海上保安庁では、これまで国民生活を支える海上交通の安全確保のため、各種安全対策をはじめ、灯台などの整備や新しい技術を取り入れた航行援助システムの導入に取り組んできましたが、依然として年間約2,600隻の海難が発生し、尊い人命と貴重な財産が失われています。特に昨年は、明石海峡で発生した砂利運搬船、ケミカルタンカー、貨物船の多重衝突海難により人命が失われたのみならず、沈没した貨物船から海上に流出した油により、海苔養殖や漁業に被害を与えるなど、大きな社会問題にも発展しています。
海上保安庁では、こうした海難を未然に防止して人命及び財産を守り、また、船舶運航の効率化を図るため、海上交通の安全を確保する体制を維持・強化する必要があります。そのため、今後は、新交通ビジョンで掲げた重点施策に取り組み、より効果的な海上交通安全行政を推進し、海難を減少させて安全な交通環境の実現に努めてまいります。
さらに、こうした取組みを推進するため、船舶に対する危険防止のための航行援助を充実させ、また、海域の特性に応じた新たな航法を設定するため、海上交通ルールである「港則法及び海上交通安全法の一部を改正する法律案」が平成21年第171回国会(常会)に提出されています。