中国サンゴ漁船とみられる外国漁船の増加を受け、海上保安庁では、水産庁や東京都とも連携の上、巡視船や航空機を集中的に投入した特別な態勢により厳正な取締りを行いました。
中国サンゴ漁船検挙状況 |
このような対応が功を奏し、中国サンゴ漁船の隻数は徐々に減少しました。一方で、夜陰に乗じて違法操業を行うなど、悪質・巧妙な行動もみられるようになってきたことから、海上保安庁ではさらに体制を強化の上、厳正な取締りを行い、平成26年10月5日から同年12月21日までの間に10隻の中国サンゴ漁船を検挙しました。
また、海上保安庁では、東京都が主催する関係機関の連絡会議に出席し、事態の早期収束のため対策の検討を行うとともに、中国サンゴ漁船の動静や取締り状況等の情報提供を通じて、地元住民の方々の不安解消にも努めました。
平成26年12月以降、中国サンゴ漁船はほとんど確認されなくなりましたが、これは、海上保安庁、水産庁及び東京都が連携して厳正な取締りを実施してきたこと、外交ルートにおいても、中国側に対して再発防止のための実効性のある措置等を求めてきたこと、外国漁船による違法操業の抑止を図るため、違法操業等に対する罰金を引き上げるための法律改正が行われたこと等、政府が一丸となって全力を尽くしたことによるものだと考えられます。
外国漁船の違法操業等に対する罰則の見直し |
中国サンゴ漁船を追尾する巡視船 | 漁船へ移乗する海上保安官 |
中国サンゴ漁船を監視警戒する巡視船 |
平成26年9月の暗夜、水平線の彼方に数多くの光りが立ち並び、まるで町明かりの様だった。しかしここは陸ではなく世界自然遺産にも指定されている小笠原諸島沖の海であり、静まりかえる小笠原の沖に広がる明かりは、紛れも無く中国サンゴ漁船の灯火であった。
現場に配備された巡視船の船橋内では、海上保安官が昼夜を問わず交代でレーダー等の航海計器を駆使してこれら中国サンゴ漁船の動静を監視し、接近のうえ、スピーカー等を使用して中国語等で警告するなど取締りにあたっていた。
小笠原周辺海域における中国サンゴ漁船は、平成26年9月中旬頃から、徐々にその数を増し、第三管区海上保安本部では、巡視船や航空機を派遣し、特別な体制により水産庁等とも連携して監視・取締りを行い、平成26年10月の1か月の間に、領海内違法操業等で中国サンゴ漁船5隻を検挙し、中国人船長5名を逮捕したが、10月末から11月初めにかけては、小笠原諸島及び伊豆諸島周辺海域における中国サンゴ漁船は200隻を超えた。
これらのことから、第三管区海上保安本部では、引続き取締りを行い、11月13日及び18日の両日、小笠原諸島周辺の我が国の排他的経済水域において、立入検査を忌避した2隻の中国サンゴ漁船を検挙し、中国人船長2名を現行犯逮捕したほか、悪質・巧妙化する中国サンゴ漁船に対応するため、さらに態勢を強化し、11月21日及び23日の両日、夜間に領海内において違法操業を行っていた中国サンゴ漁船を相次いで検挙し、中国人船長2名を現行犯逮捕した。
11月上旬頃から、中国サンゴ漁船の数が減少し始めるが、12月中旬には、小笠原諸島の北約400キロに位置する伊豆諸島鳥島周辺で未だ徘徊する中国サンゴ漁船が認められたため、小笠原周辺海域の警戒態勢を確保しつつこれの対処にあたり、12月21日には、鳥島周辺の領海内において操業中の中国サンゴ漁船1隻を検挙し、同船中国人船長を領海内違法操業容疑で現行犯逮捕した。
一連の中国サンゴ漁船への対応にあたっては、小笠原諸島が本土から遥か1,000キロメートルという遠方にあるために限られた巡視船で多数の中国サンゴ漁船に対応することになったことに加え、海上模様により中国サンゴ漁船への移乗に危険を伴うなどこの任務にあたった海上保安官にとっては緊張の連続であったが、小笠原諸島という本土から遠く離れた海域において、多数の外国漁船に対して法執行を行うことができる能力をもつ海上保安官として、引続き警戒を緩めることなく関係機関とも連携して対応していく所存である。