海上保安庁では、海上の安全確保、海洋権益の確保、海洋資源の開発・利用といったさまざまな目的のために海洋調査を実施しています。特に、近年では、我が国の管轄海域や新たな海洋資源の開発・利用等への関心が高まる中、海洋権益確保の基礎となる海洋調査が重要となっています。
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6 海を知る
CHAPTER I. 海洋調査
海上保安庁では、海上の安全確保、海洋権益の確保、海洋資源の開発・利用といったさまざまな目的のために海洋調査を実施しています。特に、近年では、我が国の管轄海域や新たな海洋資源の開発・利用等への関心が高まる中、海洋権益確保の基礎となる海洋調査が重要となっています。 1 海洋権益の確保のために
四方を海に囲まれた我が国にとって、領海や排他的経済水域(EEZ)等の海洋権益を確保することは極めて重要であり、その基礎となる海洋情報の整備は不可欠です。海上保安庁では東シナ海において、測量船に搭載されたマルチビーム測深機や最新の調査機器である自律型潜水調査機器(AUV)等による海底地形や地殻構造等の調査を重点的に推進するとともに、航空機に搭載した航空レーザー測深機等により、領海やEEZの外縁の根拠となる低潮線等の調査を実施しています。 西之島の海図が完成〜我が国の領海が約70km2拡大〜
平成25(2013)年11月に噴火活動を始めた西之島は、これまでに噴出した溶岩等により噴火前の旧西之島より大きく拡大しました。 海上保安庁は、海図を作製するために測量船や航空機により水路測量を行い、平成29年6月30日、船舶が安全に航海を行うために使用する海図と、10m間隔の等深線と彩色により海底の地形を詳細に表現した海底地形図を発行しました。 拡大した西之島が記載された海図は、我が国の領海の面積が約70km2拡大したことを示す根拠になります。海上保安庁は、今後も海上交通の安全を確保しつつ平成29年4月の新たな噴火後も監視を続け、火山活動が沈静化し、安全が確認された後に改めて水路測量を行い、海図を更新する予定です。 2 海上の安全確保のために
船舶の安全な航行を確保するためには、最新の情報が掲載された海図や海潮流・水温といった海洋情報が必要です。海上保安庁では、測量船や航空機等により海底地形の調査等を行い、海図を最新の情報に更新するとともに、測量船、海洋短波レーダー、自律型海洋観測装置(AOV)等により海潮流や水温などの情報を収集し、インターネットにより情報提供することで海上の安全確保に貢献しています。
3 さまざまな目的のために
海洋調査は、海洋権益の確保や海上の安全確保といった目的のほか、海洋環境の保全や防災のためにも実施されています。さまざまな目的に用いるため、海上保安庁では詳細な海底地形図を作成しています。また、海底地形名を海底地形名小委員会に提案しており、平成29年は我が国から34件が承認されました。 また、海上保安庁では、海洋環境の変化を的確に把握するため、海水や海底堆積物を採取し、汚染物質や放射性物質の調査を継続的に行っています。海底地殻変動観測や海底地形調査、海域火山の活動監視観測等も実施し、大規模地震発生のメカニズムや海域火山の構造等の解明に役立てています。 海洋権益の確保のため、今後も引き続き、領海や排他的経済水域(EEZ)等における海底地形や地殻構造等の調査を実施するとともに、低潮線等の調査を実施していきます。 また、最新の観測結果を海図へ反映させることで、より一層海上の安全確保に努めます。 さらに、海潮流、潮汐の観測や海洋汚染調査、海底地殻変動観測、海域火山の監視観測など、さまざまな目的に合わせた海洋調査を実施することで、海洋情報の収集に努めます。 久米島沖に熱水噴出を伴う海底火山地形を発見〜新たな海底熱水鉱床の発見につながる成果〜
海上保安庁は平成28年5月及び6月に、沖縄県久米島沖において、測量船及び自律型潜水調査機器(AUV)による海洋調査を実施した結果、水深1,500〜1,800mの海底に熱水活動を伴う海底火山地形が存在することを発見しました。 調査結果を詳細な解析により、熱水を噴出するチムニーやマウンドが存在していることが推測され、海底熱水鉱床を形成する可能性があることから、海上保安庁は、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)に調査データの提供を行いました。 JOGMECは、平成28年11月から平成29年2月にかけて海洋資源調査を実施し、遠隔操作無人探査機(ROV)による海底観察と試料採取によって、銅、鉛、亜鉛、金、銀を含む海底熱水鉱床を発見しました。 このように詳細な海洋調査は我が国の海洋開発等にも役立っています。 黒潮が12年ぶりに大蛇行
黒潮は、2017年8月下旬から、紀伊半島から東海沖で大きく離岸して流れる状態が続いており、12年ぶりに大蛇行となりました。 海上保安庁では、大蛇行の概要を捉えるため、測量船により蛇行最南端付近の黒潮の流軸位置を調査しました。その結果、黒潮の流軸は、北緯31°15.5′東経139°00′付近にあることがわかりました。 黒潮の大蛇行は、1965年以降、今回を含めて6回発生しています。今回の大蛇行は、1年2ヶ月続いた2004年の大蛇行と同規模まで拡大しています。なお、過去の大蛇行において、最南下緯度が南に行くほど大蛇行が長期化する傾向があります。 黒潮の流路の変動は、船舶の運航や漁業に影響があるほか、潮位が上昇することで、沿岸の低地で浸水などの被害が生じる可能性があるため、注意が必要です。 |