▲ロランC局 |
▲灯浮標の点検 |
▲海難事故を防止するための訪船指導 |
海上保安庁は、時代の変化に応じて海上交通の安全を確保するため、様々な対策をとってきました。
戦後、ただちに安全な航海を支えるため、壊滅的な打撃を受けた灯台の整備・復興に努めました。
昭和30年代は飛躍的な経済発展をとげる時代に入り、これに呼応するかのように外国との往来も増え、我が国の船舶保有量も年々増加し、船舶自体の大型化も進みました。残念なことに、海難もこの頃から徐々に増加していきました。このため海上保安庁は、台風や冬季の荒天対策に重点を置いた海難防止のための周知活動に加えて、危険物積載船の着岸や荷役の安全対策の指導など船舶の種類や事業活動の形態に合わせた海難防止指導を行いました。また、「喜びも悲しみも幾年月」という映画にもなりましたが、この頃は海上保安官が灯台で暮らし、灯台等航路標識の維持管理や、航行船舶に対する気象情報の提供等の業務を行ってきました(現在は技術の進歩により全ての灯台が自動化され、灯台で暮らしながらの管理は行っていません)。
昭和40年代以降は、高度経済成長に入り船舶も21万重量トンのマンモスタンカーや大型コンテナ船の就航など、船舶の大型化とともに専用化が進み、こうした動きは海上交通に劇的な変化をもたらしました。都市部に形成されたコンビナートへ頻繁に大量の物資が運ばれ、従来の安全対策のみでは十分ではなくなってきました。このため海上保安庁では、船舶交通のふくそうする東京湾、伊勢湾及び瀬戸内海の海域において、航路を設定し、特別の交通ルールを定めた「海上交通安全法」を制定しました。
また、レーダーにより得られた航行船舶の動静をコンピューター処理し、船舶の動静把握を容易にした海上交通センターを世界に先駆けて設置し、巨大船に対する航行管制と無線等による気象情報や海上の工事状況などの海上交通に関する情報提供サービスを開始しました。
さらに、灯台などの整備のほか、「電波の灯台」の導入も我が国沿岸海域におけるより一層の安全確保に寄与してきました。海上の孤立障害物等を船舶のレーダー画面上に明示させるレーダービーコンの採用をはじめ、船舶が自船の位置を測位できるように、韓国、中国及びロシアとの4か国の協力の下でアジア極東海域に広いサービスエリアを持つロランC局の運用、GPSを利用して誤差1メートル以内での測位が可能なディファレンシャルGPSを導入しました。
近年においては、漁業者や船舶の乗組員など、海を職場としてきた人に加えて、余暇にマリンレジャーを楽しむ人たちが増えてきたことから、海事関係者以外でも手軽に海の安全に関する情報が入手できる沿岸域情報提供システム(MICS:Maritime Information and Communication System)など情報提供の充実を進めています。