海上保安レポート 2006

●はじめに


■TOPICS 海上保安の一年


■特集1 国際展開する海上保安庁

■特集2 刷新図る海保の勢力


海上保安庁の業務・体制


■本編

治安の確保

生命を救う

青い海を護る

災害に備える

海を識る

航海を支える


海保のサポーター


海上保安官を目指す!


語句説明・索引


図表索引


資料編


本編 > 海を識る > 1 海洋の科学的調査
1 海洋の科学的調査
目 標
 海上保安庁では、船舶の航行安全と防災のための基盤情報として、水路測量、海象観測などの実施により、海洋に関する最新の科学的基礎資料を整備することを目指しています。
平成17年の現況
 平成17年度、海上保安庁では、62カ所の港湾や沿岸域で測量を行ったほか、各地の港湾で自治体等により港湾工事等に伴い実施される測量成果を収集しました。
 また、内閣官房の総合調整の下で関係省庁が実施している大陸棚の限界画定のための調査(詳しくは「特集1 - 国際展開する海上保安庁 - 2. 我が国の海洋権益保全のために - 大陸棚の限界画定のための調査」をご覧下さい。)では、小笠原海台等の海域における精密海底地形調査、大東島周辺及び南鳥島周辺の海域における地殻構造探査を実施しました。
 このほか、平成17年7月2日に噴火が確認された海底火山「福徳岡ノ場」の無人測量船による海底地形調査(詳しくは「TOPICS 9 南硫黄島の北東で海底噴火! 新たな火口を確認」をご覧下さい。)や、閉鎖性の高い水域等における海洋汚染調査、第46次南極地域観測における定常海象観測等を実施しました。
今後の取組み
(1)航海の安全のための調査

 海上保安庁では、測量船によって海底を面的に測量するマルチビーム音響測深機や航空機からレーザー光を利用して浅い海域を効率的に測量するレーザー測深機の導入により、機動的な測量体制を構築しています。このような最新技術を駆使して海底地形に関する正確な情報を整備し、海図等に反映していきます。
 また、油や有害危険物質の排出事故などが発生した場合における排出物の挙動の予測や、海中転落者等の捜索・救助を効率的に行うため、過去の観測のデータベース、巡視船艇に設置した船舶観測データ集積・伝送システム等による情報を基に漂流予測を実施しています。この漂流予測の更なる精度向上のため、相模湾の海象情報をリアルタイムに収集する次世代型海流監視システム(海洋短波レーダー)等の活用に努めていきます。
 さらに、日本全国29カ所において潮位を集中的にモニタリングし、その結果をインターネットにより、リアルタイムに公開しています。
 (http://www1.kaiho.mlit.go.jp/KANKYO/TIDE/real_time_tide/htm/kck_main.htm

マルチビーム音響測深機画面
▲マルチビーム音響測深機画面
マルチビーム音響測深機による沈船の鳥瞰図
▲マルチビーム音響測深機による沈船の鳥瞰図
レーザー測深機による海底地形の鳥瞰図
▲レーザー測深機による海底地形の鳥瞰図
レーザー測深機による魚礁の鳥瞰図
▲レーザー測深機による魚礁の鳥瞰図

(2)地球環境保全のための調査

 地球表面の7割を占める海洋の状況は、地球温暖化をはじめとする各種の環境問題に大きな影響を与えると考えられています。海上保安庁は、地球環境問題のメカニズム解明のため太平洋沿岸諸国が実施している西太平洋海域共同調査(WESTPAC)に20年以上にわたって参加し、本州南方海域の水温、塩分、海流などのモニタリング観測を継続して実施しています。
 また、地球温暖化によって生じる可能性がある海面上昇の実態把握等のために、南極昭和基地で潮位観測を実施しているほか、5カ所の験潮所で地球重心からの海面の高さの絶対値の計測を行っています。さらに、気候変動の予測精度向上を目的とする「高度海洋監視システムの構築(アルゴ計画)」に参加し、野島埼と八丈島に海洋短波レーダーを設置して黒潮のリアルタイム監視を行い、そのデータはインターネット等を利用して一般に提供しています。
 海上保安庁では、これらの調査・観測を引き続き実施することで地球規模の環境問題の解明に取り組んでいきます。