海上保安レポート 2007

●はじめに


■TOPICS 海上保安の1年


特集 海洋国家「日本」と海上保安庁
〜海洋権益保全への取組み〜

はじめに

1.これが現場第一線

2.海洋調査に迫る


海上保安庁の業務・体制


■本編

治安の確保

生命を救う

青い海を護る

災害に備える

1. 事故災害対策
2. 自然災害対策
コラム 10
フィリピンでの油防除活動

海を識る

航海を支える

海を繋ぐ


海上保安官を目指す


語句説明・索引


図表索引


資料編


本編 > 災害に備える > コラム10 フィリピンでの油防除活動
コラム10 フィリピンでの油防除活動

第三管区海上保安本部 横浜機動防除基地
防除措置官 田中 公一
沿岸の漂着油調査
▲沿岸の漂着油調査
住民による回収作業
▲住民による回収作業
 平成18年8月11日、「フィリピン沖でタンカーが沈没、流出した油で付近一帯に大きな被害が発生、フィリピン政府は日本に専門家の派遣を要請」との情報が飛び込んで来た。国際緊急援助チームには横浜機動防除基地から田中孝治主任防除措置官と私の2名が油防除措置の専門家としてフィリピンに派遣された。
 現地では、国際緊急援助チームのメンバーやJICAフィリピン海上保安機関人材育成プロジェクトの長期専門家の協力のもと、フィリピン沿岸警備隊(PCG)の油防除活動に対する指導・助言を行うために、PCGの巡視船やヘリコプターでの浮流油調査、最も深刻な被害が出ているギマラス島での沿岸の漂着油及び回収状況の調査等を実施した。
 漂着油は沿岸一帯を覆う状況であり、零細漁業を生活の糧とした多くの地元漁民の生活を脅かす状況であった。また点在するマングローブには、付着した真っ黒な油により枯れ始めた箇所も見受けられた。沿岸には道路が整備されていないため、酷暑の中で島内を小型のボートと道無き道を徒歩で移動しながらの調査であり、困難を極めたものであった。
 今回は延べ8日間の派遣であり日数としては長いが、調査と情報分析に追われる日々で、瞬く間に時間が過ぎてしまった。今回の国際社会の耳目を集めた大規模な災害に対し、機動防除隊員が油防除技術の知見を活かして海外で活躍できたことは、私の中では誇れる事であり、今後とも、事故発生時に迅速かつ的確な油防除措置などの活動ができるよう努力したい。