海上保安レポート 2009
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はじめに


TOPICS 海上保安の一年

特集


海上保安庁の任務・体制


■本編

治安の確保

領海等を守る

生命を救う

青い海を護る

災害に備える

海を識る

交通の安全を守る

海を繋ぐ


目指せ!海上保安官


語句説明・索引


図表索引


資料編


特集3 海保の海賊対策〜人類共通の敵への対応〜 > 1. 海賊事件の発生状況
特集3 海保の海賊対策〜人類共通の敵への対応〜

日本は、エネルギーなどの資源の大部分を輸入しており、国際貿易は経済や国民生活にとって重要な役割を果たしています。国際貿易を支える海上輸送路は、我が国の繁栄と発展に不可欠であり、特に多くの日本関係船舶が通航するマラッカ・シンガポール海峡の安全確保と治安維持は、我が国にとって極めて重要です。また、年間約2万隻(うち約2千隻が日本関係船舶)が通航するソマリア沖・アデン湾の海域は、欧州や中東から東アジアを結ぶ海上輸送路の要衝であり、同様に安全確保と治安維持は極めて重要です。

近年、海上輸送の安全を脅かす海賊海上武装強盗(以下「海賊」という。)問題への対応は、航行の安全を確保する上で極めて重要となっています。特集3においては、海上保安庁が今まで東南アジア周辺海域において取り組んできた海賊対策と、昨今、急激に海賊被害が増加してきているソマリア沖・アデン湾における新たな海賊対策についてご紹介したいと思います。

地域別海賊発生状況(平成20年)
1 海賊事件の発生状況

国際商業会議所国際海事局IMB)に報告された平成20年の全世界の海賊発生件数は293件であり、平成15年から減少傾向にあったものが、平成18年以降に増加傾向に転じ、平成20年はソマリア周辺の一部海域での激増に伴い、前年に比べ30件の増加になりました。

●東南アジア及びソマリア周辺海域における海賊発生件数
東南アジア及びソマリア周辺海域における海賊発生件数

全発生件数のうち、東南アジア海域が54件(全体の約18%)、アフリカ海域が189件(全体の約65%)でした。東南アジア海域は減少(東南アジアの海賊発生件数は、ピーク時の平成12年に比べると、平成20年には約5分の1にまで減少、マラッカ・シンガポール海峡に限ると約10分の1に減少)しており、沿岸国連携パトロール等の沿岸国海上保安機関の積極的な取組み等の効果が表れてきているものと思われます。一方で、アフリカ海域は激増しており、特にソマリア沖・アデン湾の件数は、前年に比べ2.5倍の111件(前年44件)となりました。
 日本関係船舶海賊被害件数は、12件と前年より2件増加しており、発生海域別にみると、ソマリア沖・アデン湾で3件、東南アジア海域5件となっています。被害船舶に日本人が乗船していたのは、アデン湾で4月に発生した「高山」号事件の1件となっています。

2008年ソマリア沖・アデン湾における日本関係船舶被害
「高山」号事件
襲撃された「高山」(日本郵船提供)
▲襲撃された「高山」(日本郵船提供)

平成20年4月21日、アデン湾にて、日本籍原油タンカー「高山」号(総トン数約150,000トン)が小型不審船から追跡を受け銃火器らしきものにより発砲されました。本船は回避行動により、追跡を振り切ったものの、船体の左舷船尾に損傷を受けました。

「CHEMSTAR MOON」号事件

平成20年7月15日、アデン湾にて、日本の海運会社が運航するパナマ籍ケミカルタンカー「CHEMSTAR MOON」号(総トン数約12,000トン)が小型不審船に追跡を受け、銃火器らしきものにより発砲されました。本船は回避行動により、追跡を振り切ったものの、船橋外板に損傷を受けました。

「AIZU」号事件

平成20年8月23日、アデン湾にて、日本の海運会社が運航するパナマ籍貨物船「AIZU」号(総トン数約14,000トン)が小型不審船に追跡を受け、銃火器らしきものにより発砲されました。本船は回避行動により、追跡を振り切ったものの、船橋付近に損傷を受けました。