最近の密輸情勢は、航空旅客による空路での薬物の密輸入の摘発が多数報じられていますが、海上ルートによる密輸入についても、犯行の手口がますます巧妙化かつ多様化しているものと考えられ、その対策は、引き続き重要な課題となっています。また、密航情勢についても、同様に巧妙化しており、これらの犯罪により不法に得られた利益が暴力団の資金源となっていることも指摘されています。海上保安庁では、こうした我が国の法秩序を乱す密輸・密航事犯を厳格に取締り、薬物や銃器、密航者の水際阻止に努めています。
|
1 治安の確保 > CHAPTER 4 密輸・密航対策
1 治安の確保
CHAPTER 4 密輸・密航対策
最近の密輸情勢は、航空旅客による空路での薬物の密輸入の摘発が多数報じられていますが、海上ルートによる密輸入についても、犯行の手口がますます巧妙化かつ多様化しているものと考えられ、その対策は、引き続き重要な課題となっています。また、密航情勢についても、同様に巧妙化しており、これらの犯罪により不法に得られた利益が暴力団の資金源となっていることも指摘されています。海上保安庁では、こうした我が国の法秩序を乱す密輸・密航事犯を厳格に取締り、薬物や銃器、密航者の水際阻止に努めています。 1 密輸事犯について
平成23年の薬物事犯の摘発件数は7件であり、前年より3件減少しています。また、銃器事犯の摘発件数は2件です。 最近の傾向としては、覚醒剤密輸ルートが、ロシアからの北方ルートや中国からの南方ルート等多様化しており、暴力団関係者が直接密輸の実行役として関与しない巧妙な手法が主流となっています。
岡山港にて覚醒剤約3キロ(時価約2億3,000万円相当)密輸容疑で中国人船員等を逮捕
2 密航事犯について
平成23年の密航事犯の摘発件数は2件で、前年に比べ2件減少しています。摘発者数については、不法入国者1名、不法入国手引者4名、不法出国手引者3名で、不法入国者は9名減少、不法入国手引者は4名減少、不法出国手引者は2名減少となりました。近年増加傾向にある韓国人密航者の摘発はありませんでした。 近年の密航事犯は、小口化・巧妙化が顕著であり、主な形態の一つが潜伏密航です。この手口は、船員が密航の成功報酬を目的に密航斡旋ブローカーから依頼を受け、密航者を自身の乗船する船舶に手引きし、船内居室等に潜伏させて密航させる手口で、数名単位での密航が主流となっています。 また、東日本大震災に伴い全庁的に災害救援活動等に対応している中の3月18日、韓国釜山において震災の混乱に乗じた日本向け密航企図者等が韓国当局に摘発される事案が発生しています。この事件は、まさに日本に密航しようとした韓国人を密出国の段階で韓国当局が摘発したものであり、その後、海上保安庁からの事件に関する情報提供が活かされ、韓国当局が、更に背後にいた大物密航ブローカーを含む総勢31名を摘発し、韓国ルートの大きな密航国際犯罪組織の1つを壊滅することができました。 横浜港で集団密航発生! 密航者は夜間フェンスを乗り越え逃走
平成23年11月5日未明、横浜港大黒ふ頭に着岸中の香港籍コンテナ船「CSCL NAGOYA」(C号)から上陸した男5名が港湾保安フェンスを乗り越え逃走した旨の通報が横浜海上保安部に入りました。同保安部が、C号乗組員から事情聴取等を行った結果、上陸し逃走中の5名は密航者であり、C号司厨長(中国人)が密航の手引きをした疑いが強まったことから、同人を「出入国管理及び難民認定法違反」(営利目的集団密航者の入国又は上陸)で逮捕しました。翌6日、司厨長の供述等から、密航を手引きしたC号船長及び甲板員(いずれも中国人)を同法違反で逮捕しました。 現在、港湾保安フェンスを乗り越えて逃走中の密航者について、警察と連携して捜査しています。 引き続き、薬物・銃器等の洋上取引や密航者の受渡しが行われる可能性のある海域において、巡視船艇・航空機による監視警戒を重点的に実施します。密輸・密航事犯の蓋然性が高い地域から来航する船舶については、重点的な監視と立入検査を行います。さらに、国際組織犯罪対策基地を中心に国内外の関係機関との協力を強化しつつ、また、海上保安部署等においては海事・漁業関係者や地元住民からの情報提供を有効に活用して、密輸・密航事犯の根絶に取り組んでいきます。
|