海上保安レポート 2009
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はじめに


TOPICS 海上保安の一年

特集


海上保安庁の任務・体制


■本編

治安の確保

領海等を守る

生命を救う

青い海を護る

災害に備える

海を識る

交通の安全を守る

海を繋ぐ


目指せ!海上保安官


語句説明・索引


図表索引


資料編


特集1 海難の減少を目指して〜安全な交通環境の実現〜 > 3. 海難の現況
特集1 海難の減少を目指して〜安全な交通環境の実現〜
3 海難の現況
平成20年3月5日に発生した多重衝突海難の状況
▲平成20年3月5日に発生した多重衝突海難の状況

海難船舶隻数は、ここ10年、年間2,600隻程度であり、ほぼ横ばいの状態が続いています。

海難の発生状況としては見張り不十分や操船不適切といった船舶運航者の基本となる安全意識の欠如を原因とする衝突、乗揚げ海難が目立ちます。

船舶の航行環境は、近年、船舶通航隻数がやや減少傾向にあるものの、輸送効率の向上、輸送コストの縮減を図るため船舶の大型化が進んでおり、1隻あたりの大きさは、10年間で約1.3倍となっています。また、大型船が入港できる特定港に入港する外国船舶は、日本船舶の入港隻数が減少傾向にあるのに対して増加傾向にあります。

ふくそう海域における海難

ふくそう海域において、ここ10年間、航路を閉そくするような大規模海難は発生していませんが、ふくそう海域で発生した海難は全海難の4割程度を占めており、また、100トン以上の貨物船、タンカー、旅客船に限ってみると、大規模海難に至るおそれのある衝突・乗揚げ海難のおよそ6割がふくそう海域で発生しています。  最近では、平成20年3月5日、明石海峡において、砂利運搬船「第五栄政丸」(総トン数496トン)、ケミカルタンカー「オーシャンフェニックス」(総トン数2,948トン)、ベリーズ籍貨物船「GOLD LEADER」号(総トン数1,466トン)の多重衝突海難が発生し、貨物船が沈没、乗組員3名が死亡、1名が行方不明となるとともに、沈没した貨物船から油が流出しました。

これらの海難についてみると、外国船舶については交通ルールの不知や地理不案内から、基本的な交通ルールを遵守できなかったこと等を主因とする海難割合が半数を超えているなど、外国船の船員の能力等に問題があると考えられ、日本船舶については、航行している船舶の見張りの不十分さ、海上交通センターがVHFにより行っている危険予防のための情報提供等の聴守率の低さが問題と考えられます。また、海上交通センターから注意喚起をしたにもかかわらず衝突又は乗揚げを起こした船舶のうち約半数から応答がない状況で、応答があった船舶についても周囲の状況を十分把握できていなかったものと推察されます。

港内などにおける海難
座礁した「GIANT STEP」号
▲座礁した「GIANT STEP」号

近年、港内などにおける海難は増加傾向にあります。

最近発生した大きな海難では、平成18年10月6日、茨城県鹿島港外において、パナマ籍鉱石運搬船「GIANT STEP」号(総トン数98,587トン)が急速に発達した低気圧による暴風のため走錨して座礁、船体を切断するとともに、10名が死亡または行方不明となっています。また、同年10月24日茨城県鹿島港にて、中国籍鉱石運搬船「OCEAN VICTORY」号(総トン数88,853トン)、パナマ籍鉱石運搬船「ELLIDA ACE」号(総トン数85,350トン)が相次いで座礁する海難が発生しました。

これらの海難についてみると、港長が早期の避難や対応を指導したにもかかわらず、船舶が避難の判断・行動を早期・的確に行わなかったことが問題と考えられます。