海上保安レポート 2011

はじめに


TOPICS 海上保安の一年


特集 新たな海洋立国に向かって


海上保安庁の任務・体制


■本編

1 治安の確保

2 領海等を守る

3 生命を救う

4 青い海を護る

5 災害に備える

6 海を識る

7 交通の安全を守る

8 海を繋ぐ


目指せ! 海上保安官


語句説明・索引


図表索引


資料編


おわりに

8 海を繋ぐ > ChapterIII 国際機関等との連携
8 海を繋ぐ
ChapterIII 国際機関等との連携

海上保安庁は、業務を行う中で、幅広い分野における技術・技能を有しています。これらの技術を活かし、国際社会に貢献するため、様々な国際機関等に積極的に参画しています。


1 国際海事機関(IMO)における取組み

IMOは、海上における安全及び海洋汚染の防止等の海事問題に関する国際協力を促進するための国連の専門機関です。

平成22年度には、海上安全委員会、海洋環境保護委員会、航行安全小委員会等に海上保安官を派遣し、海上保安庁に関する積極的な発言を行いました。海上保安庁では、今後もIMOにおける取組み等に積極的に貢献していきます。


2 国際水路機関(IHO)における取組み

第2回水路業務・基準委員会
▲第2回水路業務・基準委員会

IHOは、航海の安全及び海洋環境の保護を支援するために1921年に設立された政府間の機関です。現在80か国が加盟し、海図作製仕様の統一等に関する活動を行っています。

海上保安庁においては、ENCの刊行が不十分な加盟国を支援することとしており、平成22年9月から約4か月間、IHO、英国海洋情報部等とともに、世界各国の研修員に対し、海図作製等に関する研修を実施しました。これにより、海図作製及び海図の電子化並びに最新維持の技術を伝授し、ENC刊行の促進を図りました。

海上保安庁が刊行する水路誌等、航海用刊行物の国際標準化を目指す第12回作業部会(SNPWG)を平成22年6月に東京で開催し、電子海図表示システム(ECDIS)に航海用刊行物を重畳表示するための将来的展望について、意見交換を行いました。

海上保安庁が運用しているNAVAREA XI航行警報については、域内各国の航行警報業務運用状況を把握し、連携強化を行うため、平成22年10月に東京で「世界航行警報NAVAREA XI域内国会議」を海洋政策研究財団の協力で開催しました。また電子海図表示システム(ECDIS)のメーカーも交え、航行警報の表示に関する課題等について意見交換を行いました。

平成22年10月、ドイツで開催された国際水路機関の各作業部会を統率する第2回水路業務・基準委員会(HSSC2)に職員を派遣し、今後の電子海図や紙海図作製において有益となるよう、情報収集に努め、また日本の立場を主張しました。

3 コスパス・サーサット理事会における取組み

コスパス・サーサットシステムとは、人工衛星により中継された遭難信号から遭難船舶等の位置を迅速に検出するシステムです。このシステムは、日本を含むコスパス・サーサットの国際協定を締結した国々によって運営されています。

平成22年10月にはカナダにおいて第45回理事会が開催されました。理事会には、海上保安庁が日本の代表として出席し、各国のシステムの運用状況等について報告を行いました。


4 国際航路標識協会(IALA)における取組み

IALAは、航路標識の改善、船舶交通の安全等を図ることを目的とした国際的な機関であり、現在77の国と地域が加盟しています。

海上保安庁は、IALAの理事に選任されており、IALAの運営に貢献しているほか、航路標識分野における各種国際規格の策定作業に参加するとともに、AISを活用した新たな情報提供や、LEDを用いた新たな灯台の光り方について独自に提案するなど、IALAでの国際活動に積極的に取り組んでいます。


国際緊急援助隊救助チーム、最高ランクの「ヘビー」級に認定される!
「ヘビー」級の証
▲「ヘビー」級の証

海外で地震等の大規模災害が発生した際に被災者の捜索救助を行なう国際緊急援助隊「救助チーム」には海上保安官も参加しており、これまでにも中国四川大地震やインドネシア・西スマトラ州パダン沖地震等で現地に派遣されています。

平成22年3月、「救助チーム」は「国際捜索救助諮問グループ」による国際都市型捜索救助チームの能力評価を初めて受検し、最高分類の「重(ヘビー)」級チームの評価認定を受けました。

この能力評価で、都市型捜索救助チームをランクに応じ「軽(ライト)」「中(ミディアム)」「ヘビー」の三つに分類しています。今回認定された「ヘビー」では、高度な救助技術だけではなく、二つの災害現場において同時に24時間体制で10日間連続して活動ができる能力等が求められます。また、今回の「救助チーム」を含め、「ヘビー」の認定を受けているのは、世界で15(平成23年1月現在)チームだけです。

我が国の「救助チーム」は、関係省庁合同によるオールジャパンで編成された世界的にも珍しい構成であり、海上保安庁からは特殊救難隊等のスペシャリストが参加しています。

今後も、国際的な大規模災害での貢献が一層期待されています。

国際緊急援助隊(インドネシア・西スマトラ州パダン沖地震)
▲国際緊急援助隊(インドネシア・西スマトラ州パダン沖地震)
能力評価受検時の全体集合写真
▲能力評価受検時の全体集合写真