海上保安庁では、海上環境関係法令違反の監視・取締り、海洋環境の調査等に加え、国民の皆様への指導・啓発活動等を実施するなど、海洋環境を保全するための総合的な取組みを実施しています。
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3 青い海を守る
CHAPTER II 海洋環境保全対策
海上保安庁では、海上環境関係法令違反の監視・取締り、海洋環境の調査等に加え、国民の皆様への指導・啓発活動等を実施するなど、海洋環境を保全するための総合的な取組みを実施しています。 1 海上環境関係法令違反の監視・取締り
海上保安庁では、海洋汚染につながる油の不法排出、廃棄物の不法投棄等の海上環境関係法令違反に対しては、巡視船艇・航空機による海・空からの監視・取締りに加えて、沿岸部では陸上からの監視・取締りを実施しています。 平成26年に海上保安庁が摘発した海上環境関係法令違反の送致件数は606件であり、前年と比較して55件減少しました。違反の種類別に見ると、船舶からの油の不法排出や、廃棄物、廃船の不法投棄が多くなっています。これらの違反は、適正な処理費用や設備整備への投資を惜しんでの行為であることが多く、その形態も、夜陰に紛れた不法排出や不法投棄、船名や船体番号を抹消した上での廃船の投棄等、悪質・巧妙なケースが見受けられます。 平成26年には、トラックで運搬中に死んで廃棄物となった大量の鯛(約200kg)を海上に投棄した事件が発生し、トラック運転手の男性を逮捕しています。
外国船舶による海洋汚染への対応
外国船舶による海洋汚染については、領海に加え、EEZにおいても取締りを行っていますが、国連海洋法条約に基づき、船舶の航行の利益を考慮し、担保金制度を適用しています(平成26年担保金制度適用件数:6件)。 また、我が国の法令を適用できない公海等において外国船舶の油の違法排出を確認した場合は、当該船舶の旗国に対して違反事実の通報を行い、適切な措置を求める旗国通報制度を適用しています(平成26年旗国通報制度適用:2件)。 2 海洋環境調査
海洋汚染の調査
海上保安庁では、海洋汚染の状況を正確に把握するため、閉鎖性の高い港湾等において、測量船により定期的に海水や海底堆積物を採取し、油分、PCB(ポリ塩化ビフェニル)、重金属等の調査を行っています。 放射能調査
旧ソ連・ロシアによる日本海・オホーツク海への放射性廃棄物の海洋投棄や過去に行われた核実験等による海洋環境への影響を把握するため、日本近海で海水や海底堆積物を採取し、人工放射性物質の調査を実施しています。また、原子力艦放射能調査指針大綱・実施要領に基づき、原子力艦が寄港する横須賀港(神奈川県)、佐世保港(長崎県)、金武中城港(沖縄県)では、周辺住民の安全・安心を確保するため、海水や海底土を採取し、定期的に放射能調査を行うとともに、原子力艦の入港前、寄港時、出港後の放射能調査を行っています。さらに、平成23年3月の東京電力福島第一原子力発電所事故に対応する総合モニタリング計画(モニタリング調整会議)に基づいた放射能調査も行っています。 第15回 未来に残そう青い海・海上保安庁図画コンクール
3 海洋環境保全のための指導・啓発
海洋汚染の大半が故意や取扱不注意等による人為的な要因により発生していることから、海洋汚染を防止し、海洋環境を保全するためには、国民の皆様の意識を高めていただくことが重要です。そのため、海上保安庁では、ボランティアや地方公共団体とも連携し、全国各地で海洋環境保全に関する指導・啓発活動を実施しています。特に、毎年6月は「未来に残そう青い海」をスローガンに掲げた「海洋環境保全推進月間」を全国で展開し、海事・漁業関係者、マリンレジャー等を行う方々を対象とした海洋環境保全講習会や訪船指導、一般市民の方々を対象とした海洋環境保全教室の開催等を重点的に実施しています。
海の中から「未来に残そう青い海」を発信
静岡県伊東市富戸所在の伊豆海洋公園ダイビングセンターと下田海上保安部伊東マリンパトロールステーションが連携協力し、同センターが例年実施している海底クリスマスツリー設置にあわせ、人気ダイビングスポットの水深22メートルの海底に、「未来に残そう青い海」横断幕を設置しました。 「未来に残そう青い海」は海上保安庁の海洋環境保全に関する指導・啓発のスローガンです。 この海底クリスマスツリー設置は20年ほど前から行われているイベントで、横断幕の設置は今回初めてとなり、同センター職員の「海洋環境保全は、きれいな海を知っている我々ダイバーから発信しよう」というメッセージもあわせて、官民一体となり広く海洋環境保全思想を発信しました。 今後も海上保安庁では関係機関や民間団体と連携し、さまざまな海洋環境保全指導・啓発活動を実施します。 4 全国海の再生プロジェクト
海洋環境の保全・再生のためには、海上保安庁が単独で実施する取組みだけでなく、関係機関が効果的に連携した取組みを推進することが重要です。このような取組みの一つとして、海上保安庁は「全国海の再生プロジェクト」に参画しています。「全国海の再生プロジェクト」では、東京湾、伊勢湾、大阪湾、広島湾を対象として、国、自治体、大学・研究機関、民間企業が連携して、海域の環境改善対策、環境モニタリング等の各種施策を推進しています。
特に、「東京湾再生プロジェクト」では、東京湾のモニタリングを強化するため千葉灯標にモニタリングポストを設置し、水質と海潮流の連続観測を実施するとともに、各海域で測量船による水質、潮流等の観測を実施しているほか、人工衛星を利用した赤潮等の常時観測を実施しています。また、平成26年10月には「東京湾再生官民連携フォーラム」が中心となって開催された東京湾大感謝祭において、東京湾の地形の変遷を海図で紹介するなど、多様な取組みを実施しています。
海上保安庁では、海洋環境調査を通じ、海洋汚染の現況を的確に把握するとともに、海上環境関係法令違反に対しては、厳正な監視・取締りを実施します。また、国民の皆様に対する指導・啓発活動を推進し、法令遵守意識の高揚を図ります。さらに関係機関等との連携により、海洋環境保全のための取組みをより効果的に推進していきます。 |