海上保安レポート 2010

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07 交通の安全を守る > CHAPTER2 ふくそう海域・港内の安全対策
07 交通の安全を守る
CHAPTER2 ふくそう海域・港内の安全対策

海上保安庁では、海上交通ルールの設定やその遵守指導、AISを用いた航行支援システムの整備等を行い、ふくそう海域や港内における海上交通の安全確保を図っています。特に、ふくそう海域における航路を閉塞するような大規模海難の発生を防止し、その発生数をゼロとすることを目指しています。

平成21年の現況

ふくそう海域での海難船舶隻数は951隻と、全体の4割を占めており、過去10年では、ほぼ横ばいで推移しています。ふくそう海域においては、我が国の海域特性や交通ルールに不案内な外国船等が基本的な交通ルールを守ることができず、これを原因とした海難が後を絶たない状況にあります。ふくそう海域で海難が発生すると、通航量の多い航路を閉塞してしまうなど、その影響はたいへん大きなものとなります。

このため、特に東京湾、伊勢湾、瀬戸内海及び関門港のふくそう海域では、海上交通センターにおいて、航行船舶の動静を把握し、船舶の安全な航行に必要な情報の提供や大型船舶の航路入航間隔の調整を行うとともに、巡視船艇と連携しながら不適切な航行をする船舶に対する指導、海上交通関係法令に違反した船舶に対する取締り等を実施しています。

今後の取組み
海上交通センター
海上交通センター
ライトアップされた灯台
ライトアップされた灯台
1 港則法及び海上交通安全法の一部改正

(平成21年7月公布、平成22年7月施行〈一部の規定については、平成21年12月及び平成22年6月施行〉)

近年、我が国においては、海難の発生隻数が減少することなく推移しており、大規模海難に至るおそれの大きい衝突・乗揚げ海難の約6割がふくそう海域で発生しています。また、我が国の海域特性や交通ルールに不案内な外国船舶が増加しており、海難の発生するおそれが高まっています。一方、平成20年7月、AIS(船舶自動識別装置)の搭載義務船舶への搭載の完了といった海上交通に係る環境の変化が見られます。こうした状況を踏まえ、船舶交通の安全性の向上を図ることを目的とし、港則法及び海上交通安全法の一部改正を行い、海域特性に応じた新たな航法や危険防止の航行援助の措置等について定めました。今後は、これらの適切な運用を行い、船舶海難の減少を目指します。


〈主な改正内容〉
1) 海域特性に応じた新たな航法の設定
  • 一定の航路の区間における追越しの禁止や危険防止のための航路外での待機指示
  • 来島海峡における最低速力の設定、転流時の特別な航法の指示
  • 航路出入口付近海域等の経路指定
2) 船舶の安全な航行を援助するための措置の実施
  • 安全な航行のための情報提供及び当該情報の船舶における聴取義務の設定
3) その他
  • 長さに応じた行き会いを可能とする効率的な港内の交通整理の手法の導入
  • 異常な気象・海象時における港内からの退去命令等の制度化
  • 危険防止のための交通制限手続きの迅速化
2 海上交通センターの機能拡充
海上交通センター運用管制室
海上交通センター運用管制室

ふくそう海域の安全性を向上させるためには、船舶が交通ルールを守って航行することに加え、海上交通センターから航行船舶に対し、より適切に情報提供等の必要なサポートを行うことが重要です。

この度の港則法及び海上交通安全法の一部改正により、海上交通センターの運用管制官が行う情報提供等の業務が拡大・高度化することに対応するため、訓練用運用卓を整備するなど、運用管制官に対する研修の充実を図り、また、運用管制官が実施する業務の指導・監督を行う統括運用管制官を配置し業務執行体制の強化を図ることにより、海上交通センターの機能を拡充します。


3 港内管制システムの高度化

これまで、港内の管制水路においては、船舶の行き会いの安全を図るため、信号により一定トン数以上の船舶について一律に行き会いを禁止する管制を実施してきました。しかし、AISの導入により、船舶の動静をリアルタイムで把握できるようになったことから、港内の更なる安全の確保、船舶の運航効率の向上に効果が期待できる港内の管制水路を対象に、AISを活用して行き会い可能な船舶を個別に判断する港内管制システムを順次導入していくこととしています。

平成22年度は、名古屋港に新たな港内管制システムの整備を行います。

4 航路標識の高度化整備

ふくそう海域においては、海難発生の蓋然性が高く、船舶航行の安全を支える航路標識が特に重要な役割を果たすことから、航路標識の視認性、識別性の向上を図るため、以下のとおり航路標識の灯火の同期点滅、灯浮標の浮体式灯標化の整備を進めています。

● 同期点滅

操船者が航路を把握しやすいよう、主要航路の海上標識において、灯火の一斉点滅や順番に点滅するようなシステムの整備を進めており、平成21年度末までに386基に導入し、整備はほぼ完了しています。

● 浮体式灯標への変更

海上標識の動揺や振れ回りを小さくするため、順次、従来の灯浮標から浮体式灯標への変更を進めており、平成21年度末までに161基(計画のおよそ9割)の変更が終了しています。


5 潮流信号システムの高度化

多種の信号方式が混在し、また機器、施設の老朽化が著しい来島海峡の潮流信号システムについて、利用者の視認性、識別性及びシステムの信頼性の向上を図るため、信号方式の統一、老朽化したシステムを近代化する整備を行います。