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07 交通の安全を守る
Column Vol.09
大隅群島及びトカラ群島西方沖の流木対応 〜流木との果てしなき戦い〜 第十管区海上保安本部 平成21年9月3日、鹿児島航空基地所属の航空機が鹿児島県の大隅群島からトカラ群島西方沖の南北約120kmに及ぶ海域で長さ約1〜10m、直径約0.5〜1mの流木が多数漂流しているのを発見しました。 この海域では、平成18年4月に超高速船が流木と衝突し乗員乗客112名が負傷する事故が発生しており、不測の事態に備え、十管区本部は、直ちに対策本部を設置し流木の調査を行い、海事・漁業関係者への情報提供を実施するとともに流木の揚収を行いました。 また、関係行政機関へ連携、協力を呼びかけて情報共有を図るとともに、流木揚収では、九州地方整備局の清掃兼油回収船「がんりゅう」、海上自衛隊の多用途支援艦「あまくさ」が加わり、鹿児島県の漁業取締船や漁業調査船、地元漁業協同組合の所属漁船と合わせ関係機関が一体となって実施しました。 巡視船での流木揚収作業は、船内にある道具で人海戦術により地道に揚収するほかなく、部署・船艇が一丸となって回収に取り組み、鳶口などの少々のハード整備と職員の懸命な作業により、右肩上がりで回収効率を上げていきました。また、巡視船「せんだい」へのテレビ3社、新聞2社による同乗取材により、海上は波高最大5メートルの時化で同乗した報道機関のほぼ全員が船酔いになる厳しい海象条件のなか、乗組員が、動揺する甲板上でクレーンとボートフックなどを巧みに操り1本1本手際よく揚収する姿が報道され、現場の地道な取り組みを広く理解いただくこととなりました。 流木により、本土と種子島・屋久島を結ぶ超高速船は約10日間運航を見合わせることとなり、離島の生活航路を断たれた島内では、約3万人の移動に影響が出たほか、島内のホテル、旅館では約2,800人に及ぶキャンセルが相次ぐなど、生活はもとより、島民医療や島の経済などに大きく影を落とす事態となりました。10月に入り時間の経過とともに流木の確認本数が減少傾向に転じ、台風18号通過後、南西諸島沖黒潮流域帯を含む広域調査の結果、海上交通の安全に与える危機的状況はほぼ解消したと判断され、対策本部は10月13日に解散、41日間に及ぶ流木との果てしなき戦いに一応の終止符が打たれました。 対策本部設置期間中、大きな海難もなく、関係行政機関が揚収した流木本数は約1570本に達し、当庁対応勢力は船艇のべ106隻、航空機のべ37機でした。
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