海上保安レポート 2012

はじめに


TOPICS 海上保安の一年


特集 東日本大震災


海上保安庁の任務・体制


■本編

1 治安の確保

2 領海等を守る

3 生命を救う

4 青い海を守る

5 災害に備える

6 海を知る

7 交通の安全を守る

8 海をつなぐ


目指せ! 海上保安官


語句説明・索引


図表索引


資料編

1 治安の確保 > CHAPTER 5 海賊対策
1 治安の確保
CHAPTER 5 海賊対策

近年の海賊・海上武装強盗(以下、「海賊」という。)の発生件数は、世界各国が様々な対策に取り組んでいるにも関わらず、依然として増加傾向にあり、その発生海域もインド洋に拡大する傾向にあります。このような現状は、主要な外国貿易を海上輸送に依存する我が国にとって、大きな脅威となっており、航行船舶の安全確保は大変重要な課題です。海上保安庁では、ソマリア周辺海域に海賊対処のために派遣されている海上自衛隊護衛艦への海上保安官の同乗や沿岸国の海上保安機関の能力向上支援等による海賊対策に努めています。

平成23年の現況
1 ソマリア周辺海域の海賊対策
■地域別海賊発生状況(平成23年)
地域別海賊発生状況(平成23年)

ソマリア周辺海域における海賊発生件数は年々増加傾向にあり、発生海域も、以前はアデン湾やソマリア沖に集中していたものが、最近ではインド西岸沖にまで拡大しています。海賊発生件数は、平成23年は237件と前年に比べ18件増加し、傾向としては、各国軍艦等による警備が厳重なアデン湾では減少している一方、警備が手薄とされるインド洋西部の広大な海域では増加しています。さらに、海賊行為の態様も重武装になるなど凶悪化する傾向にあります。海上保安庁は、平成21年7月に施行された「海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律(海賊対処法)」に基づき、民間船舶の護衛のために派遣されている海上自衛隊の護衛艦に海上保安官8名を同乗させ、海賊行為発生時の犯人の逮捕や取調べ等の司法警察活動に備えています。この海上保安庁派遣捜査隊は、平成21年の第1次隊以降、平成24年3月末現在までの間に第11次隊まで派遣しており、平成23年3月には、アラビア海で発生したグアナバラ号海賊襲撃事件において、海賊対処法施行後初となる海賊の逮捕及び日本への護送等の司法手続きを実施しました。また、沿岸国の海上保安機関の能力向上支援等を行うため、海上保安庁では、これらの機関の職員を招へいし、JICA「海上犯罪取締り研修」や実務者会合を毎年実施しているほか、平成22年4月からは国際海事機関(IMO)が主導するソマリア海賊対策プロジェクトチームへ海上保安庁職員を派遣するなど、積極的な取組みを行っています。

さらに、平成24年1月27日にインドにおいて開催された日印海上保安機関長官級会合において、インド近海で日本関係船舶が海賊に襲撃された場合にインド沿岸警備隊に救助要請を行うための窓口を明確化するなど、連携強化の具体策について合意し、インド近海を航行する日本関係船舶の安全確保に向けて大きく前進しました。


■護衛活動海域
護衛活動海域
海賊護送訓練の様子
▲海賊護送訓練の様子

■海賊の発生件数
海賊の発生件数

2 東南アジア周辺海域の海賊対策
マレーシア寄港中の巡視船「せっつ」(乗船研修)
▲マレーシア寄港中の巡視船「せっつ」(乗船研修)

東南アジア周辺海域における海賊被害は、平成15年以降、減少傾向にありましたが、平成22年に再び増加に転じ、平成23年は80件と前年に比べ10件増加しました。

海域別では、マラッカ・シンガポール海峡での件数が12件と微増する一方、インドネシア周辺海域での件数が急増しており、当該海域の海賊問題についても引き続き対策が必要です。海上保安庁では、沿岸国の海上保安機関の能力向上支援をするため、毎年、巡視船派遣による連携訓練や沿岸国の海上保安機関職員に対する海上犯罪取締り研修等の各種研修を実施しています。

今後の取組み
沿岸国海上保安機関の職員に対する研修
▲沿岸国海上保安機関の職員に対する研修

海上保安庁では、今後もソマリア周辺海域における海賊対策として、引き続き護衛艦に海上保安官を同乗させるほか、東南アジアでの海賊対策の経験を活かし、沿岸国海上保安機関の職員に対する研修、セミナーの実施等、人材育成支援に積極的に取り組んでいきます。また、マラッカ・シンガポール海峡を含む東南アジア周辺海域における海賊対策についても、引き続き巡視船派遣による連携訓練や沿岸国海上保安機関の人材育成支援、ReCAAP−ISC(アジア海賊対策地域協力協定に基づく情報共有センター)と連携した海賊対策セミナー等を実施していきます。