海上保安レポート 2015

はじめに


TOPICS 海上保安の一年


特集 離島周辺や遠方海域における海上保安庁の活躍


海上保安庁の任務・体制


■本編

1 治安の確保

2 生命を救う

3 青い海を守る

4 災害に備える

5 海を知る

6 交通の安全を守る

7 海をつなぐ


目指せ! 海上保安官


語句説明・索引


図表索引


資料編

特集 離島周辺や遠方海域における海上保安庁の活躍 > III 海難・海上災害への対応 > 2 外国で発生した事案への対応
特集 離島周辺や遠方海域における海上保安庁の活躍
III 海難・海上災害への対応
2 外国で発生した事案への対応
1 マレーシア航空機行方不明事案への対応

平成26年3月8日、マレーシア航空370便が行方不明になるという事案が発生しました。海上保安庁では、日本政府に対するマレーシア政府からの要請に基づき、国際緊急援助隊の枠組みでは初めて、捜索のために航空機を派遣することとなりました。そのほか、先遣隊や現地での調整要員として業務にあたる職員も派遣しています。

派遣された海上保安庁の航空機ガルフVは、3月13日にマレーシア到着、翌14日から捜索を開始しました。以後、4月3日にオーストラリアから日本に帰国するまで、派遣期間は22日間に及びました。派遣中、11日間捜索に従事するも手掛かりの発見には至りませんでしたが、海上保安庁では、このように、外国において発生した事案に対しても、組織を挙げて全力で対応しています。


国際緊急援助隊と航空機
国際緊急援助隊と航空機
現地捜索隊と打合せ
現地捜索隊と打合せ

2 フィリピンにおける油流出災害への対応

フィリピンのパナイ島東岸では、平成25年11月に発生した台風30号の影響で発電施設として利用されていた船が座礁し、燃料タンクから約850kl(ドラム缶約4,250本相当)の重油が海域へ流出しました。現地では、環境被害や漁業被害を防ぐため、一刻も早く油の防除を行わなければならない状況でしたが、現地の油防除体制や油防除に関する知見が不足していたため、フィリピン政府から日本政府に対する要請に基づき、海上保安庁から機動防除隊員を含む職員4名を国際緊急援助隊専門家チームのメンバーとしてフィリピンに派遣しました。

現地では、台風による甚大な被害でライフラインが復旧せず、また、座礁した船の周辺に有毒なガスが発生しているとして、油回収作業の一部が制限されるなど、思うように防除作業が進んでいませんでした。このため、派遣された専門家チームは、現場において毒ガスの検知、フィリピン沿岸警備隊(PCG)の船艇・航空機を利用した油流出状況の調査等を実施することにより流出状況を評価の上、PCG職員や現地作業員に対して適切な油防除作業手順、油回収資機材の使用方法、現場の安全管理等についての指導・助言等を行いました。

これらの専門家チームの活動により、現地作業員が適切な手法で油防除作業を実施し、PCGが適切な監督を行う体制が構築されたことが確認できたことから、平成25年12月13日、専門家チームは日本に帰国しました。

この派遣に対し、専門家チームの迅速な現地入りと的確な指導・助言等について、PCGをはじめとしたフィリピンの各方面から感謝の声が寄せられました。

また、フィリピン国内移動中の航空機内において、機長から「日本の国緊隊が搭乗している」旨のアナウンスがあり、乗客から拍手を受けました。


座礁した船舶
座礁した船舶
現地での防除作業
現地での防除作業