特集2 事故・災害に対する海上保安庁の備え > 1. 近年日本沿岸で発生した油流出事故の概要等
特集2 事故・災害に対する海上保安庁の備え
油等の流出事故への備え〜被害を最小に食い止める〜
四方を海に囲まれる我が国では、エネルギー資源の多くを海外から輸入し、その多くが海上輸送されている状況にあります。このため、我が国周辺海域においては、原油や液化ガス等を積載した船舶が多数航行し、これらの活動は、特に経済活動が活発な首都圏に集中しています。
過去、平成9年1月に発生したナホトカ号海難・流出油事故では、流出油が島根県から秋田県に至る日本海沿岸の1府8県に漂着し、漁業、観光業等に深刻な被害をもたらしました。また、同年7月にはダイヤモンド・グレース号が東京湾中ノ瀬付近で底触し、積載した原油を流出させる事故が発生しています。さらに、近年では、平成19年12月に隣国の韓国で、停泊中のタンカーとタグボートにより曳航されていたクレーン台船が衝突し、タンカーの積荷である原油12,550キロリットル(推定)が流出する事故が発生し、甚大な被害が報告されています。
海上保安庁では、このような海難事故が発生しないように船舶交通の安全確保に万全を期すことにしていますが、万一、事故が発生した場合でも迅速かつ適切な対応がとれるよう準備を整えています。ここでは、平成9年1月に発生したナホトカ号海難・流出油事故等を踏まえ、海上保安庁が実施した油防除体制の整備や最近における体制強化等の内容についてご紹介したいと思います。
1 近年日本沿岸で発生した油流出事故の概要等
(1)ナホトカ号海難・流出油事故
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▲ナホトカ号海難時の巡視船の重油回収作業 |
平成9年1月2日、ロシア籍タンカー「ナホトカ」号(総トン数13,157トン、C重油約19,000キロリットル搭載)が島根県隠岐島沖の日本海を航行中に船体が折損、破断したタンクからC重油約6,240キロリットル(推定)が流出するとともに、同月7日、船首部(残油約2,800キロリットル(推定))が福井県三国町沿岸に漂着し、日本海沿岸地域に甚大な油汚染被害をもたらしました。
海上保安庁では、事故発生を受け、全国から巡視船艇・航空機等を動員し、関係省庁や地方公共団体等と連携のもと、流出油の調査、防除措置等を実施しました。 漂着した船首部については、同年2月25日までに残油が抜き取られました。
(2)ダイヤモンド・グレース号油流出事故
平成9年7月2日午前10時5分頃、ペルシャ湾から京浜港向け航行していたパナマ籍原油タンカー「DIAMOND GRACE」号が東京湾本牧沖約6キロメートルの「中ノ瀬」に底触し、積載していた原油のうち約1,550キロリットル(推定)が海上に流出しました。
海上保安庁では、事故発生を受け、全国から巡視船艇・航空機等を動員し、関係省庁や地方公共団体等と連携のもと、流出油の調査、防除措置等を実施しました。なお、この事故では、同月6日早朝以降、海上の油は確認されませんでした。
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