海上保安レポート 2012

はじめに


TOPICS 海上保安の一年


特集 東日本大震災


海上保安庁の任務・体制


■本編

1 治安の確保

2 領海等を守る

3 生命を救う

4 青い海を守る

5 災害に備える

6 海を知る

7 交通の安全を守る

8 海をつなぐ


目指せ! 海上保安官


語句説明・索引


図表索引


資料編

1 治安の確保 > CHAPTER 2 国内密漁対策
1 治安の確保
CHAPTER 2 国内密漁対策

我が国周辺海域は、豊富な水産資源に恵まれていますが、水産資源は無尽蔵ではなく、その安定した供給のためには、漁獲量の制限や操業区域・期間の限定等による水産資源の適切な管理が極めて重要です。しかし、こうした取組みにも関わらず、一部の漁業者や資金確保を目論む暴力団等の密漁グループによる水産資源の乱獲は後を絶ちません。海上保安庁では、関係機関と連携・協力して、こうした密漁事犯の監視取締りを行い、漁業秩序の維持に努めています。

平成23年の現況
■漁業関係法令違反の送致件数の推移
漁業関係法令違反の送致件数の推移

平成23年の密漁事犯の送致件数は2,251件で、3年連続2,000件を超え、依然として高い水準で推移しています。

密漁の形態としては、漁業者以外の者による魚貝類の採捕等から、多人数の密漁グループ、巡視船等の動きを監視し密漁者に連絡する見張りグループ及び買い受ける水産物販売会社等が一体となった組織的で大掛かりなもの、さらに、暴力団の収入源となるものまで多岐にわたっています。大規模な事案としては、余罪を含め、密漁による水揚げが約1年半の間に4,500万円に上るものもあります。特に悪質なものでは、地元漁業者が保護・育成してきた高級食材であるあわび、さざえ、なまこを狙い、潜水器を使用して根こそぎ捕獲するといったケースが挙げられます。


巡視船艇の動静を密漁者に連絡していた見張りグループを逮捕
巡視船艇の動静を密漁者に連絡していた見張りグループを逮捕

今治海上保安部は、長期間にわたる内偵捜査の結果、取締りを逃れるために巡視船艇基地の周辺に見張り役を配置して巡視船艇の動きを連絡させ、違法操業を繰り返している密漁者がいることを突き止め、使用が禁止されている漁具を用いて操業していた密漁者を現行犯逮捕するとともに、当時、巡視船艇基地の周辺で見張りを行っていた3名を通常逮捕しました。

その後の捜査で、見張りグループは複数の密漁者に巡視船艇の動きを携帯電話で連絡し、毎月「情報提供料」として多額の報酬を得ていたことを明らかにしました。

今後の取組み

海上保安庁では、捜査能力のさらなる向上、監視取締り体制の強化及び暗視装置等の資器材の充実を図り、地元漁業者や住民の期待に応え、今後も悪質な密漁事犯の摘発に取り組んでいきます。

また、関係機関や漁業関係団体と緊密に連携し、一層の密漁防止対策の強化を図るとともに、地域の特性に応じた総合的な密漁対策を推進し、漁業秩序の維持及び水産資源の保護に努めます。