四面を海に囲まれた我が国は、「海」から様々な恩恵を受けています。国際的なルールによって我が国が管理することができる日本の「海」は、国土の約12倍、世界第6位の広さを誇っています。この「海」は、水産資源という「海」の恵みを我々にもたらしてくれるほか、海底には石油や天然ガスなどの地下資源を有している可能性も秘めています。また、我が国は、多くの資源を海外から輸入し、工業製品を輸出するなど、国民の生活、経済活動は、海上輸送に大きく依存しています。
このような海洋国家である我が国は、平成19年に「海洋基本法」を制定し、「新たな海洋立国の実現」に向けて、様々な「海」の政策を積極的に推進しているところです。
一方、「海」では、海難や災害により尊い人命が失われ、船舶や積荷などの財産も失われています。また、薬物や銃器の密輸、海外からの不法入国、不審船・工作船といった治安を脅かす事件も起こっています。さらには、アフリカ・ソマリア沖では、海賊事案が発生し、日本関係船舶の脅威になっています。
海上保安庁は、この広大な「海」において厳しい気象・海象条件の中、国民の皆さんが安全に安心して暮らしていけるよう、海上での警備・取締り、海難救助、安全情報の提供、灯台管理など、「海」の治安と安全を守る様々な活動を日夜行っています。また、海上保安庁では、日本の「海」の管理に必要な様々な海洋データを収集し、提供することによって、「海」の政策の実現に貢献しています。
近隣国においても、近年、我が国周辺海域において、海洋調査や資源開発を活発化させるなど、豊かな「海」の獲得を目指して「海」に積極的に進出しています。
昨年には東シナ海で海洋調査を実施していた海上保安庁の測量船に対して、中国海洋調査船が接近し、調査の中止を要求するという事案も発生しています。また、我が国固有の領土である尖閣諸島をめぐっては、中国等が領有権を主張し、周辺海域で中国漁船等が多数確認されているほか、中国漁業監視船がこの海域にたびたび出現するなど、緊迫した状況にあります。
海上保安庁では、尖閣諸島周辺海域をはじめ、我が国の領海や排他的経済水域に入ってくる外国船舶を監視・警戒するなど、我が国の「海」を守っています。
これまでの「海」の治安と安全を守る様々な活動に加え、最近の緊迫化した状況にも的確に対応するため、巡視船艇・航空機の高性能化を図るなど、海上保安体制の質的・量的な充実強化が急務となっています。
このような昨今の情勢もあり、今回のレポートでは、「新たな海洋立国の実現」に向けて、海上保安庁が我が国の海洋権益の保全に貢献する姿を「特集」を組んで皆様に詳しく紹介したいと思います。
また、「特集」以外にも、海上保安庁の業務全般について様々なテーマごとに紹介しております。皆様がこのレポートを読んで、「海」のことを、そして海上保安庁のことを知っていただければ幸いです。
これからも、海上保安庁は、「海」をしっかりと守り、国民皆様の期待に応えられるよう頑張ってまいります。