特集2 事故・災害に対する海上保安庁の備え > 3. 最近における油流出事故等防災体制の強化
(1)有害液体物質の流出事故への対応
|
▲有害液体物質の防除措置を行う機動防除隊 |
海上保安庁では、「油」の流出事故への対応を重点に、その防除等に係る体制強化に努めてきました。一方で、平成19年6月14日にOPRC-HNS議定書が発効し、「油」に加え、油以外の危険物質及び有害物質(以下「HNS」という。)についても流出事故等の発生時には迅速かつ的確な対応がとれる体制を確保することとなりました。
これを受け、平成19年4月に同議定書の実施を担保する「海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律の一部を改正する法律」が施行され、HNSの流出事故が発生した場合には、当該原因者に対して防除義務等が課されました。
海上保安庁においても、HNSの流出事故に的確に対応するため、所要の体制整備を行っております。HNSは、キシレン、ベンゼン、トルエン等に代表される物質ですが、種類が多く、その性状等に応じた防除措置等をとる必要があります。このため、海上保安庁では、ガス検知器や密閉式防護衣等のHNS対応資機材を整備するとともに、流出したHNSの性状等に応じた防除措置や原因者への指導・助言が適切に行えるよう、専門的知識を有した機動防除隊の体制強化や巡視船艇の乗組員に対する研修・訓練等を実施しています。
(2)サハリンプロジェクトへの対応
|
▲平成21年3月から、サハリンUプロジェクトによりLNGの
積み出しが開始された。
(写真は、3月21日 津軽海峡を航行中のLNGタンカー) |
ロシアのサハリン島沖において、石油・天然ガスの開発プロジェクトが進められています。このプロジェクトのうち、サハリンTプロジェクトについては、平成18年10月から原油輸出が開始されています。また、サハリンUプロジェクトについても、平成20年12月から原油の通年出荷が開始されているところであり、石油等の生産施設や油タンカーからの油の流出事故の発生が懸念されているところです。
このため、海上保安庁では、高粘度油対応油回収装置、大型真空式油回収装置といった大型の油防除資機材を北海道を管轄する第一管区海上保安本部管内に重点的配備するとともに、ロシアとの連携を強化するため、第一管区海上保安本部等とロシア運輸省国家海難救助調整庁との間での連絡窓口の設置や日本とロシアとが合同で油防除に係る総合訓練を実施するなどしています。
また、事故発生時における迅速かつ効果的な対応を図るため、関係省庁において「サハリン石油・天然ガス開発プロジェクト生産における油流出事故への関係行政機関の具体的な準備及び対応について」を策定するとともに、関係省庁間における情報伝達訓練等の実施にも努めています。