安定にとって不可欠です。
海上保安庁では、海賊対処のために派遣されている海上自衛隊護衛艦への海上保安官の同乗や、ソマリア周辺や東アジア周辺の沿岸国の海上保安機関に対する法執行能力向上支援等により、海賊対策を実施しています。
平成24年のソマリア周辺海域における海賊発生件数は75件であり、前年の237件に比べ大幅に減少していますが、発生海域については、引き続き広範囲に渡っており、また、重武装したソマリア海賊は依然として大きな脅威です。
「海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律(海賊対処法)」に基づき、海賊対処のために派遣された海上自衛隊の護衛艦に、海上保安官8名を同乗させ、海賊の逮捕、取調べ等の司法警察活動に備えつつ、自衛官とともに海賊行為の監視、情報収集を行っているほか、自衛隊等との連携訓練も行っています。この派遣捜査隊は、平成21年の第1次隊以降、平成25年3月末までに、第14次隊まで派遣しています。このほか、平成24年2月には、ジブチに航空機を派遣し、同国機関と連携して海賊を日本に護送する訓練を実施しました。
また、海上保安庁は、自ら海賊への司法警察活動を行うのみでなく、ソマリア周辺海域の海上保安機関に対して、法執行能力向上のための支援を実施しています。平成24年10月には、ソマリア周辺沿岸国の海上保安機関職員を招へいし、独立行政法人国際協力機構(JICA)の枠組みによる「海上犯罪取締り研修」等を実施したほか、国際海事機関(IMO)が主導するソマリア海賊対策プロジェクトチームへ職員を派遣しています。
さらに、近年は、ソマリア周辺海域で発生した海賊事案がインド近海でも発生していることから、インド沿岸警備隊との連携強化の重要性が一層高まっています。海上保安庁では、平成12年以降のインド沿岸警備隊との長官級会合や連携訓練を実施しており、平成24年11月には、横浜市で連携訓練を実施し、海賊対処訓練等を通じて両機関の連携強化を図りました。また、平成25年1月には、東京都で長官級会合を開催し、インド近海におけるソマリア海賊対策や西インド洋沿岸国等に対する海上法執行能力向上への支援について話し合い、両機関の連携強化に合意しました。
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