海洋は、海運や水産業、資源開発、マリンレジャー等、さまざまな目的で利用されており、それぞれの目的によって必要となる情報が異なります。海上保安庁では、海洋調査により得られた多くの海洋情報を基に、それぞれの目的に合わせ、ユーザーの利用しやすい形での情報提供に努めています。
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6 海を知る
CHAPTER II. 海洋情報の提供
海洋は、海運や水産業、資源開発、マリンレジャー等、さまざまな目的で利用されており、それぞれの目的によって必要となる情報が異なります。海上保安庁では、海洋調査により得られた多くの海洋情報を基に、それぞれの目的に合わせ、ユーザーの利用しやすい形での情報提供に努めています。 1 海上の安全確保のために
海上保安庁では、船舶の安全航行に不可欠な海図や航海用電子海図等の作製・刊行を行っています。平成29年には、海洋調査により得られた最新データを基に、海図(新刊2図、改版63図)や水路書誌(新刊5冊、改版8冊)等を刊行し、電子海図表示装置(ECDIS)で利用できる航海用電子海図(ENC)については、新たに5区域を刊行しました。
海図について
海図は、船舶が安全に航海できるように、水深、底質、暗礁等の水路の状況、沿岸の地形、航路標識、自然・人工目標等その他航行、停泊に必要な事項を、正確に見やすく表現した図であり、航海者にとっては欠くことのできないものです。このため、ごく一部の小型船舶などを除く全ての船舶に対して、海図を備え付けることが法令により義務づけられています。 安全な航海のためには、海図は常に最新の状態に維持されなければなりません。海図の最新情報は、毎週発行される水路通報によりインターネット等を通じて利用者に提供しています。 平成6年度からは、従来の紙の海図に加えて、航海用電子海図を作製、刊行しています。電子海図は海図情報を電子化したもので、専用の表示装置を使用することで、自船の位置や航跡等を画面に表示でき、また、レーダーとの重畳表示、危険な海域に接近したときの警報により、安全で効率的な航海ができるようになります。 海図等には、作製のための国際基準が定められており、日本は海図作製国として、国際基準の検討のための会議への参加等により、国際貢献をしています。特に、電子海図については、次世代の国際基準の検討に深く携わっています。 2 海洋情報の利活用活性化のために
海洋情報は、船舶の航行の安全や、資源開発、マリンレジャー等のさまざまな目的で利用されています。このため、ユーザーが目的に応じて、利用しやすいように海洋情報を提供することが非常に重要となっています。
海上保安庁では、日本海洋データセンター(JODC)として、長年にわたり海上保安庁が独自に収集した情報だけでなく、国内外の海洋調査機関によって得られた海洋情報を一元的に収集・管理し、インターネット等を通じて国内外の利用者に提供しています。 また、平成19年に策定された海洋基本法に基づく海洋基本計画に従い、各機関に分散する海洋情報の一元化を促進するため、国の関係機関等が保有するさまざまな海洋情報の所在について、一元的に検索できる「海洋情報クリアリングハウス(マリンページ)」を構築するとともに、国や地方自治体等が海洋調査で取得した情報をはじめ、海洋の利用状況を把握するうえで必要となる自然情報(海底地形や海流等)、社会情報(訓練区域や漁業権区域等)等を一元的に管理し、インターネット上でビジュアル的に重ね合わせて閲覧できる、海洋台帳を運用しています。最近では、海洋再生可能エネルギーへの期待が高まるなか、海洋台帳は、洋上風力発電施設の適地選定等にも役立てられています。 平成27年からは、比較的画面の小さいタブレット端末でも適切に情報が表示でき、タッチパネル操作にも対応した海洋台帳を公開しました。これにより、「海洋台帳」の利用シーンが屋外等へ広がるだけでなく、GPS情報により取得した位置情報や、タブレット端末で撮影した画像を「海洋台帳」上に表示できるなど、新たな機能も利用できるようになりました。 さらに、海洋におけるさまざまな人為的または自然の脅威への対応と海洋の開発および利用促進のため、「我が国の海洋状況把握(MDA)の能力強化に向けた取組について」が平成28年7月26日、総合海洋政策本部において決定されました。この決定では、関係府省・機関が連携して、海洋観測を強化するとともに、衛星情報を含め広範な海洋情報を集約・提供する「海洋状況表示システム」を新たに整備することになっています。この「海洋状況表示システム」は、海上保安庁が開発・運用を行ってきた「海洋台帳」等を、システムの基盤として活用するものです。この基盤に、衛星情報を含め、これまで掲載されていなかった海洋情報を追加し、広域性・リアルタイム性の向上を図るとともに、利便性を高めたシステムを構築することになっており、内閣府総合海洋政策推進事務局の主導・支援のもと、海上保安庁では、平成30年度のシステム整備・運用に向け、平成29年度にシステム設計を行うとともに、各省庁と連携、協力を進めています。
引き続き、海洋調査によって得られた最新データを基にして、海図等の水路図誌を刊行していきます。 また、JODCをはじめ、海洋情報クリアリングハウス(マリンページ)、海洋台帳の管理・運用を適切に行うとともに、政府機関や関係団体等との連携を一層強め、掲載情報の拡充や機能の強化に努めます。これらの取組みを通じて、目的に合わせて利用しやすい海洋情報の提供を推進していきます。
日本の「海」について
四方を海に囲まれた我が国は、国土面積の約12倍、447万km2にも及ぶ領海とEEZを有しています。 また、平成24年4月国連大陸棚限界委員会からの勧告により、我が国の国土面積の約8割にあたる大陸棚の延長が認められました。これを受け、平成26年10月には我が国初の延長大陸棚が設定されました。
※国連海洋法条約第7部(公海)の規定はすべて、実線部分に適用されます。また、航行の自由をはじめとする一定の事項については、点線部分にも適用されます。 国連海洋法条約に基づく沿岸国の管轄海域は次のとおりです。 ※以下の内容はあくまで一般的な場合の説明です。詳細については、外務省のHP、関係法令等を参照してください。 1 領海
領海基線(7参照)からその外側12海里(約22km)の線までの海域で、沿岸国の主権が及びます。 ただし、すべての国の船舶は、領海において無害通航権*を有します。沿岸国の主権は、領海の上空、海底及び海底下にまで及び、沿岸国は漁業や資源採掘の独占権を有します。 *沿岸国の平和、秩序又は安全を害しない限り、沿岸国に妨げられることなくその領海を通航する権利。 2 接続水域
領海基線からその外側24海里(約44km)の線までの海域(領海を除く。)で、沿岸国が、自国の領域における通関、財政、出入国管理(密輸入や密入国等)又は衛生(伝染病等)に関する法令の違反の防止及び処罰を行うことが認められた水域です。 3 排他的経済水域(EEZ)
領海基線からその外側200海里(約370km)の線までの海域(領海を除く。)並びにその海底及びその下です。 なお、排他的経済水域においては、沿岸国に以下の権利、管轄権等が認められています。
4 公海
国連海洋法条約上、公海に関する規定は、いずれの国の排他的経済水域、領海若しくは内水又はいずれの群島国の群島水域にも含まれない海洋のすべての部分に適用されます。 公海はすべての国に開放され、すべての国が公海の自由(航行の自由、上空飛行の自由、漁獲の自由、海洋の科学的調査の自由等)を享受します。 5 深海底
深海底及びその資源は「人類共同の財産」と位置付けられ、いずれの国も深海底又はその資源について主権又は主権的権利を主張又は行使できません。 6 大陸棚
領海基線からその外側200海里(約370km)の線までの海域(領海を除く。)の海底及びその下です。大陸棚は原則として領海の基線から200海里ですが、地質的及び地形的条件等によっては国連海洋法条約の規定に従い延長することができます。 大陸棚においては、大陸棚を探査し及びその天然資源を開発するための主権的権利を行使することが認められています。 7 領海基線
領海の幅を測る基準となる線です。通常は、海岸の低潮線(干満により、海面が最も低くなったときに陸地と水面の境界となる線)ですが、海岸が著しく曲折しているか、海岸に沿って至近距離に一連の島がある場所には、適当な地点を結んだ直線を基線(直線基線)とすることができます。 8 内水
領海基線の陸地側の水域で、沿岸国の主権が及びます。 ただし、直線基線の適用以前には内水とされていなかった水域を内水として取り込むこととなる場合には、すべての国の船舶は、無害通航権を有します。 9 低潮高地
低潮高地とは、自然に形成された陸地であって、低潮時には水に囲まれ水面上にあるが、高潮時には水中に没するものをいいます。低潮高地の全部又は一部が本土又は島から領海幅を超えない距離にあるときは、その低潮線は、領海の幅を測定するための基線として用いることができます。 |