近年、海上保安庁は、海難救助や犯罪取締りといった基本的な海上保安業務に加え、テロ対策や海洋権益の保全等の業務にも対応する必要があり、業務が質的・量的に拡大しています。
ところが、昭和50年代に集中的に整備された巡視船艇・航空機は、就役からすでに30年前後が経過しており、速力や監視機能といった性能・機能面での旧式化によって、近年対応が求められる業務への的確な対応が困難な状況になっているほか、船体・機体の腐食や配管からの油漏れ等の老朽化によって、日頃の海上保安業務への対応にさえも支障が生じています。
特に、最近では、尖閣諸島周辺海域での中国漁船衝突事案や外国公船への対応、韓国哨戒艦沈没事案の発生等、東シナ海や朝鮮半島を巡る情勢が緊迫化していることに加え、海賊行為への対処等、遠方海域・重大事案への対応も求められており、早急な代替整備等が必要不可欠となっています。
海上保安庁では、このような緊迫化する国際情勢等を踏まえ、特に外洋や遠方海域での対応能力の向上を図るため、巡視船艇・航空機の整備や、巡視船の事案対処能力の強化を進めるなど、海上保安体制を強化していくこととしています。
■巡視船の老朽化状況(船齢:平成22年度末現在) |
■ヘリコプターの老朽化状況 |
1.巡視船艇・航空機等の整備
海上保安庁では、四面環海の我が国を取り巻く緊迫化する国際情勢等に的確に対応するため、荒天下での航行能力、夜間捜索監視能力等を備えた1,000トン型巡視船の整備のほか、航続性、夜間捜索監視能力等を備えたヘリコプターの整備を重点的に進めることとしています。
また、情報の保全を徹底したうえで、多数の巡視船艇・航空機の一体的かつ迅速・効率的な運用を可能とするデジタル秘匿通信体制の整備を図ることとしています。