海上保安レポート 2012

はじめに


TOPICS 海上保安の一年


特集 東日本大震災


海上保安庁の任務・体制


■本編

1 治安の確保

2 領海等を守る

3 生命を救う

4 青い海を守る

5 災害に備える

6 海を知る

7 交通の安全を守る

8 海をつなぐ


目指せ! 海上保安官


語句説明・索引


図表索引


資料編

1 治安の確保 > COLUMN Vol.02 全国初! 女性鑑識官
1 治安の確保
COLUMN Vol.02
全国初! 女性鑑識官 第三管区海上保安本部

平成21年5月に施行された「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」を受け、海上保安庁では、客観的証拠提出に向けた体制強化の一環として、それまで管区海上保安本部のみに配置していた鑑識官を海上保安部にも置くこととし、平成23年10月1日、全国で14か所の海上保安部に配置しました。鑑識官は、事件現場において、指紋採取や写真撮影等の鑑識や遺体の検視についての指揮を執るほか、捜査を行う海上保安官への指導・研修等も行います。第三管区清水海上保安部に勤務する戸田暁子さんもこのうちの1人として任命され、海上保安庁では初の女性鑑識官となりました(第一管区小樽海上保安部の女性職員1名も鑑識官に任命されました。)。

戸田さんは、専門学校生の頃から、「人を助ける仕事に就きたい。」との思いが強く、平成12年10月に海上保安学校に入校し、その後、巡視船艇に勤務し、各種警備救難業務に従事しました。

そんな中、平成18年に鹿島海上保安署巡視船「ひたち」に勤務していた時、戸田さんにとって転機となる事案が発生しました。

荒天下の鹿島港沖で貨物船3隻の座礁事故が発生し、乗組員1名のご遺体を発見・収容しました。検視等を行った結果、身元が確認でき、ご家族の元へ帰すことができました。この時、「残念ながら命を救うことはできなかったものの、亡くなった方をご遺族の元へ帰すのも我々の重要な仕事」との思いが強くなり、検視の技能をより専門的に勉強したいと思うようになりました。

平成22年、希望が叶い、6か月に及ぶ東海大学医学部「検視担当官研修」を修了し、平成23年4月から清水海上保安部に勤務となり、現在は、自ら鑑識や検視を行うほか、講師として他の捜査官への研修を行うなど、鑑識官として活躍しています。

戸田さんは、「保安部ただ1人の鑑識官としてのプレッシャーはありますが、それ以上にやりがいがあります。丁寧な仕事を心がけ、将来は県警等へ出向して多種多様な現場で検視の経験を積み、捜査活動に役立てたい。」と抱負を語ってくれました。そんな戸田さんの姿勢に職場からは、「気負わずに更に上を目指してもらいたい。」と期待と励ましの声が上がっています。