海上保安レポート 2007

●はじめに


■TOPICS 海上保安の1年


特集 海洋国家「日本」と海上保安庁
〜海洋権益保全への取組み〜

はじめに

1.これが現場第一線

2.海洋調査に迫る


海上保安庁の業務・体制


■本編

治安の確保

生命を救う

青い海を護る

災害に備える

海を識る

航海を支える

海を繋ぐ


海上保安官を目指す


語句説明・索引


図表索引


資料編


本編 > 海を繋ぐ > 2. 海上保安機関設立支援・技術移転等
2. 海上保安機関設立支援・技術移転等

 近年、東南アジア諸国では海上保安庁を範とする海上保安機関の有効性が注目されています。これらの地域においては、周辺海域に潜在するテロや海賊への対処、海上捜索・救助技術などの分野における能力向上のための支援を必要としていることから、海上保安庁が長い年月をかけて培った高度な技術、知識の移転をはじめとした支援を積極的に実施しています。
 これらの取組みを通じて、東南アジア周辺海域の海上保安能力が総合的に向上し、治安と安全が確保されるとともに、各国海上保安機関の密接な連携・協力を促進することにより、これらの海域を航行する我が国関係船舶の安全確保を目指しています。

(1)各国海上保安機関の設立支援

 東南アジア周辺海域では通航船舶を狙った海賊事件が多発しています。また、一度海難が発生すれば他の船舶の航行や沿岸国に多大な影響を与えます。そのため、東南アジアの国々の中には海上保安庁を手本に、自国海上保安機関の組織拡充や創設に取り組む動きもあり、海上保安庁は、これらの国々に対し支援活動を積極的に行っています。

(a)フィリピン
 フィリピンでは、フィリピン沿岸警備隊が平成10年に海軍から独立し、運輸通信省に移管されましたが、その業務遂行体制をより充実したものにするため、犯罪取締りや海難救助などの技術向上、将来の体制整備に欠かせない人材育成の面における研修教育カリキュラムの策定、講師の育成等を積極的に支援しています。

(b)インドネシア
 インドネシアでは、海上保安庁が派遣した専門家等を通じ、これまでにも海難救助、海上防災及び航路標識業務等海上保安に関する様々な分野で支援を行ってきました。
 また、同国においては、海軍、海上警察、海運総局等の機関が、事案に応じて海上保安業務を担当していますが、より効率的な業務遂行を目指し、省庁横断的な調整機能を有する「海上治安調整機構」の設立が進められているところです。海上保安庁は、今後ともこの設立等を支援することとしています。

(c)マレーシア
 マレーシアでは、海軍、海上警察、海事局等、多機関にまたがる海上取締部門を一つにまとめ、新たな海上法執行機関として「マレーシア海上法令執行庁」を平成17年に創設しました。
 海上保安庁では、その創設準備段階から専門家を派遣し、創設に関わる各種支援を行ったほか、犯罪取締りや海難救助等に関する技術移転を積極的に行っています。

(2)アジア地域等の海上保安機関若手職員の育成

 国や地域の枠組みを越えた連携・協力を中長期的に進めていくためには、各国海上保安機関の若手職員との相互理解が不可欠です。このため、海上保安庁では、平成13年度から日本財団とともに各国から若手職員を招へいし、若手職員相互のヒューマンネットワーク構築、人材育成を支援しています。
 また、アジア周辺海域での治安を確保するためには、アジア各国の海上犯罪取締り能力を向上させることが必要です。このため、海上保安庁では、我が国で東アジア各国の海上保安機関職員を対象とした「東アジア海上犯罪取締研修」を、また、フィリピン及びマレーシアにおいてもフィリピン沿岸警備隊やマレーシア海上法令執行庁の職員を対象として、海上法令励行セミナーを実施しました。これらの研修、セミナーにおいては海洋に係る国際法の講義、乗船研修、机上訓練、逮捕術訓練を通じ、海上犯罪の取締りにおいて必要とされる知識や技術の移転を実施しています。