海上保安レポート 2009
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はじめに


TOPICS 海上保安の一年

特集


海上保安庁の任務・体制


■本編

治安の確保

領海等を守る

生命を救う

青い海を護る

災害に備える

海を識る

交通の安全を守る

海を繋ぐ


目指せ!海上保安官


語句説明・索引


図表索引


資料編


特集1 海難の減少を目指して〜安全な交通環境の実現〜 > 6. 海上交通安全行政の新たな展開
特集1 海難の減少を目指して〜安全な交通環境の実現〜
6 海上交通安全行政の新たな展開

安全性と効率性が両立した船舶交通環境を創出するという政策方針のもと、平成15年に交通政策審議会海事分科会からの答申をいただき、「交通ビジョン〜航行の安全と効率の向上を目指す新たな安全対策のあり方〜」を策定しましたが、AISの整備など船舶の航行環境の変化に対応するため、平成20年6月に再度、交通政策審議会から答申「新交通ビジョン〜海上交通の安全確保に向けての新たな展開〜」をいただいています。

この「新交通ビジョン」では、今後5年間に取り組む重点施策を次の6項目としています。

(1)海難分析・対策立案機能の強化
関係省庁海難防止連絡会議
▲関係省庁海難防止連絡会議

従来、海上保安庁が行っていた海難調査は、統計的処理に比重が置かれ、背景要因を含めた海難の原因分析や対策の検討などが必ずしも十分ではなかったことから、専門的知識の活用により、海難調査・分析・対策の企画立案機能の強化を図り施策の充実に努めることとしています。また、運輸安全委員会の調査・分析を活用することとしています。

さらに、海事行政には海上保安庁以外にも様々な機関が関わっていることから、一層の海難の防止を図るため、「関係省庁海難防止連絡会議」を定期的に開催し、問題点・目標の共有、施策の連携を実施するなど、関係機関が連携・融合した海難防止施策の展開に取り組んでいくこととしています。

(2)AISの整備等を踏まえた航行安全対策・効率性の向上

AISなどを活用し、船舶の交通流を整え、海難につながる危険な状況の発生を予防するため、海域の特性に応じた交通ルールを設定するとともに、海上交通センター から船舶に対して提供する情報の聴守を義務付け、危険が予想される場合には進路の変更等の是正措置を勧告できることとするなど、海上交通の安全確保のための制度の充実を図ります。

さらに、多くの船舶の動静を効率的に把握する機能を強化するため、運用管制支援システムの導入等のハード面の整備、航路をしょう戒する巡視船艇と海上交通センター との情報共有化等の更なる体制強化などに取り組むこととしています。

また、港内では、船舶の動静をリアルタイムに把握できるAISの導入などにより、狭い水路内での行き会いが可能となる船舶の範囲を拡大し、安全性を確保しつつ港内船舶交通の効率性の向上に取り組んでいくとともに、台風等の自然災害時における港内船舶交通の安全対策の強化に取り組んでいくこととしています。

空き缶レーダー反射器 「みえなア缶」

のり網、船曳網、流し網などの漁具明示用に、空き缶を使って簡単に作れるレーダー反射器「みえなア缶」を四日市海上保安部が考案しました。

のり網などの漁具に全体を囲むように「みえなア缶」を設置すると、乗揚事故防止や漁具破損被害防止に効果的!!作り方は簡単!! しかもとっても安価!!詳しくは四日市海上保安部ホームページまで。
http://www.kaiho.mlit.go.jp/04kanku/yokkaichi/e-0/e-6/osirase_mienaakan.htm
漁業者の皆さん、「みえなア缶」を是非お試し下さい。

「みえなア缶」 「レーダー映像」のり網区画の外周に設置されたレーダー反射器の映像(白色破線内)
▲「みえなア缶」 ▲「レーダー映像」のり網区画の外周に設置されたレーダー反射器の映像(白色破線内)
(3)地域特性に応じたきめ細かな海難防止活動の推進

マリンレジャー活動中の安全を確保するためには、自己責任の意識をいかに高めるかが重要であり、安全教育活動をより効果的・効率的なものとしていくとともに、特に、マリンレジャー活動の経験が少ない方々への知識・技能の定着促進や地域における自主的な安全対策の充実・促進のための支援などに重点を置いて取り組んでいくこととしています。

また、海上での死者・行方不明者の半数以上は漁船の海難で発生しており、救命胴衣の着用率も低い状態となっています。このため、漁業の安全対策に取り組んでいる水産庁や地方自治体等と十分に連携しながら、海難防止指導の充実や救命胴衣の着用率の向上などの対策を講じるとともに、漁業協同組合や家族等によるサポートなど関係者と共同した安全確保体制の構築・推進に取り組んでいくこととしています。

(4)特性を活かした安全情報の提供

安全情報の提供は、海難を防止するための重要な柱ですが、技術の進展に伴い提供できる情報の種類や手段が多様化していく中で、真に海事関係者などの利用者が必要とする情報提供を実現していくため、AISによる航行支援情報やパソコン及び携帯電話のホームページを主体としたMICS情報を今まで以上に充実させ、利用者の利便性と運用の効率性の向上に取り組んでいくこととしています。

(5)IT等の最新技術を活用した安全対策の推進

AISが有する仮想の航路標識を表示させる機能(バーチャル航路標識機能)等を活用し、これまで物理的な理由により航路標識が設置できなかった海域に仮想航路標識を表示させたり、気象・海象、推薦航路、航行制限水域、管制状況といった航行の安全に関する様々な情報を、文字だけではなく、操船者に分かりやすくビジュアルな形でリアルタイムに提供する新たなシステム(ENSS:Electronic Navigation Support System)の構築を図り、より一層の海上交通の安全性向上を図ることとしています。

また、簡易型AISでも活用できるENSSの開発による操船者の判断支援システムの構築の推進により、AISの利便性の向上を図り、現在AISの搭載が義務付けされていない船舶への搭載の促進に取り組むこととしています。

(6)航路標識の整備、管理のあり方

航路標識は航行船舶の指標として極めて重要であり、船舶交通の安全の確保と運航効率の向上に一層資するよう、航路標識等の視認性、識別性の向上のため、航路標識の光源のLED化、灯浮標の浮体式灯標化など、高度化等の整備に取り組むこととしています。また、航路標識用電源について、環境に優しい太陽光発電などのクリーンエネルギーの導入を推進し、大規模地震、台風等の自然災害に耐えうるよう、施設の波浪対策、耐震補強等の整備を行い、航路標識の信頼性の向上に取り組んでいくこととしています。


設置工事中の日本最大の浮体式灯標(東京湾)
▲設置工事中の日本最大の浮体式灯標(東京湾)
設置された日本最大の浮体式灯標
▲設置された日本最大の浮体式灯標

 以上の施策については、次の目標を掲げ強力に推進していきます。

ふくそう海域
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