海上保安レポート 2009
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はじめに


TOPICS 海上保安の一年

特集


海上保安庁の任務・体制


■本編

治安の確保

領海等を守る

生命を救う

青い海を護る

災害に備える

海を識る

交通の安全を守る

海を繋ぐ


目指せ!海上保安官


語句説明・索引


図表索引


資料編


特集1 海難の減少を目指して〜安全な交通環境の実現〜 > 5. 海上交通環境の変化に対応した取り組み
特集1 海難の減少を目指して〜安全な交通環境の実現〜
5 海上交通ルール

海上交通を支える技術の進展に呼応し、海上交通を取り巻く環境は近年急速に変化してきました。ここでは、昨今の海上交通環境の変化に呼応した、海上交通の安全確保に寄与する主な取り組みをご紹介します。

船舶自動識別装置(AIS)の登場

AISは、船舶の名称、針路、速力等の船舶の動静情報をリアルタイムで知らせるシステムで、「1974年の海上における人命の安全のための国際条約(SOLAS条約)」に基づき、平成20年7月までに一定の船舶に対して搭載することが義務付けられました。このAISの登場により、船舶相互間における操船意思の確認等において、これまでとは比較にならないほど利便性が向上したといえます。また、AISはレーダーと比較して受信範囲が広いため、陸上側の航行支援ツールとしても乗揚げ・走錨の予防、危険物積載船等の動静監視、海難の早期発見等を広い海域で可能とするとともに、船舶交通流を容易に把握できることから、これを活用し、海上交通の安全確保や船舶運航の効率化の更なる向上を図ることができます。

海上保安庁では、一部離島を除く日本沿岸全域でAIS情報の送受信が可能となる陸上施設の整備を進めており、ふくそう海域をはじめ、北海道、東北、北陸及び山陰沿岸においては、AISを活用した航行支援システムの運用を開始しています。同システムの導入により、日本沿岸の広大な海域において、AIS搭載船舶の動静を把握することができ、航行実態に即したより効果的な航行安全指導や乗揚げ防止などの情報提供が行えるようになります。

海上交通センターの機能向上
海上交通センター
▲海上交通センター

海上交通センター は航行船舶の動静把握や航行管制を行うとともに、航路及びその周辺海域に常時配備している巡視船艇と連携して航行船舶の安全に必要な情報の提供や不適切な航行を行う船舶に対する指導等を行っています。

現在、海上交通センターは、ふくそう海域である東京湾をはじめとして、伊勢湾、大阪湾、瀬戸内海、関門海峡等の7か所において運用されていますが、AISの導入によりAIS搭載船舶の動静把握と無線によるコンタクトが容易になったことから、今まで以上に効果的な航行安全指導や情報提供を行うことができるようになります。

マーチスとは?

海で仕事をする人なら一度は聞いたことがあると思いますが、海上交通センターは「マーチス(MARTIS)」と呼ばれています。この「マーチス」とは、海上交通センターを無線で呼び出すための名称で、海上交通センターの主要業務の一つである「海上交通における情報提供業務」の英語表記「MARineTraffic Information Service」を略したものです。

AISを活用し、
外国籍貨物船の乗揚げを回避!
第一管区海上保安本部AIS運用官
▲第一管区海上保安本部AIS運用官

第一管区海上保安本部(北海道)では北海道沿岸において、AIS搭載船舶の動静監視を行っていますが、平成20年12月5日の早朝午前4時21分頃、同本部でAIS搭載船舶の動静監視にあたっていたAIS運用官が、津軽海峡を韓国釜山向けに航行している外国籍貨物船(約13,000トン)が通常の航行経路から外れ、北海道松前半島の陸岸に接近してくるのを確認しました。

貨物船は変針することなく松前半島に向けて直進していることから、AIS運用官は貨物船が陸岸に乗揚げる危険性があるものと判断し、AISにより貨物船の船名等を確認し、「乗揚げ注意」のAISメッセージ送信とあわせ、国際VHF無線電話で呼び出しを行いましたが、貨物船からはなかなか応答がなく、ようやく国際VHF無線電話に応答してきた貨物船に「前方に陸岸あり、針路を確認されたい」旨の注意喚起を行ったところ、貨物船は針路を変更し、陸岸への乗揚げ海難を未然に防止することができました。

AISを活用し、外国籍貨物船の乗揚げを回避!
AISを活用し、外国籍貨物船の乗揚げを回避!