海上保安レポート 2004

●はじめに


■TOPICS 海上保安の1年


■特集1 海洋権益の保全とテロ対策

■特集2 海保の救難


■本編

治安の確保

生命を救う

青い海を護る

災害に備える

海を識る

航海を支える

海をつなぐ連携


海上保安庁の業務・体制


海を仕事に選ぶ


海保の新戦力


その他


資料編


 
本編 > 生命を救う > コラム レスキューマップ
レスキューマップ
 大都市札幌を背後に控える石狩湾には、夏場になると短い北海道の夏を満喫するため、大挙して海水浴客らマリンレジャーを楽しむ人たちが訪れます。そのような石狩湾で、平成14年8月に、水上オートバイによる海難が3件続発し、4名もの尊い命が失われました。
 事故発生の際、
 「石狩浜の中間付近、水上オートバイが5台ほど固まっている場所、付近に野次馬が大勢いる。」
との事故発生位置の通報を受け、巡視船搭載艇等を現場に向かわせると、数キロメートルにわたり、同じような状況の場所が何ヵ所も…。
 「一体、どこなんだ???」
 事故発生位置を確認できるまでに数十分かかることもありました。
 こういったロスタイムをなくすために、平成15年度に設立した「石狩湾マリンレジャー安全対策連絡会議」の中で、「石狩湾レスキューマップ」を作成することとなりました。
 もともと目立った建物などが少ないこの海岸線で位置を特定するためのレスキューマップをどのように作成すればいいのか?
 まずは、目立った物標を探さなくてはということで、巡視船「ほろべつ」乗組員により、長大な海岸線を一歩一歩、歩いて回り、物標となりそうな大きな窪地、電柱、海の家、建築物、果ては、朽ちてしまっている車両までも綿密に調べ上げ、マス目状に切った石狩湾のマップに1点1点、写真とともに記載していきました。そして、どうしても物標がない地域には、海岸管理者にお願いして、目立ちそうな看板を設置してもらうなどしてなんとか完成させました。出来上がった石狩湾レスキューマップは、連絡会議のメンバーに配布したり、ホームページに掲載したり、新聞にも載せてもらうなどして、広く使ってもらえるよう、各方面に働きかけました。
 このレスキューマップは主に位置を特定するために活用され、消防からは「山岳救助にも活用できそうなので、是非見せてくれ!」などと言われるなど、大きな関心を得るに至りました。
 レスキューマップが活用された事例のひとつを紹介しましょう。
 平成16年7月26日、第一管区海上保安本部運用司令センターから
 「118番通報で、ゴムボートに小学生4人が乗り、沖合いに流されている情報あり、道警ヘリが現場に向かっている。」
 との連絡が入りました。いつものことながら、海難人身事故発生情報入手時には、緊張するところですが、
 「今回は、小学生…子どもだー!」
  一層、緊張が高まり、
 「「ほろべつ」に連絡、現場に急行させよ!」
 「付近海水浴場に連絡、ライフセーバーに協力依頼せよ!」
 「付近救難所に連絡、協力依頼せよ!」
 「道警ヘリは着いたの?本部を通じて、位置情報を入手のこと!」

 「通報者へ連絡、現状と位置情報を入手のこと!」
 いつものように…いつも以上に小樽海上保安部内は、騒然となりました。
 そうこうしているうちに、
 「道警ヘリがゴムボート確認!」
との情報が、続いて「レスキューマップ、マップ2、よ−2付近!」 との連絡があり、「ほろべつ」、ライフセーバーに位置情報伝達。
 しばらくしていると、ほろべつから
 「漂流者、「ほろべつ」及びライフセーバーの水上オートバイ2艇により救助完了全員無事!」
 「現在、付近海岸向け、ゴムボートをえい航中!」

 との連絡が入りました。
 救助完了の情報を入手したのは、小樽海上保安部が最初に海難情報を入手してから、約26分後のことでした。
 ホッと安堵の時間がやってきました。
 レスキューマップの作成、関係機関等への利用周知、連絡会議を通じての官民の連携強化などのこれまでの取組みが実を結んだ一瞬でした。