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1 治安の確保
CHAPTER4 密輸・密航対策
近年、ますます巧妙化する密輸・密航事犯は、我が国国内での薬物のまん延や銃器犯罪、密航者による凶悪犯罪などを招くおそれもあり、我が国の治安にとって大きな脅威です。また、これらの犯罪によって不法に得られた利益が暴力団の資金となっていることも指摘されています。
海上保安庁では、関係機関とも連携した厳格な監視取締りを実施することで、密輸・密航の水際阻止に努めています。
平成24年の現況
1 密輸事犯について
密輸事犯について、平成24年の薬物事犯の摘発件数は10件で、前年より3件増加しました。また、銃器事犯の摘発はありませんでした。
これまでの密輸事犯は、覚醒剤等に代表される規制薬物が主でしたが、平成24年は、薬事法に指定された指定薬物や、金塊を密輸する事件を摘発しており、密輸する物の多様化が認められます。
国境近くでの密輸入事件を検挙
平成24年9月28日、海上保安庁、警察、税関からなる合同捜査本部は、薬事法の指定薬物の密輸入容疑で被疑者2名を逮捕しました。この事件は、沖縄本島から約330km離れた南大東島を出港した被疑者2名が、公海上において指定薬物を積載し、同島に密輸入するという、本土から遠く離れた海を舞台とした悪質な手口によるものでしたが、海上保安庁の複数の部署が密接に連携しただけでなく、警察、税関とも連携・協力し、事件の全容を解明しました。なお、指定薬物の密輸入事件は、海上保安庁初の摘発となりました。
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▲押収した指定薬物 |
▲密輸入に関与した船舶 |
2 密航事犯について
密航事犯について、平成24年の密航事犯の摘発件数は7件あり、前年より5件増加しました。摘発者数については、不法入国者21名、不法入国手引者5名、不法出国者3名、不法出国手引者2名で、前年に比べ、不法入国者は20名増加、不法入国手引者は1名増加、不法出国者は3名増加、不法出国手引者は1名減少しました。また、近年増加傾向にある韓国人密航者を8名摘発しました。
密航の手口について、過去には、コンテナ内に潜伏する手法や隠し部屋等に大量の不法出入国者を隠す手法が主流でしたが、最近では、高速小型船を利用する手法や貨物船に少人数で潜伏する手法、偽造・変造を施した船員手帳等を利用する手法などへと小口化・巧妙化しています。
国内外の関係機関と協力して集団密航事件を解明
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▲密航者上陸場所(山口県下関市小串漁港) |
第七管区海上保安本部は、平成23年3月に韓国釜山で発生した日本への密航企図事案に関して、韓国当局と情報交換を実施していたところ、韓国当局から同年6月に韓国人が日本に不法入国した旨の情報提供があったことから、同本部は内偵捜査に着手しました。
内偵捜査を進めていた同年10月、韓国当局からの情報に合致する韓国人女性を大阪府警察本部が不法在留で逮捕したことにより、日本国内に密航ブローカーや他の密航者が潜伏している疑いが強まりました。第七管区海上保安本部、大阪府警察本部及び福岡入国管理局により合同捜査体制を敷くとともに、韓国当局と情報交換等を行いながら、韓国と下関の間における不法出入国事件として捜査した結果、平成24年5月までに、国内に潜伏していた密航者や密航ブローカー等総勢12名を「出入国管理及び難民認定法違反」で摘発し、日韓にまたがる密航組織を壊滅させました。
今後の取組み
海上保安庁では、引き続き、国際組織犯罪対策基地を中心に国内外の関係機関との協力を強化しつつ、海事・漁業関係者や地元住民からの情報収集やその分析活動に努め、密輸・密航が行われる可能性の高い海域において、巡視船艇・航空機による重点的な監視・警戒を実施するとともに、密輸・密航の蓋然性が高い地域から来航する船舶に対しても、重点的な監視や立入検査を実施することで、密輸・密航事犯の水際阻止に努めていきます。
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