海上保安レポート 2006

●はじめに


■TOPICS 海上保安の一年


■特集1 国際展開する海上保安庁

■特集2 刷新図る海保の勢力


海上保安庁の業務・体制


■本編

治安の確保

生命を救う

青い海を護る

災害に備える

海を識る

航海を支える


海保のサポーター


海上保安官を目指す!


語句説明・索引


図表索引


資料編


特集2 > 刷新図る海保の勢力 > 巡視船艇・航空機の緊急整備
巡視船艇・航空機の緊急整備
 巡視船艇・航空機の約4割は、新海洋秩序形成に対応して昭和50年代に集中的に整備したもので、既に就役から20年を越えています。そのため、老朽化及び速力不足等の性能面での旧式化が進んでいます。
 平成17年度末現在において、巡視船艇352隻中129隻、航空機72機中31機が耐用年数を超過しており、各部の腐食・磨耗、配管からの油漏れ、防水低下などの老朽化が進行しています。
 さらに、巡視船艇の速力が一般船舶に劣ることや航空機の上昇性能が劣るなどの性能面の旧式化とも相まって犯罪取締りや救助活動に支障が生じています。
 海洋権益の保全、沿岸水域の監視警戒強化、大規模災害等に対する救助体制の強化といった今日の重要課題に的確に対応できる必要な業務遂行体制を確保するため、速力、捜索監視能力等の向上を図った巡視船艇・航空機の整備を急ぐ必要があります。
 海上保安庁では、平成18年度から老朽・旧式化が進んだ巡視船艇・航空機について、高性能化を図りながら緊急かつ計画的な代替整備に着手することとしています。
1,000トン型巡視船「えさん」(昭和53年11月竣工)
▲1,000トン型巡視船「えさん」(昭和53年11月竣工)
YS11A LA701ブルーイレブン(昭和44年1月製造)
▲YS11A LA701ブルーイレブン(昭和44年1月製造)

巡視船艇・航空機の耐用年数超過状況(平成17年度末現在)
巡視船艇・航空機の耐用年数超過状況(平成17年度末現在)

(1)巡視船艇の整備

巡視船の解役
▲巡視船の解役
 海洋権益の保全、沿岸水域の監視警戒水準の維持等の業務課題に適切に対応できる業務遂行体制を確保するため、老朽・旧式化が進んだ巡視船艇を代替し、併せて必要な高速化、操縦性能の向上等の高性能化を図ります。

1. 1,000トン型巡視船
 東シナ海の日中地理的中間線付近での中国の資源開発、国連海洋法条約に基づく事前申請を行わずに我が国の排他的経済水域において中国海洋調査船が行う海洋調査、中国、台湾の活動家による尖閣諸島領有権主張活動など我が国の海洋権益や領有権を脅かす事態は、沿岸から遠くはなれた海域で発生しているため、配備する巡視船は、他の巡視船艇の応援や協力を短時間では得にくい状況にあります。
 このため、突発事案への対応を考慮して、監視能力や複数の複合艇を搭載するなどの警備能力を向上させ、航空機との連携機能のためのヘリ甲板や応援派遣された巡視艇への燃料補給機能をあわせもった巡視船の整備を進めることとしています。

2. 350トン型巡視船
 平成17年7月、サミット開催初日のイギリスにおいて同時爆破テロが発生するなど、テロの脅威は、依然として高まっている状況にあります。
 我が国においても、後背地に大都市やエネルギー関連施設等の重要な施設を多数擁し、海上交通がふくそうする東京湾等の三大湾等において、海上物流、ライフラインのダメージを狙った海上テロが危惧されています。
 海上テロに迅速かつ的確に対応するため、速力、操縦性能及び夜間監視能力等の警備能力を強化した巡視船の整備を進めることとしています。
350トン型巡視船
▲350トン型巡視船

3. 30メートル型巡視艇
 我が国の排他的経済水域において外国漁船による不法操業は後を絶ちません。平成17年5月、巡視艇の停船命令を無視し逃走する外国漁船に対し、強行接舷のうえ海上保安官が飛び移り停船を命ずるもそれを無視し逃走を継続する事案が発生しました。(詳しくは「TOPICS 2 海上保安官を乗せ逃走! 立入検査忌避罪で韓国漁船船長を検挙」をご覧下さい。)最近の外国漁船は、高速化や運動性能が向上していることもあり、不法操業の手口も巧妙化、悪質化しています。
 また、海上ルートによる薬物・銃器の密輸や密航事犯の手口も夜陰に乗じ高速の瀬取船を使用するなど巧妙化が進んでいます。
 悪質巧妙化するこれらの事案に迅速かつ的確に対処するため、速力、操縦性能、夜間監視能力及び捕捉能力等を向上させた巡視艇の整備を進めることとしています。
30メートル型巡視艇
▲30メートル型巡視艇

4. 20メートル型巡視艇
 平成16年4月、イラク南部のバスラ沖において石油ターミナルを狙ったボートによる自爆テロが発生しました。
 我が国においても、物流拠点、ライフラインのダメージを狙った停泊中のタンカーへの自爆テロなどが危惧されており、港湾における早急な警備体制の強化が必要となっています。
 自爆テロを企図した小型の高速船等に迅速かつ的確に対応するため、速力、操縦性能及び夜間監視能力等の警備能力を強化した巡視艇の整備を進めることとしています。
20メートル型巡視艇
▲20メートル型巡視艇

(2)航空機の整備

 海洋権益の保全、大規模災害等に対する救助体制の強化など新たな業務課題に適切に対応できる体制を確保するため、老朽・旧式化が進んだ航空機を代替し、併せて必要な航続性能・捜索監視能力向上等の高性能化を図ります。
 また、テロ鎮圧部隊及びその資機材を迅速に現場へ輸送できる能力を有する飛行機及びヘリコプターの整備を進めています。

1. 飛行機
 海洋権益の保全やテロの未然防止のためには、いかに早く我が国に接近する前に情報を入手し対象船舶の動静を把握するかが重要です。そのためには、航空機による広範囲なしょう戒体制が必要不可欠ですが、老朽・旧式化した航空機では、その性能からある程度海域を絞ったしょう戒しかできない状況にあります。
 我が国の主権が及ぶ海域を広範囲に監視する体制を確立するため、老朽化した機体の代替に併せて、捜索監視能力に優れ、かつ航続性能に優れた飛行機を整備することとしています。

2. ヘリコプター
 救難事案における夜間の捜索救助活動や、夜間に活動することが想定される密輸・密航容疑船や不審船、海上テロ画策船舶などの監視・警戒など、海上保安庁のヘリコプターには、夜間対応能力の必要性が増しています。
 そのため、機体自体の老朽化も進んでいることから、代替整備に併せて、夜間対応能力を有したヘリコプターを整備することとしています。